AIを使ってチップ製造を大幅にスピードアップするMotivoが約13億円を調達

チップデザインは試行錯誤を繰り返す骨折りの仕事であり、世に出すまでに何年もかかる。チップ業界のベテランが興した創業5年のスタートアップMotivo(モティボ)は、AIを使ってチップデザインにかかる時間を年単位から月単位にスピードアップするためのソフトウェアを手がけている。同社は米国時間8月12日、1200万ドル(約13億円)のシリーズAを発表した。

Intel Capitalが新規投資家のStorm Ventures、Seraph Groupとともにラウンドをリードし、Inventus Capitalも参加した。その前のシードラウンドを含めMotivの累計調達額は2000万ドル(約22億円)になった。

Motivoの共同創業者でCEOのBharath Rangarajan(バラース・ランガージャン)氏はチップ業界で30年働き、いくつかの基本的なトレンドや問題を目にした。まず、チップデザインのプロセスは非常に時間がかかるものであり、有望な候補を生み出してマーケット展開するまでに数年かかる。

さらに、ますますパワフルになっているチップにより多くのエレクトロニクスを搭載するというムーアの法則にしたがって、これらのデザインは複雑さが増している。そしていざ製造段階になると、製造のために多くの無駄が生じる。ランガージャン氏は人工知能がデザインプロセスで機能するよう、そして製造サイクルで高精度を確保しながらチップをより早くマーケットに投入できるようにするために会社を興した。

「人間並みの判断力を持たせるためにAIエンジンを訓練し、問題を起こすことなくデザインに関する製造可能性のためにデザイン面で多くのことができます。反復ループを回避し、またコードや認証、タイミングもデザインできます。これらの作業は週単位や月単位、あるいは1日単位となります」と同氏は話す。

同社の最終的な目標は、ソフトウェアと知能を活用してチップデザインの過程を3年から3カ月に凝縮させることだ。まだそこには至っていないが、すでに問題に取り組み始め、チップのレイアウト、チップを動かす潜在的なRTLコード、そしてチップ上のさまざまなピースやエレクトロニクスがどのようにつながっているかを示すネットリストに着目した作業プロダクトを持っている。

差異化要因の1つは、同社がなぜ取り組むことを決めたのかを説明するためにAIを透明性あるものにしようとしていることだ。「AIの多くがブラックボックスです。自動運転車がなぜこの点で急に逸脱することにしたのかはわかりません。当社のAIは理解可能なものです。なぜAIがそのように、あるいは別のようにチップを変更するよう言っているのかを説明することができるよう、ソリューションを構築しました」とランガージャン氏は説明する。

同社は有料の顧客を抱えている。社名は明らかにできないが、おそらくこの種のソフトウェアに限定したマーケットがあり、チップ企業、特に今回のラウンドのリード投資家であるIntel Capitalがそこには含まれると知識に基づいて推測できるはずだ。Motivoの現在の従業員数は15人で、うち12人がフルタイムで働いている。今後どうなるかにもよるが、同社は来年、従業員数を2倍あるいは3倍に増やす計画だ。

特定のエンジニアリングを専門とする人材を求める企業にとって採用は常に難しいものだ。しかし、同社のチームはすでにかなり多様性に富んでいる、とランガージャン氏は話し、創業したときのように今後も引き続き多様性を促進することを明確にしている。「会社に加わる正しい人物を見つけなければなりません。あらゆる優秀な人やバックグラウンドを持つ人を求めます。実際、多様な方が良いのです。当社は、この業界で育ち、多くの経験を持っている人を獲得しました。そしてかなり多様性に富んだチームを築きました」とランガージャン氏は述べた。

現在のところ、出社を望む人は出社し、まだワクチンを接種していない小さな子どもを抱えている人など、出社を望まない人は引き続き在宅で働けるハイブリッド勤務体制を継続する計画だと同氏は話した。そうしたフレキシブルさはオフィスが完全再開した後も継続する。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Motivo資金調達チップ人工知能

画像クレジット:Monika Sakowska / EyeEm / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。