AIで創薬プロセスを改善するAtomwiseが、シリーズAで4500万ドルを調達

深層学習を用いて新薬の発見プロセスを短縮するAtomwiseがシリーズAで4500万ドルを調達した。このラウンドは、Monsanto Growth Ventures、Data Collective(DCVC)、ならびにB Capital Groupによって主導された。Atomwiseに対して初めて投資を行うBaidu Ventures、Tencent、Dolby Family Venturesも参加し、かつて投資していたY Combinator、Khosla Ventures、そしてDFJも再び参加した。

このことにより、2012年に創業したAtomwiseが、これまでに調達した資金は5100万ドル以上となった。同社は、研究者たちが医療用化合物を発見するために費やす金額と時間を削減することを目的としており、今では50以上の分子発見プログラムを持っていると語る。Atomwiseの技術は、より安全でより効果的な農薬を開発するためにも使用されている。

プレス発表で、Monsanto Growth VenturesのパートナーであるKiersten Stead博士は次のように述べている「私たちは目の前にAtomwiseによって示された、素晴らしい結果に基いて投資を決定しました。Atomwiseは、農薬研究開発の重要な分野である作物保護対象に対して、有望な化合物を見つけることができたのです」。

Atomwiseのソフトウェアは、分子シミュレーションを解析し、研究者たちが化合物の合成と試験に費やす時間を短縮する。同社によれば、現在、毎日1000万種類以上の化合物をスクリーニングしていると言う。AtomwiseのAtomNetシステムは、深層学習アルゴリズムを用いて分子を分析し、それらが人間の体内でどのように振る舞うかを予測する。従来の創薬プロセスよりも早い段階で、薬剤としての潜在的効果、毒性と副作用などが予測されるのだ。

AtomwiseのCEOであるAbraham Heifetsは、電子メールでTechCrunchに、同社のビジョンは「世界で最も生産的で多様なライフサイエンス研究グループの一つになり、かつてないほどの規模で活動することです。これは大規模なシリーズAであり、私たちはこの資金を利用して、技術的およびビジネス的に組織を成長させます。最終的には、1日に何億種類もの化合物をシミュレートすることになるでしょう。究極の目標は、新しい治療を緊急に必要としている多くの疾病に対して、より多くの成果を出していくことです」と語った。

Heifetsは「リード最適化(Lead optimization:創薬の最初の段階で薬剤候補の構造を実際に検討すること)は、歴史的にみても創薬パイプラインの中で最もコストのかかるステップでした」と付け加えた。そしてこれらのプロセスの失敗率が如何に高いかということも語った「3分の2のプロジェクトは病院での試験にたどり着くことなく失敗しますし、そこまで行くにも5年半程度の時間がかかるのです」。

Atomwiseが6年前に立ち上げられたとき、その技術はまるでSFか何かのように思えた。しかし、いまや人工知能と機械学習を用いて分子を分析し、創薬プロセスのボトルネックを解決しようとする会社は何社も登場している。他にもRecursion Pharmaceuticals、BenevolentAI、TwoXAR、Cyclica、そしてReverie Labsなどの名を挙げることができる。

Heifetsは、Atomwiseの持つ主なメリットの1つに、作業しているプロジェクトの多さを挙げた。このことによりAIシステムが改善されているという。同社の顧客には、米国の大手製薬会社トップテンのうちの4社(Merck、Monsantoなど)、そして40以上の主要研究大学(ハーバード、デューク、スタンフォード、ベイラー医科大学など)、そしてその他のバイオテック企業などが含まれている。

彼はまた、Atomwiseはその焦点も差別化していると付け加えた。

「創薬には、生物学と化学という2つの異なる問題があります」と彼は言う。「生物学に取り組んでいるなら、あなたはどの疾患タンパク質を標的とするのが最良かを決定しようします。創薬に携わる多くのAI企業がこの標的同定(target identification)の問題に取り組んでいます。標的を選択したら、次は化学の問題に取り掛かることになります。どうすれば、選択した疾患タンパク質に作用する、毒性のない分子を届けることができるのか。Atomwiseはこれらの化学的問題に焦点を当てています。特にAtomwiseは、構造ベースの薬物設計に深層ニューラルネットを使用する方法を発明したのです」。

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(翻訳:sako)

画像クレジット:Atomwise

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TechCrunch Japan

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