企業を対象としたスタートアップ・インキューベーターAlchemist Accelerator(アルケミスト・アクセラレーター)は、米国時間9月21日に22回目のバッチを紹介するデモデーを開催した。
参加企業には5分間が与えられ、自分たちは何者か、何を作っているのか、なぜ自分たちがそれに誰よりも長けているのかを、満場の投資家たちを前に売り込む。今回は、業務用ロボット掃除機から医療機関のためのプラットフォーム、AI駆動の資金融資プラットフォームまで、さまざまな事業を行う企業が登場していた。
早速どんな企業がデビューしたかを紹介しよう。参加した22社すべての概要を登壇順に列記する。
1.Cresance(クレサンス)
AIを使い、独自のアルゴリズムで無駄を検出し、クラウドの運用コストを削減する。2019年に企業がクラウドのために消費した金額は2000億ドル(約21兆5000億円)に上る。Cresanceは、3~5年後には5000億ドル(約53兆8400億円)にまで膨れ上がると見込んでいる。
2.Bridgefy(ブリッジファイ)
ユーザーが気に入っているインターネット接続が切れたときでも、接続が継続できるモバイルアプリを開発中。彼らのフレームワークは、近くにいる他のユーザーを通じてBluetoothのメッシュネットワークを利用するというもの。創設者Jorge Riso(ホーヘ・リソ)氏によれば、この4カ月間で1万2700件のライセンス契約を交わしたとのこと。また、Bridgefy独自のメッセージアプリは、4週間で14万ダウンロードを記録した(香港の抗議活動の間に利用者が急増)。リソ氏は、Twitter(ツイッター)の共同創設者とブリッジファイの投資企業であるBiz Stone(ビズ・ストーン)からステージに招かれた。
3.Synapbox(シナップボックス)
企業の画像や動画コンテンツにどれだけの効果があるかを調査し、パフォーマンスを高める方法を提供する。創設者Cristina De la Peña(クリスティーナ・ダ・ラ・ペーナ)氏によると、同社の月間経常収益は100万ドル(約1億800万円)を超えると見積もられ、8月の収益は6万ドル(約650万円)、9月は8万5000ドル(約916万円)に上るという。
4.Teleon Health(テレオン・ヘルス)
高齢者介護施設のためのソフトウェアプラットフォーム。同社の最初の製品はHIPAA(米国医療保険の総合運用性と責任に関する法律)に準拠したスタッフ間の通信プラットフォームだ。スタッフ同士が簡単につながり、利用者のデータの交換やそれに関する相談、更新スケジュールの送信などが行える。
5.Particle(パーティクル)
転向、災害、地域紛争など「1日あたり100万件を超える影響力の強いデータポイント」をAIで常に監視し、商品相場(コバルト、プラチナなど)を予測する。2019年には100万ドル(約1億800万円)の収益があり、2020年には3倍に伸びると同社は見込んでいる。
6.Pristēm(プリスティーム)
ポータブルな装置でスチームクリーニングができる。オフィス、ホテル、アパートなどで、ドライクリーニングの代わりに使用されることを想定している。ハードウェアのライセンス料と月間のサブスクリプション料で収益を得る。同社の共同創設者によると、マリオットやハイアットを始めとするホテルチェーンから基本合意をもらっているという。Pristēmという名称はスチームに掛けてある。
7.EveraLabs</span>(エベララブズ)
尿から幹細胞を収集すると同社が主張する在宅の郵送キットだ。若いときの幹細胞を保管しておき、後に健康上の問題が発生したときに役立てるというアイデアだ。
8. testRigor(テストリガー)
開発中のソフトウェアを「人間レベル」で自動テストする。現在は年間経常収益が20万ドル(約2150万円)と推測されるが、今後30日で30万ドル(約3230万円)になると予測している。共同創設者のArtem Golubev(アーテム・ゴリュベフ)氏によれば、testRigorはすでに、GrubHub(グラブハブ)、stockX(ストックエックス)、Genentech(ジェネンテック)など26社と商談を進めているという。
9.Spectrum CannaLabs(スペクトラム・カナラブズ)
合法的な大麻(カナビス)製品のための、速くて正確な専門の検査を提供する。合法カナビス製品は、多くの州で、残留農薬、菌類、重金属、異物の出荷前の検査が義務づけられているが、同社によればそのための研究室の費用は高額になるという。
10.Gritwell(グリットウェル)
栄養士や栄養士、自然療法士と、持病を抱える患者とのマッチングプラットフォームを運営。同社は当初、ループス(全身性エリテマトーデス、全身性紅斑性狼瘡)の患者を対象としていたが、現在は自己免疫疾患の患者にサービスを拡大している。
11.Green Light Labs(グリーン・ライト・ラブズ)
電気自動車への乗り換えを後押しするマーケティングプラットフォーム。MyGreenCar(マイグリーンカー)とMyFleetBuy(マイフリートバイ)という2つのアプリは、車の走行状況を分析して、別の車ならどれぐらいのコストになるかを、個人向けまたは企業向けに分析する。現在、契約で生じた収益は130万ドル(約1億4000万円)。
12.Friendly Robots(フレンドリー・ロボッツ)
業務用のロボット掃除機。ルンバのようなものだが、大型で、広く入り組んだ業務用スペースを掃除する。自律度も劇的に高められている。CEOのXiao Xiao(シャオ・シャオ)氏は以前Apple(アップル)で、おもにApple Watch用の距離計やモーションセンシングのアルゴリズムのデザインと開発を行っていた。
13.Bludot(ブルドット)
地方自治体が、地元の産業の成長を監視し分析できるようにするクラウドベースのプラットフォーム。そのデータを許認可に結びつけ、自治体がビジネスオーナーたちとつながれる場所を提供する。現在、中規模の都市での試験プログラムを完了したところだ。
14.Coolso(クールソー)
手首に装着して筋肉の動きを感知することで、ジェスチャーでデバイスの操作ができるようにする装置。共同創設者のJack Wo(ジャック・ウー)氏によると、同社のソリューションは、Thalmic Labs(サルミック・ラブズ)のMyo(マイオ)やLeap Motion(リープモーション)などのアプローチと違い。安価に製造でき、しかも安定しているという。
15.Crelytics(クレリティクス)
金融業者のためのAIを使ったリスク評価と不正検出のためのソフトウェア・プラットフォーム。カスタマイズ可能な意志決定エンジンでもある。現在の年間経常収益は10万ドル(約1080万円)以上とされている。
16.LEAD(リード)
企業内に「素晴らしい職場文化を築く」ことを目的としたプラットフォーム。従業員を、興味や職歴をもとにマッチングし、1~4週間ごとにお茶やランチや仮想訪問で会合させる。Slack、Google Suiteなどの既存のソフトウェアと連動させて使用する。
17.Celly.ai(セリー・エーアイ)
AIを使った顕微鏡検査による診断を行う。光学式アダプターで顕微鏡のレンズにiPhoneを接続すると、Celly.aiのニューラル・ネットワークが、まずは血球数をカウントし、血液塗抹標本の分析を行う。
18.Blushup(ブラシュアップ)
美容製品の小売業者(ロレアルやランコムなど)向けのマーケットプレイスであり予約ソリューション。創設者Monique Salvador(モニク・サルバドール)氏によると、オンライン予約ソリューションを利用している美容小売業者ではわずか37%だという。
19.Modality.ai(モダリティ・エーアイ)
ユーザーの動画(アバターで通信している間に録画)で、表情の動きや話のパターンなどから神経疾患の変化を評価する。神経疾患のための薬の試用を、標準化された客観的なデータによってより効率的に行うことを目的としている。
20.Chowmill(チャウミル)
企業の会議やイベントのための食事の注文を、早く簡単にできるシステム。食事の好み、好きなレストラン、予算などを入力すると、Chowmillが残りの作業を自動的に処理する。創設者Mubeen Arbab(ミュービーン・アーバブ)氏によれば、同社の売上総利率は40%とのこと。1月には収益が2万5000ドル(約270万円)だったが、8月には11万8000ドル(約1270万円)に増加した。
21.Yaydoo(イェイドゥー)
値段交渉や再注文など、企業の調達業務を自動化する。年間経常利益は120万ドル(約1億3000万円)と予測されている。
22. SmartBins(スマートビンズ)
食料品店の量り売りのためのスマート・ディスペンサー。既存の容器で使用できる。客は、ディスペンサーを普通に使うだけで、SmartBinsのシステムが自動的に分量を計測し、その近くに置かれてる発券機からラベルが印刷されて出てくる。共同創設者のDavid Conway(デイビッド・コンウェイ)氏によると、すでに市場占有率100%の量り売り用ディスペンサーのメーカーと販売契約を交わしたという。食品メーカーと小売店は、商品ごとの売り上げの分析結果をダッシュボードで見られるようになる。
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(翻訳:金井哲夫)