スプレッドシートを中心にしたデータベースとノーコードプラットフォームのAirtable(エアテーブル)は、米国時間9月14日、1億8500万ドル(約195億4000万円)のシリーズDの資金調達を行った。この結果、調達後の評価額は25億8500万ドル(約2730億8000万円)となった。
Thrive Capitalがこのラウンドを主導し、既存の投資家であるBenchmark、Coatue、Caffeinated Capital、CRV、さらに新しい投資家D1 Capitalから追加の資金提供を受けた。これにより、現在20万社がそのサービスを利用していると主張するAirtableは、総額約3億5000万ドル(約369億7000万円)を調達したことになる。現在の顧客に含まれる企業としては、Netflix、HBO、CondéNast Entertainment、TIME、ロサンゼルス市、MITメディアラボ、IBMなどが挙げられる。
さらにAirtableは同時に、最大の機能アップデートもローンチする。これは、現在のノーコード機能を超えて、より多くのローコード機能を、新しい自動化機能(AirtableのためのIFTTTを想像して欲しい)やそのサービスのためのデータ管理ツールとともに、同社の全体的なプラットフォームビジョンの上にもたらす。
Airtableの創業者でCEOのHowie Liu (ハウ・リュー)氏が私に語ったように、2018年にシリーズCラウンド(未訳記事)調達を行って以来、多くの投資家たちが同社にアプローチしてきた。その理由の一部はもちろん、市場がローコード/ノーコード市場の将来的な可能性をはっきりと認識したからだ。
「このスペースは実在し、しかもその規模が極めて大きいという市場の認識が高まっているのだと思います」と彼は私に語った。「私たちは今回の資金を本当に必要としていたわけではありませんが、調達によってプラットフォーム、ビジョンを拡大するための積極的な投資を続けることが可能になりました。それこそ『新型コロナ?どうなるんだろうね?』と心配することなく、積極的に推進できるのです。不確実性はたくさんありますよね?そして、現在でも、来年の見通しについては依然として多くの不確実性があると思っています」。
同社は、カリフォルニアで最初の在宅命令が発令されてから数カ月後に、今回のラウンドを開始した。そしてほとんどの投資家にとって、これは純粋にデジタルなプロセスだった。
リュー氏は、この会社を長期に渡って育てていきたいという気持ちを常に表明していた。特に彼の最後の会社をアーリーステージの段階でSalesforce(セールスフォース)に売却した以降は、ずっとそうだった。それはおそらく、Airtableがより多額の資金を調達し続けていたにも関わらず、彼が創業者として会社に対する自分の持分を高く維持しようとしていることを意味しているのだろう。しかし、法的および構造的な管理よりも、投資家との調整が最も重要であると彼は主張する。
「私の見るところ、より重要なことは投資家たちとの間で、哲学の調整と期待の調整を行うことだと思っています」と彼はいう。「なにしろ私は、会社の将来についての法的権利または構造的な議論が押し寄せてくるような立場にはなりたくないのです。私にとってそれは、物事が行き詰まってどうにもならなくなった段階のようなものに感じられるのです。むしろ私は、テーブルを囲むすべての投資家たちに、法的発言の有無に関わらず、このビジネスで私たちが成し遂げようとすることに対して完全に一致してもらえるような、立場にいたいと思っています」。
新しい資金調達と同様に重要なのは、同社が同時にローンチするさまざまな新機能だ。これらのうち最も重要なのはAirtable Apps(エアテーブル・アプリ)だろう。これまでAirtableユーザーは、事前に準備されたブロックを使用して、地図、ガントチャート、その他の機能をテーブルに追加することができていた。もちろんノーコードサービスだったことは、間違いなくAirtableをユーザーたちが最初に使い始める役には立ったが、どうしても事前に構築された機能だけでは不十分な場合に突き当たってしまい、ユーザーがさらなるカスタムツール(リュー氏はこれをエスケープバルブと呼んでいる)を必要とする場面があった。だがAirtable Appsを使用することで、より洗練されたユーザーはJavaScript(ジャバスクリプト)で追加の機能を開発できるようになる。そして、もしそうすることを選んだ場合には、新しいAirtable Marketplace(エアテーブル・マーケットプレイス)の上で、他のユーザーとそれらの新機能を共有することもできる。
「エスケープバルブが必要な場合と不要な場合がありますが、そうしたエスケープバルブなしでも、これまでAirtableを使用する20万の組織を獲得することができました」と彼はいう。「しかし、Airtable自身で99%の用途で足りるものの、最後の1%で採用、不採用が決まるような場合には、さらに多くのユースケースを切り拓くことができると考えているのです。きっと役立ちます。そして、フルスタックアプリケーションをカスタムビルドアプリケーションとして構築するのではなく、そのエスケープバルブを使って必要なユースケースをAirtable上に1%の労力で作ることができるという点が、大きな違いなのです」。
その他の主要な新機能はAirtable Automations(エアテーブル・オートメーション)だ。これを使うことで、カスタム自動ワークフローを構築してレポートを生成したり、その他の反復的なステップを実行したりすることができる。その多くは、サービスのグラフィカルインターフェイスを介して行うことも、JavaScriptを使用して独自のカスタムフローやインテグレーションを行うこともできる。現時点でにおいてこの機能は無料で利用できるが、頻繁に実行されるようになると、これらの自動化フローのコストが問題になる可能性があることを考慮して、チームは将来的にこの機能に対して課金する方法を検討している。
最後の新機能はAirtable Sync(エアテーブル・シンク)だ。この機能を使うことで、チームは組織全体でより簡単にデータを共有できると同時に、誰が何にアクセスできるかを制御することができる。「目標は、Airtableでソフトウェアを構築した人たちが、そのソフトウェアを相互接続できるようにして、テーブルの異なるインスタンス間で、元となるテーブルの情報を共有できるようにすることです」とリュー氏は説明した。