Gigsterにアプリのアイディアを送ると、完成形のアプリが納品される。コードディングの作業も人材採用もフリーランサーを束ねる作業も必要ない。ソフトウェアが構築される方法が根本的に変わるだけだ。それが、ローンチからわずか18週でAndreessen Horowitzが牽引するシリーズAでGigsterが1000万ドルを調達できた理由だ。
高名なベンチャー投資企業はGigsterの人工知能エンジンに感心したようだ。GigsterのAIは、クライアントのプロダクト案を開発計画に落とし込み、Gigsterの保有するリモートで働く開発者が予め準備されたコードを組み合わせてアプリを構築する手助けをする。共同ファウンダーとCTOであるDebo Olaosebikanが制作したGigsterのAIは、Marc Andreessenの投資理念である「ソフトウェアが世界を飲み込む」、そしてAndreessenでパートナーを務めるChris Dixonの「ソフトウェアがソフトウェア開発を飲み込む」という考えと一致するものだ。
Gigsterは、ミレニアル世代のイスラム教徒向けデートアプリや発展国で市民が電気を購入するためのアプリなどを制作し、50以上のプロジェクトが進行しているという。共同ファウンダーでCEOのRoger Dickeyは「すぐに使えるサービスモデルで、私たちと同じようにやっているところは他にありません。Gigsterはソフトウェア開発を民主化します」と言う。
DickeyとOlaosebikanはGigsterを1年前に立ち上げた。Dickeyは自身のゲームスタジオをZyngaに売却し、ヒット作となったゲームMafia Warsの制作を担当していた時も、新しいアプリのアイディアを考えていたという。Zyngaを離れた後、アプリのプロトタイプを制作する中でOdesk/Upworkのようなサービスで素晴らしいフリーランサーを採用し、管理するのは骨が折れる作業であることを知る。
2人はGigsterで、アプリ開発の手間を削減しようとしている。GigsterはMIT、CalTech、GoogleやStripeでの経験がある最高峰のフリーランス開発者、デザイナー、プロジェクトマネージャーを採用している。応募の中の5%しか採用していないそうだ。セールスエンジニアがクライアントのプロダクト案について話し合い、AIのエンジンを使って、金額の見積もりと開発スケジュールを10分ほどで算出する。その後、Gigsterは全ての開発工程を担い、問題なく機能するアプリを納品する。
GigsterはY Combinatorにエントリー時期から遅れながらも採択され、最終的にYC、Greylock、Bloomberg Beta、Felicis Ventures、AngelListのNaval Ravikant、Facebook MessengerのStan Chudnovsky、TwitchのEmmit Shearから250万ドルを調達した。7月下旬にローンチして2週間後には、売上見込が100万ドルになった。
当初、Gigsterは単独の起業家や小さいスタートアップ向けのサービスだったが、Dickeyは「クライアントの中心は法人に移りました」と話す。今は、動きの遅い大企業に俊敏なスタートアップのソフトウェア開発という力を提供しているという。欲しいプロダクトが定まっている多くのプロのクライアントと仕事をすることで、全体のプロセスをよりスムーズに改善できるようになったという。GigsterはPivotal Labsのような企業と競合することになる。Gigsterはこれまで300以上のカスタマーを獲得した。
今後、最大の課題となるのは品質を維持すること、そしてスケールするための速度を出すことだろう。Gigsterのアプリは完璧に磨き上げられたユーザーインターフェイスのアプリではなく、必要最小限の機能の使えるアプリを提供している。Gigsterはプロダクトの次の段階を手助けするデザインサービスを提供することができるかもしれない。
Gigsterは今回調達した1000万ドルで自社のAIプラットフォームの構築に注力するという。 Andreessen Horowitzが牽引したシリーズAのラウンドには、 他にもY Combinator Continuity Fund I、SV AngelのRon Conway, Sound VenturesのAshton Kutcher、Launch FundのJason Calacanisが参加している。また、Andreessenのパートナーで、人材管理の大企業SuccessFactorsの元CEOであるLars DalgaardがGigsterの役員に就任する。
Andreessenはソフトウェア開発の方法を変えることを前向きに考えている。数年前、彼らはフリーランサーのマーケットプレイスであるToptalのシードラウンドに投資した。Toptalではクライアントが採用した人材を管理しなければならないが、アプリ制作という意味ではGigsterの競合と言えるだろう。
しかし、Dickeyは「プロジェクトマネジメントは、最も人的なミスが起きやすいところです」と言う。「その労力を削減できることにGigsterの価値があります。対価を持って、誰でも自身の開発チームを持つことができます」とDickeyは話す。
[原文へ]