割り勘アプリ「paymo」などを提供するAnyPayは8月10日、グループ会社でシンガポールに籍をおくAnyPay Pte.Ltd.にて収益分配型のトークン発行システムを開発中であることを発表した。2018年中にもシンガポールと日本でリリースされる予定だ。
株式ではなく、仮想通貨を発行することによって資金を調達するICOは、新しい資金調達手法として徐々に市民権を獲得しつつある。coindeskによる統計を見ると、2018年7月末時点におけるICOによる累計資金調達額は世界全体で200億ドル(約2兆2000億円)を超え、特に2017年から急速に普及してきたことが分かる。
しかし、その一方で、日本を含む各国ではこの新しい資金調達手法に適用する法律や規制が十分に整備されていないのも事実だ。そのために、ICOによる資金調達を断念する企業も多い。
そんななか、仮想通貨を利用した新しい資金調達手法として近年注目を浴びているのが、金融商品関連法令にもとづく金融商品としてトークンを発行して資金調達を行うSTO(Security Token Offering)だ。通常、ICOでは仮想通貨を発行する企業のサービスなどで利用できるトークンを発行することが一般的。これらのトークンは「ユーティリティトークン」と呼ばれる一方で、STOによって発行するトークンは、企業の所有権や配当など取引可能な資産によって裏付けられた「セキュリティトークン」と呼ばれる。
金融商品関連法令に則ったかたちでトークンを発行するためには、発行するトークンが金融商品であると認められなければならない。規制が不十分という環境のなか、仮想通貨による資金調達を実現するためには、株式などの金融商品に近い性質をもつセキュリティトークンはこの点で有利となる。
そのような背景もあり、STOによる資金調達を計画する企業が増えてきてはいるものの、実施に先立って調査すべき法的要件や必要書類は多岐に渡り、経験がない企業がイチからSTOを実施するのは非常に困難であることも事実だ。
そこでAnyPayは、これまで展開してきたICOコンサルティング事業で培った知見を利用し、企業がより簡単にSTOを実施できるようなシステムを開発中だ。AnyPayはコンサルティング事業を通して、これまでに「数社」の企業を相手にICO実施のサポートを行ってきた。そのなかには、STOによって合計約1800万ドルを調達した企業もあるという(ただし、この例はインド企業)。
開発中のトークン発行システムの詳細はまだ明らかにはなっていないものの、同システムでは「トークン発行機能、STOを実施したあとの配当配布やIRを円滑に進めるためのツール」が利用可能になるという。
なお、AnyPayは同システムの運営において、Gunosyやインキュベイトファンドなど事業会社やVCとの協業パートナーシップを交わしたことも併せて発表している。これらのパートナーが担う役割について、ICOコンサルティング事業の責任者である山田悠太郎氏は、「事業会社のパートナーとは、ブロックチェーンの仕組みを活かしていかにセキュアで透明性のある全体の仕組みを作っていくかなど(システムの開発面で)協業を進める。パートナーシップに参加する各ファンドとは、彼らの投資先企業のバリューアップをSTOによってお手伝いすることで、ファンドとAnyPayの両社にメリットのある協業ができると考えている」と話した。