AIにシンプルな可観測性を持たせるイスラエルのAporiaがシード資金5.5億円調達

機械学習のモデルは、与えるデータの量や質で良し悪しが決まる。特に訓練のときにそういえるが、モデルはプロダクションの質も左右する。現実の世界では、新たな事象が起きるたびにデータそのものが変わり、データベースやAPIの報告やデータ保存の小さな変化でも、モデルの反応に影響することがある。そんなときMLのモデルは平然と間違った予測を与え、エラーを投げないため、そういうシステムではデータのパイプラインを監視することが絶対に欠かせない。

そしてそこに、Aporiaのようなツールが登場する。テルアビブに本社のある同社は米国時間4月6日、同社のMLモデル監視プラットフォームに500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を調達したことを発表した。投資家はVertex VenturesとTLV Partnersだ。

画像クレジット:Aporia

Aporiaの共同創業者でCEOのLiran Hason(リラン・ヘイソン)氏は、イスラエル国防軍に5年間在籍し、その後はずっとAdallomのデータサイエンスチームにいた。セキュリティ企業の同社を、2015年にMicrosoftが買収した。買収の後、彼はベンチャー企業Vertex Venturesに入り、2019年にAporiaを始めるまでそこにいた。しかし今、Aporiaが解決しようとしている問題に彼が初めて出会ったのは、Adallomにいたときだ。

Adallomでの経験に関して「私は機械学習のモデルのプロダクションアーキテクチャを担当していました。だから、モデルをプロダクションに持ち込んだときに起きるありとあらゆるサプライズを初めて体験したのは、そこででした」とヘイソン氏は語る。

ヘイソン氏の説明によると、Aporiaの目標はエンタープライズによる機械学習モデルの実装を容易にし、AIの力を責任あるやり方で利用することだという。

「AIはとても強力な技術だが、従来のソフトウェアと違いデータへの依存が極めて大きい。AIのもう1つのユニークなところは、とてもおもしろいことだが、失敗するときに黙って失敗することだ。例外もエラーも何も出ない。だからAIは実に厄介であり、特に一旦プロダクションに入れば、モデルの訓練時のようなデータサイエンティストによる完全なコントロールがないため、なおさら厄介です」とヘイソン氏は語る。

しかもヘイソン氏によると、プロダクションシステムはサードパーティーのベンダーからのデータに依存しているかもしれないし、そのベンダーがある日、誰にもいわずにデータのスキーマを変えるかもしれない。そうなると、モデルの信頼性は完全に壊れる。銀行の顧客のローンが債務不履行になるという予測もできなくなり、数週間か数カ月後に実際に不履行になってから気づくことになる。

Aporiaは絶えず、入ってくるデータの統計的特性を調べ、それが訓練セットからあまりにも乖離してきたらユーザーに警報する。

そしてAporiaがユニークなのは、ユーザーにほとんどIFTTTやZapier的なグラフィカルなツールを提供して、モニター(監視系)のロジックをセットアップさせることだ。納品時にはモニターの50ほどの組み合わせであらかじめ構成されており、それらの楽屋裏での仕事ぶりを完全に可視化する。また企業はこれらのモニターの振る舞いを、特定のビジネスケースやモデルに合わせて微調整できる。

最初チームは、ジェネリックなモニタリングソリューションを構築できると考えていた。しかしチームが悟ったのは、そんなものを目指したら非常に複雑な仕事になるだけでなく、これからモデルを構築するデータサイエンティストが、モデルの仕事の仕方と必要事項をモニタリングのソリューションから正確に知らなければならない。

TLV Partnersの創立パートナーであるRona Segev(ロナ・セゲフ)氏は、「プロダクション(本番時)のワークロードのモニタリングは、ソフトウェア工学の実践としてすでに確立しており、機械学習を同じレベルでモニタリングすることもかなり前に確立しています。Aporiaのチームには強力なプロダクションエンジニアリングの経験があり、そのために彼らのソリューションはシンプルで安全で堅牢なものとして傑出しています」と語る。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Aporia機械学習イスラエル資金調達

画像クレジット:Aporia

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。