米国時間8月19日、AdobeはFrame.ioをキャッシュ12億7500万ドル(約1400億円)で買収したことを発表した。ビデオレビューとコラボレーションを中心とする同プラットフォームは、現在100万以上のユーザーが利用している。
2014年に、ポストプロダクション企業のオーナーEmery Wells(エメリー・ウェルズ)氏と技術者のJohn Traver(ジョン・トラバー)氏がニューヨークで創業したFrame.ioは、駆け出しの映画作家が直面するワークフローの問題を解決することを目的としている。
今やFrame.ioのプラットフォームは、プロのクリエイターたちをサポートし、ビデオの制作過程を合理化、ラッシュや台本、ストーリーボードなどのメディア資産を集中管理したり、フレーム単位のフィードバックやコメント、注釈、リアルタイムの承認などを受け入れる。また同社は、VimeoやBox、Dropboxなどの他社よりもアップロードが速いことが自慢だ。
Frame.ioはこれまで9000万ドル(約98億9000万円)のベンチャー資金を調達し、2019年の11月にはInsight Partnersがリードする5000万ドル(約54億9000万円)のシリーズCを発表している。これには、Accel、FirstMark、SignalFire、そしてShasta Venturesが参加した。2015年に同社のシードとシリーズAのラウンドをリードしたのはAccelだった。
Adobeによると、Frame.ioはPremiere Proやビデオ編集のAfter Effectsなどのようなクリエイティブのソフトウェアと、レビューや承認などの機能性が組み合わさって、ビデオ編集の工程を動かすコラボレーションプラットフォームを作り出す。Frame.ioのウェブプラットフォームは、それが顧客の既存の工程の一部になれるように設計されており、たとえばAdobe Premiere Proのようなノンリニア編集システムの統合もできる。そういう統合があるために編集者はFrame.ioに直接アップロードでき、プロダクトを内部的にも、あるいは外部顧客と共同でも編成したり共有ができる。
Adobeは今日の声明で次のように述べている。「最新の娯楽作品のストリーミングであれ、あるいは運動に点火するソーシャルメディアであれ、また何千人ものリモートワーカーを結びつける企業のビデオであれ、今やビデオの創造と消費はとてつもない成長を経験しています。しかし今日のビデオのワークフローは複数のツールと、ステークホルダーのフィードバックを誘うために使われている複数のコミュニケーションチャネルによって分断されています。Frame.ioは映像のリアルタイムのアップロードとアクセス、そして全作業面にわたる安全でエレガントな体験としてのステークホルダーのインラインコラボレーションを可能にして、ビデオのワークフローの非効率を排除します」。
今回の買収はAdobeの2021会計年度の第4四半期中に完了すると予想され、その過程には規制当局からの承認や慣例的な完了条件が含まれる。完了後にウェルズ氏とトラバー氏はAdobeに加わる。ウェルズ氏はFrame.ioのチームの統轄を続け、Adobeのプロダクト担当最高責任者(CPO)でCreative Cloudの執行副社長でもあるScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏が直接の上司となる。
ForresterのシニアアナリストであるNick Barber(ニック・バーバー)氏は、ビデオは人間の感情にインパクトを与える最強のメディアであり、今後ますます多くの企業がビデオを利用していくと考えている。
バーバー氏によると「Frame.ioがAdobeの傘下に入ったことによって、同僚たちと一緒に行うビデオ編集が、まるでGoogleドキュメント上のコラボレーションのようになるだろう。この買収よってAdobeはクリエイティブの工程の一段高いところに属することになるが、そんなAdobeにとってこの買収における最大のチャレンジは、大型のプロダクションハウスではなくて、ためらいや予算制限のあるブランドにこの買収の成果を積極的に採用してもらうことだ」という。
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画像クレジット:Frame.io
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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)