Amazon(アマゾン)が、意図的に「Amazonプライム」の解約プロセスに摩擦を加えている、いわゆるダークパターンを使用していると、欧米の16の消費者権利団体から標的にされている。これらの団体は、規制の介入を促すために協調的な行動を取っている。
そのうちの1つであるノルウェーの消費者協議会(NCC)は、eコマース大手のAmazonが提供する有料会員サービスであるAmazonプライムの解約プロセスを「操作的」で「不合理に面倒」と表現した報告書を発表した。このリポートはイーグルスの名曲に出てくる歌詞をもじって「You can log out, but you can never leave(ログアウトはできるが、退会はできない)」という題が付けられている。
「有料会員を解約するのは、最初に申し込みした時と同じように簡単であるべきです。Amazonは顧客の邪魔をしたり、顧客を騙して必要のない有料サービスを継続させたりするのではなく、良いユーザー体験を促進するべきです」と、NCCのデジタル施策担当ディレクターであるFinn Lützow-Holm Myrstad(フィン・リュッツオ=ホルム・ミルスタッド)氏は声明で述べている。
「このような行為は、消費者の期待と信頼を裏切るだけでなく、欧州の法律に違反していると考えています」と、同氏は付け加えた。
プライム会員はAmazonの武器の中で重要なツールであり、確実に定期的な収益を生み出すと同時に、無制限の「無料」お急ぎ便配送(マーケットプレイスの商品では対象となる一部に適用される)というニンジンを使って、ユーザーが自分から何度も購入したくなるように仕向けている。
Amazonがプライム会員に「甘い汁」として用意している特典には映画、テレビ番組、音楽、ゲームのストリーミング配信や、会員限定のお得なショッピングプログラム、会員限定セールなども含まれている(特典の内容は市場によって異なるが)。
しかし、会員が解約しないように「縛る」ような雰囲気も確かにあり、それが苦情の元になっている。実際に契約を終了するボタンを見つけるためには、複数のメニューを間違いなくたどっていく必要があり、まぎらわしい言葉で書かれた複数の選択肢から選び、様々な気を散らすおよび / もしくは無関係なインタースティシャル(間に挟まるページ)を見せられ、ページをスクロールしなければならない。
そして忘れてはいけないのが、これは有名な「1クリック」ボタンの特許を取得した会社であることだ。消費者のお金を会社の利益に繋げるためには、極めて簡単なプロセスを用意しているのだ……。
NCCは以下のような動画を作成し、Amazonがプライム会員を解約から翻意させるために仕かけたダークパターンを説明している。この動画には、プライム会員を解約しようとして悪戦苦闘させられるユーザーがアニメで描かれているのだが…いや、正直にいってなんともわかり難い。
Amazonの何度もクリックを強いるプライム会員解約の手順に対する苦情はデンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、スイス、ノルウェー、米国の消費者団体によって訴えられており、様々な国および地域の消費者保護法が関係する。
たとえばNCCの訴状では、ノルウェーのマーケティングコントロール法(Marketing Control Act)を参照している。これはEUの「不公正な取引慣行に関する指令」を実行するもので、訴状の中で説明されているように、「サービス提供者が異なる市場でどのようなマーケティング、商業慣行、サービス条件を使用することが許されるか」の枠組みを定めている。
「マーケティングコントロール法第6条は、不公正な商行為が禁止されているという指令第5条の一般条項を実行するものです。不公正な商法を構成するものは第6項の第2段落で定義されており、消費者に対する『善良な商習慣』に違反し、それがなければ消費者がしなかったであろう決断をするように仕向け、消費者の金融行動を大幅に変えることができる場合には、その商法は不公正であると記されています」と、NCCは主張している。
協調的な苦情の中には、それほど型式張ったものではなく、消費者保護機関に調査を促す書簡の形をとるものもある。たとえば米国では、FTC(連邦取引委員会)に「Amazonの行為を調査し、FTC法第5条に違反していないかどうかを分析するように」求めている。
ドイツの消費者保護機関であるVZBVは、Amazonプライムの解約手順を現在評価中と我々に語ったが、ノルウェーの苦情とは「少し違う」と指摘しており、この問題について裁判所に差止命令を出すかどうかはまだ明らかになっていないと述べた。
「他の消費者団体とは異なり、私たちは当局に訴状を送っているわけではありません」と、VZBVの広報担当者は付け加えた。「私が勤務するドイツ消費者団体連合会(VZBV)は、法的な警告を発したり、停止および差し控えの要求が満たされない場合には、消費者保護法を侵害する企業を自らの権限で訴えることができます。今回の訴えに十分な法的価値が認められる場合には、そのようにしていきたいと考えています。しかし、先ほど申し上げたように、まだ完全に決まったわけではありません」。
我々は、Amazonにプライムの解約手順に対する苦情についてコメントを求めたが、それはオンラインでの「数回のクリック」または「簡単な電話」だけで済むと主張し、プライム会員の解約を不明瞭かつ困難にしているということは否定した。
以下がその声明の全文だ。
Amazonはプライム会員がいつでも解約できるように、オンラインで数回クリックするだけ、簡単な電話をするだけ、または会員オプションで自動更新をオフにするだけで、解約できるようにしています。お客様の信頼は、当社のすべての製品とサービスの中心にあり、当社の解約プロセスが不公正であるとか、不確実性を生むという主張は受け入れられません。当社は、プライムサービスと会員の生活をより快適にする数々の方法に大きな誇りを持っていますが、お客様がいつでも簡単に退会できるようにしています。オンラインの解約手順では、解約することで受けられなくなる特典やサービスの全貌をご紹介しています。
消費者団体が結束して、大手テック企業に怪しげな慣行を変えるよう圧力をかけることは、新しい現象ではない。たとえば2018年に遡ると、多くの欧州の団体が、Google(グーグル)による位置情報の「欺瞞的な」収集行為に対する苦情を取りまとめた。1年近く前にアイルランドのデータ保護委員会が正式な調査を開始しており、これは現在も継続中だ。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Amazon、eコマース
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(翻訳:TechCrunch Japan)