Amazon上のFBA店を大量に買い漁るThrasioがさらに約790億円調達

Amazonマーケットプレイスのロールアップが快調に進んでいる。最近の動きとしては、このプラットフォーム上のサードパーティーセラーを整理統合する初期からの事業者であるThrasioが、小規模なセラーたちに規模の経済による良質な管理と成長を提供するという約束を掲げて、7億5000万ドル(約791億8000億円)の資金を調達した。評価額は30億ドル(約3167億3000万円)と40億ドル(約4223億円)の間、また、それより高いとも言われるが、広報担当者は「100億ドル(約1兆558億円)に満たない」としか述べていない。

この投資は同社の既存の投資家であるOaktreeとAdventがリードし、以前からの匿名の投資家たちも参加した。資金支援者たちのリストにはPeak6、Western Technology Investment、Jason Finger(ジェイソンフィンガー)氏(初期のフードデリバリーSeamlessの共同創業者)らがいる

Thrasioはその資金を、Amazon FBAを利用しているサードパーティーセラーをさらに多く買収することに投じるつもりだという。FBAとは「Fulfilment By Amazon」の頭字語で、セラーは商品をAmazonに送るだけで、その後の販売、発送、決済処理をすべてAmazonがやってくれるというものだ。

「Thrasioは例外的な成長を続けています」と、Carlos Cashman(カルロス・キャッシュマン)氏とともに同社を設立したJoshua Silberstein(ジョシュア ・シルバースタイン)はいう。「Thrasioは例外的な成長を続けています」とCarlos Cashmanと共に会社を設立し、共同で指揮しているJoshua Silbersteinは述べた。「過去2カ月で、我々は毎日150万ドル(約1583億7000万円)の収益を得ています。Thrasioは毎週2、3件の取引を行っています」。

Thrasioは今日まで100社近くのFBA企業を買収したが、その過程で6000社の候補企業を評価し、1万4000種類の商品カテゴリーの、それぞれ売上最上位の製品を検討してきた。

6000は大きな数字に聞こえるかもしれないが、ある推計によると、Amazon上には約500万のサードパーティーセラーが存在しており、2020年だけでも100万以上のセラーが参加、現在も指数関数的に増加している。

チャンスの大きさと、Amazonが証明したeコマースの世界におけるスケールメリットが、現在、スタートアップが多くのセラーをロールアップ(大量買収)しようと狙っている理由だ。

Thrasioによる7億5000万ドルの資金調達は、全額がVCによる株式投資だ。同社の広報担当者によると、評価額は公表しないが、2021年1月に5億ドル(約527億4000万円)の融資ラウンドを完了したときには、評価額30億ドルと報じられた。

しかしそれは負債のラウンドであるため、この度の株式投資にそのまま当てはまる評価額とは限らない。2つを並べることも、間違っているかもしれない。合理的な推計としては、それは30億ドルと40億ドルの間で、それより大きい可能性もある、という表現になる。

「それより大きい」と表現できるのは広報担当者がそう言ったからだけではなく、eコマースにおけるこの特殊な分野が現在、特に過熱しているからだ。

Thrasioのニュースが入ってきたのは米国時間2月9日午後であり、それはライバルのBrandedが1億5000万ドル(約158億2000万円)の資金で独自にロールアップ事業を立ち上げたと報じてからわずか数時間後だった。Brandedの場合、重要なのは共同創業者に、ヨーロッパの資金量豊富なVC企業Target Globalが含まれていることだ。

しかもThrasioとBrandedには、Berlin Brands GroupSellerXHeydayHeroesPerchといった既存のライバルがいる。彼らが、将来性のある小さなサードパーティーのマーチャント(商業者)を買うために集めた資金は、ゆうに10億ドル(約1054億7000万円)を超えるだろう。

Thrasioによると、同社の資金調達はすばやく進み、既存の株主たちが11.1%希釈され、株と負債で1株あたり1.75ドルを調達したことになる。

Thrasioのプロダクトには、Thrasioというブランドはつかない。しかし私の推測では、Thrasioもそのライバルたちも、もっと高品質を示唆するような鋭角性を狙っているのだろう。現在、これらセラーの一部のいい加減な命名は避けると思われるが、とにかく今後を見守りたい。

同社が保有するブランドの例としては、深部マッサージのVybe Percussionや、光治療のCircadian Optics、スキンケアのSdara Skincareなどが挙げられる。

競合製品の中には本当に優れた製品もあるため、Thrasioは買収したブランドのマーケティングとアナリティクスに力を入れると述べ、「有名ブランドと競合し、プロダクトへの信頼をすばやく獲得して、消費者が信頼して日常的に使用するアイテムに育てたい」という。

FBA企業をロールアップしていく熱病のようなペースは、いかにもバブルを思わせる。特に、若いスタートアップ各社はどこも、Amazon上のセラーを買い上げて整理統合していく戦略が利益を生むことをまだ実証していないからだ。

唯一、利益を報告しているロールアップ企業であるBerlin Brands Groupは、利益は同社が新たに作ったさまざまなサードパーティーセラーから得ており、買収した企業からではない。昔の有名ブランドが、ロールアップで息を吹き返した例もまだない。

Thrasioは今まさに、投資で大きくなるか、ならないかの瀬戸際にいる。2018年に創業されたわずか3歳の企業だが、この分野では最も古く、実績もある企業になっている。

「10年後には、全方向的なリテールが消費者製品全体のエコシステムのバックボーンになります。今は、その創生期です。毎日のように市場構造そのものが進化し、変形しています。私たちのバランスシートは、昨日までの戦いに勝つために作られてはいません。1つの業界の、地殻変動的な変化にともなって加速される商機を追うべく設計されているのです」とキャッシュマン氏は語る。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Thrasio資金調達Amazon

画像クレジット:Angela Kotsell/Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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