AIを利用するヘルスケアの実践や研究を支援するマイクロソフトのAI for Health事業

Microsoft(マイクロソフト)とグローバルな健康という話題になると、Gates Foundation(ゲイツ財団)を連想する人が多いだろう。しかし同社自身もかなり頑張っているのだ。そんな頑張りの最新の例と言えるAI for Healthは、同社のAI for Good事業から生まれた5年間4000万ドル(約43億円)の補助助成事業で、世界中の恵まれない人びとの健康をAIを利用して改善しようとしている。

この新しい企画は、疾病の発見にAIを利用するなど、医療AIの分野の研究や、その適切な用途を知るためのグローバルな健康調査、そしてアルゴリズムの実用化によるアクセスの向上を目標にしている。

同社のJohn Kahan(ジョン・カハン)氏はブログで 「AI for Healthは、Microsoft Healthcareというより大きな活動を補完する人道主義的な企画だ。マイクロソフトの優秀なデータサイエンティストたちが、各地の非営利団体や研究所などとコラボレーションしていく。それにより後者は、トップクラスのAIツールとクラウドコンピューティング、そして選ばれた者が手にする助成金にアクセスする」と書いている。

同氏が指摘するのは、現在のヘルスケアの分布の非平等性だ。一部の国ではいくつかの疾病や死因がほぼ根絶されているのに、ほかの国ではそれらが猛威を揮っている。AIが問題そのものを解決するわけではないが、AIならではの補助的な仕事があるはずだ。

関連記事:マイクロソフトがインドでAIによる子宮頸がん診断の迅速化を支援

その例として同氏は、何百万人もの患者が失明のリスクを抱えている糖尿病網膜症のAIによる効果的なスクリーニングシステムを挙げた。村の住民たちがモバイルアプリと検査用アタッチメントを使う方が、専門の眼科医に来てもらうよりずっと楽だ。

技術者たちがそんな技術を見つけて、それを実際に利用できるようにすることが、AI for Healthの目標だ。しかしAIのエキスパートの多くはもっと一般的なテクノロジー企業やテクノロジー業界で有利な仕事を見つけているので、彼らに社会福祉的な方面に来てもらうには費用がかかる。そこで、マイクロソフトのキャッシュが物を言う。

この事業が自分の利益になりそうなところとのパートナーシップもある。例えば、 乳児突然死症候群やハンセン病、上述の糖尿病網膜症、結核、産婦死亡。そしてもちろん、永遠の敵であるがんなどの研究用装備品を求めている研究機関などだ。

この4000万ドルの助成事業は、同社の他の類似事業と違って一般からは応募できない。非営利団体や研究機関に直接資金が行くだけだ。とはいえ、そんな団体や組織にいる人ならレドモンドに良い協力者を見つけられるかもしれない。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。