AIが専門医並みの精度で不整脈診断を支援、カルディオインテリジェンスが資金調達

写真左から:カルディオインテリジェンス代表取締役社長CEO田村雄一氏、取締役CTO高田智広氏、取締役COO波多野薫氏

がんの画像診断など、AI、ディープラーニングの医療への応用が進んでいる。ヘルステックスタートアップのカルディオインテリジェンスが手がけるのは、心電図をもとに、専門医並みの精度で心臓病の予測・発見を行うAI自動診断支援システムだ。

8月27日、カルディオインテリジェンスはANRIが運営する4号ファンドから、シードラウンドで3500万円の資金調達を実施したことを発表した。

発作時でなくても不整脈を予測できるAI

カルディオインテリジェンスが開発した心電図のAI自動診断支援システムは、ディープラーニングを活用し、不整脈の一種である心房細動を専門医並みの精度で予測・発見するシステムだ。

心房細動は不整脈の中でも特に患者数が多く、日本の患者数は2020年現在、80万〜100万人と推定されている。しかも心房細動は放っておけば、後遺症を残すことが多い脳梗塞の原因ともなる。心房細動を早期に見つけることができれば、脳塞栓の予防薬の投与などにより疾患の進行を抑えることができるのだが、心臓の専門医でなければ診断を付けることは非常に難しいとされる。

また、患者も常に不整脈の発作が起きているわけではなく、動悸(どうき)で困っているときと困っていないときがある。より正しい診断のためにはホルター心電計を身に付けて、24時間生活しながら心電図を記録する方法があるが、専門医であっても24時間の測定では、必ずしも異常を見つけられないことも多いという。

カルディオインテリジェンスが2019年10月の創業後、第1弾プロダクトとして開発したのは、クリニックにおけるパッチ型心電計やホルター心電計などの長時間心電図測定結果と組み合わせることで、従来は見つけられなかった心房細動を特定する、心房細動診断AIだ。

実は従来から、ホルター心電計用のAI自動診断技術は国内外で研究・開発されている。特に近年、欧米を中心にAIの診断制度が向上、技師や医師の作業効率化に貢献している。カルディオインテリジェンスのAIは精度の高さに加えて「説明可能なAI」をプロダクトに搭載している点が特徴だ。

ディープラーニングには、AIの予測結果がどのようにもたらされたか、その根拠が分からず、モデルがブラックボックス化するという課題がある。診断に当たっては、医師自身が納得してデータを使う必要があるが、従来システムでは、医師が患者に何を根拠に診断を下したかを説明できなかった。カルディオインテリジェンスのAIは、高精度で心房細動を検出するだけでなく、診断根拠を可視化。非専門医であっても、診断根拠になる特徴を知っていれば説明ができ、確実な診断につなげることを可能とした。

カルディオインテリジェンスでは、第1弾プロダクトの臨床現場での実用化にめどがついたとして、早期事業化を進めるために今回の資金調達を実施した。同社は、6月に第二種医療機器製造販売業、医療機器製造業を取得。8月21日には「隠れ心房細動人工知能の開発研究」において日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「医療機器開発推進研究事業」に採択され、2022年度までの間でAI医療機器の実用化開発と医師主導の知見を実施する予定だ。

遠隔医療や創薬、スマートデバイス連携などへの応用目指す

カルディオインテリジェンス代表取締役の田村雄一氏は、循環器内科を専門とする医師でもあり、心臓難病治療に詳しい人物だ。

「心房細動は頻度が高い不整脈だが、半数しか診断がつかない。間違いがあっては困るので、非専門医はなかなか診断したがらないが、専門医へのアクセスは限られている」という田村氏は、「心房細動が早期に、専門医以外のいろいろなチャネルで発見可能になれば、専門医は治療により多く関われて、忙殺されずに治療に集中することができる」と同社のプロダクト開発の動機について語る。

近い将来には「専門医でも見つけられない、非発作時の心電図波形から心房細動の存在を検知するAIの開発も目指す」という田村氏。心電図は今のところ、いろいろな環境で連続的に、簡単に取れる状況ではないが、スマートデバイスの進化でこれが実現すれば、AI×心電図がさまざまな場面で社会を変える力を持つだろう、と話している。

例えば、医療過疎地での非専門医による高度な診断や、創薬の現場での活用、自動車運転中の発作を検知して自動ブレーキを作動させるといったケースへの対応が想定できると田村氏はいう。今後Apple Watchのようなウェアラブルデバイスとの連携が拡大できれば「さらなる技術の広がりが期待できる」と田村氏は述べている。

カテゴリー:ヘルステック

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TechCrunch Japan

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