AI活用でマンション売買をスマートにするHousmartが3億円を調達、事業者向けSaaSの開発も

中古マンションをスマートに購入できるアプリ「カウル」を運営するHousmart(ハウスマート)。同社は9月25日、アコード・ベンチャーズ、SXキャピタル、大和企業投資、CAC CAPITAL、フリービットインベストメントを引受先とする第三者割当増資により約3億円を調達したことを明らかにした。

ハウスマートでは調達した資金を活用して、他の不動産会社がカウルの仕組みを活用できるような事業者向けのバーティカルSaaSの開発・提供を進める方針。合わせて新機能の開発や人材採用、マーケティングの強化にも取り組む。

なお同社では2016年11月にもオプトベンチャーズ、BEENEXT、大和企業投資から1億円を調達している。

データから物件の将来価格を推定、おすすめ物件の提案も

カウルは機械学習を含むテクノロジーの活用によって、これまでアナログで人力の要素が多かった中古マンションを購入する仕組みを変えようとしているプロダクトだ。

中古マンションは近年ニーズが高まっている一方で、過去の売買データの整備が進んでおらず、物件の訂正価格など十分な情報を購入検討者が取得しづらいことが課題とされてきた。

この問題の解決策としてカウルでは独自の価格推定機能を搭載。新築時の分譲価格や約1000万件に及ぶ過去の売買・賃貸事例、築年数、物件の広さ、間取り、最寄り駅情報などのビッグデータをAIで分析し、現在から35年後までの推定価格を算出する。

1月にはこの仕組みをベースに“賃貸と購入のどちらがお得か”を瞬時に鑑定する「カウル鑑定」をリリース。同機能の背景や概要については以前TechCrunchでも詳しく紹介した。またユーザーのアプリ内での行動を学習した上で、希望条件と趣味嗜好を基に最適な物件をレコメンドする物件提案機能も搭載している。

とはいえ、ハウスマート代表取締役の針山昌幸氏によるとアルゴリズムにはまだ改善の余地があるそう。特に今はざっくりした要望の顧客に対しては精度の高いレコメンドが実現できていないそうで、今後はアルゴリズムの改良と共により多くのデータを集めることで同機能の強化を図っていくという。

現在は学区からマンションを見つけられるなど細かい条件を指定できる点や、気になる物件が売りに出された際にタイムリーに教えてくれる機能、値下がりした物件を自動で通知してくれる機能などに対するユーザーの反応が良いそう。

これらの作業をリアルタイムに営業マンが人力でやるのは困難で、特に物件の値下がり情報については「(他社物件の値下がりを)営業マンが正確に知る術はなく、毎日レインズ(不動産流通標準情報システム)を見ながら直感的に判断するしかなかった」(針山氏)という。

カウルの場合は裏側でデータベースを構築しているためこれらの作業を自動化できる点が特徴。継続的に会員数を伸ばし、8月には2万人を突破している。

不動産業者向けのバーティカルSaaSの展開も

これまでハウスマートでは社内に営業人材を抱え、直営で顧客のサポートを行ってきた。

ただ春先ごろより他の不動産会社から「カウルの仕組みを使いたい」という旨の問い合わせが増加。新たなニーズに気づくと共に、他業者へカウルを提供することで「もともと創業時から実現したかった『不動産の正解がわかるような世の中』をもっと早く実現できるのではないかと考えた」(針山氏)のだという。

それを機に開発を進めてきたのが、不動産業者がカウルを活用し顧客とのコミュニケーションを改善できるような仕組みだ。

前回も紹介したように、1社の不動産会社が売り主と買い主の双方を担当するのが一般的な不動産売買の構造であり、多くの事業者では売却(売り主側の支援)により多くの時間を使っている。結果的に購入(買い主側の支援)に使える時間が限られるため、ここに機会損失が発生しているのだという。

針山氏が約200社にヒアリングしてみたところ、売買に力を入れている事業者ではだいたい1営業マンあたり月10件くらいの購入問い合わせがあるものの、実際に契約に至るのは1件あるかないかなのだそう。

「本来であれば決まらなかった9人に対して他の物件を丁寧に紹介することができれば、顧客も喜ぶし営業マンも取引のチャンスが増えるはず。ただ売却の方で手一杯のために、そこまでやりきることができない」(針山氏)

写真中央がハウスマート代表取締役の針山昌幸氏

そのような事業者に対してカウルの仕組みを提供することで、営業マンに変わって自動で物件を提案するような環境を構築する。これが現在ハウスマートで開発を進めているプロダクトの特徴だ。

「1営業マンあたりで持てる顧客の数はだいたい20人ほど。この人数をしっかりフォローアップできればいい営業だと言われるが、物件の提案だけでも月に1人あたり5時間ほど、トータルでだいたい100時間はかかる。カウルの仕組みを使えば、この時間をほぼ0にすることができる」(針山氏)

上述したように、カウルでは物件提案を始め毎月のランニングコストの計算や将来のライフシミュレーションなど、従来営業パーソンが人力で行ってきた業務を自動化する。実際にハウスマートでは1人の営業パーソンが通常の約30倍に当たる600人以上の顧客をサポートしているそうだ。

事業者向けのプロダクトはバーティカルSaaSのような形で提供していく方針。現在は数社でトライアル的に導入をしている段階で、正式なリリースは年明けを予定しているという。

投稿者:

TechCrunch Japan

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