Amazonは長い間、そのプラットフォーム上での売上をさらに伸ばすために、顧客からのフィードバックやその他のランキングデータを利用してきた。そしてこのたび、このe-コマースの巨人は、その書籍ビジネスでさらに売上を伸ばすための新しい仕掛けを始めた。
始まったのはAmazon Chartsだ。これはAmazonがユーザーに提供する新しいベストセラーリストの一種だが、Amazonで「最も読まれている」トップ20リストという切り口が新しい。これはKindleで読まれ、Audibleで聞かれた書籍の数に基づく新しい指標だ。
これに加えて、アマゾンは新しい種類の「最も売れている」トップ20リストを提供する。このランキングには、売れた書籍や事前予約された書籍だけが含まれるだけでなく、週単位でAmazon.comで借りられた(AudibleとAmazon Books)書籍が含まれる。またセールスの過程で得ることのできたその他の指標に基づく統計も提供される。
Amazonが本のランキングを提供するのは、これが初めてではない。
開始以来Amazonは、総合ランキングならびにそれぞれのカテゴリー内で、どれくらいの数が売れているかに基づく、書籍のベストセラーリストを提供してきた。また、より多くの人びとに、そのプラットフォームを使った出版と販売を促すための一環として、様々な販売分析データも提供している。
そして同社は長い間、他の人がどのようなものを読んでいるかについての情報を使って、社会的な方面からの効果的なアプローチも試みて、さらにセールスを伸ばそうと努力してきた。
おそらく、こうした方面の、これまでで最も注目すべきAmazonの取り組みは、人気のあるGoodreadsサービスの買収だった。2013年に1億5000万ドルで買収されたと言われているこのサービスは、人びとがGoodreadsコミュニティの中で、その友人たちやその他の人びとの読んでいる書籍やその評価を追跡できるソーシャルネットワークを提供するものだ。
Goodreadsが、友人たちや好みの似通った人たちが、世の中の広範な書籍にどのように反応しているのかを描き出すロングテールだとするならば、Amazon Chartsはより機敏なアプローチと考えることができる。
AmazonのKindleコンテンツ担当副社長であるDavid Naggarは、他のベストセラーリストを彩る人間によるキュレーションとは別に、純粋なデータに基づく推奨リストを提供しようとしているのだと語った。
彼は「友人たちが本の推薦をするときには、本当に読んで愛している本を勧めてくれるものです」と声明で述べている。「現在みられる多くの有名なベストセラーリストは、編集的な観点から書籍が追加、削除、またはランク付けされています。ですが私たちの顧客は、どの本に着目すべきかのオピニオンに左右されたものではなく、実際に読まれている実績と販売データに基づくベストセラーリストも望んでいるのです。私たちは、本の愛好家の皆さんが、次の素晴らしい読書体験に出会うお役に立つために、Amazon Chartsを提供できることを嬉しく思っています」。
書籍がどのように読まれているかに関するデータの提供は、Amazonの専売特許ではない。たとえばJellybooksのようなものも、この領域で推奨と発見のプラットフォームを構築しようとしてきた。
ここで注目すべき点は、Amazonがそのクローズドループを促進するために、自身の巨大なプラットフォーム上のデータに強く拘っているということだ。
その中でAmazonは、書籍がどのように読まれているかの状況を、様々な指標で示すミニダッシュボードも提供している。
私が以前見た時には、Margaret Atwoodの”The Handmaid’s Tale“(侍女の物語)が、米国で最も読まれた本としてリストされていた。Amazonはまた、小説のための「チャート図」を私に示して、それがメイン州で最も人気のある本であると私に教えてくれた。(なぜメイン州かって?正確にはわからないが、本の設定と関連しているのかもしれない)。またこの書籍が、どのようにTVシリーズ化されたかに関する情報も提供された。
最も読まれたトップ20リストの中の他の2冊、Paula Hawkinsの”Into the Water“とJ.K. Rowlingの”Harry Potter and the Sorcerer’s Stone“(ハリー・ポッターと賢者の石)に関しては、また別のデータ観点が示された。Hawkinsの本はKindleで読まれるよりもAudibleで聞かれた方が多く、またハリー・ポッターは今週一番読まれた本の中では最も短い本だった。
これらのデータ観点は選択的なもので、Amazonが何を選ぶのかの基準ははっきりしない。このことに私が言及している主な理由は、このことが、膨大な販売および流通事業を通じて、販売され消費されているものについて、Amazonがいつもどのくらいの量のデータを蓄積しているかを垣間見せてくれるからだ。結局のところ、これらはすべて顧客を引き込むことが目的で、各タイトルは皆、書籍の販売ページにリンクしている。
そして、本当に本好きの人に向けては、AmazonはChartsをAlexaと連携させて、その音声アシスタントが搭載されたEchoその他のデバイスに対して、質問ができるようにしている。「Alexa、今週最も人気のある本は何?」そう尋ねれば、トップ20のリストを音声で教えてくれるのだ。
AlexaとAmazonの音声インターフェイスへの取り組みが拡大し続ける中で、このような統合が今後のプロダクトの中心的な(あるいは全ての)部分になることが予想される。
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(翻訳:Sako)