AppStore上位常連アプリが実践する、9つの継続率向上テクニック

この原稿は、アプリ開発者向けのプッシュ通知解析ツール「GrowthPush」を手がける、シロクの萱嶋卓氏による寄稿である。GrowthPushは、プッシュ通知のセグメント配信やユーザーの行動を解析し、アプリの利用継続率を高めるのが特徴。現在、5000アプリ以上が導入し、1億以上のデバイスにGworthPush経由でプッシュ通知を配信している。

App Storeランキング上位常連のアプリの多くは、「継続率」を向上させるテクニックを駆使している。ここで言う継続率とは、1)どうすれば会員登録を突破できるのか、2)どうすればアクティブユーザーになってくれるのか、3)どうすれば非アクティブユーザーを呼び戻せるのか――という3つの要素に集約される。実際に、日米でランキング上位を維持しているアプリは、どんな施策を取っているのか? AirbnbやiQON、Vineなど、TechCrunchでもお馴染みのアプリの施策を事例ベースでまとめた。

どうすれば会員登録を突破できるのか?

会員登録導線とチュートリアルを同時に見せる(Airbnb)

Airbnbでは初回起動時に表示されるチュートリアル画面に、会員登録の導線を配置している。すべてのチュートリアル画面に会員登録導線を配置することにより、ユーザーのタイミングで会員登録に進むことができる。画面右上に設置してあるxボタンを押せば、会員登録せずにサービスを利用することもできる。



ユーザー名の自動生成(iQON)

コーディネートアプリ「iQON」は初回起動時、ユーザー名が自動生成されるのが特徴。会員登録不要でいろんな人のコーディネートを見ることができる。初回起動時の会員登録フローなくしたことにより、初期ユーザーの離脱ポイントを減らしている。自動生成されたユーザー名については、後から変更することができる。

どうすればアクティブユーザーになってくれるか?

アクセス許可への不信感を取り除く(Scannable)

Evernoteのスキャンアプリ「Scannable」は、カメラへのアクセスを求める前に、「書類をスキャンするため」というアクセスの目的を伝えることで、ユーザーに高確率で許可をしてもらうことができる。一度“許可をしない”を押してしまったユーザーは、メインのスキャン機能が使えずに離脱してしまうリスクがある。



チュートリアルでメインとなるアクションをさせる(Trivia Crack)

アメリカで大人気のトリビアクイズゲーム「Trivia Crack」は、チュートリアルでゲームループ(一連の流れ)を体験してもらうことで、ユーザーに何をするアプリなのかを伝えている。また、ゲームの中で自分のターンになるとプッシュ通知で教えるなど、ゲームループを体験させる工夫をしている。


デフォルトでフィードを埋める(Vine)

Twitterで初回登録時に5人フォローするように導線を設計したところ、MAU(月間アクティブユーザー数)が4倍になったというのは有名な話。一方、Vineではフォローする必要はなく、Vineスタッフおすすめユーザーのポストでフィードが埋まっている。サイトやアプリを使い始めてすぐ何もないフィードに飛ばされてしまうと、ユーザーは何をしたらよいかわからないので、最初に何を表示させるかは非常に重要である。



ログインにインセンティブを与える(Pairs)

累計180万人が利用する人気出会い系アプリ「Pairs」は、連続でログインすることで、アプリ内で利用可能なポイントが得られる。連続ログイン日数が多いほど獲得できるポイントも高くなるため、ログインするモチベーションを形成している。


どうすれば非アクティブユーザーを呼び戻せるか?

プッシュ通知の最適化(Simplog)

弊社が支援しているブログサービス「Simplog」は、プッシュ通知を最適化することにより継続率が10パーセント上がった。プッシュ通知の文言や内容だけでなく、バッジやサウンドの有無、時間帯、配信間隔、曜日、OSの出し分けなど、細かくABテストを行うことでプッシュ通知の開封率を向上させた。

メルマガ(Fancy)

ソーシャルコマースサービス「Fancy」では、その週の人気コンテンツをまとめて、メルマガを送っている。画像をタップするとアプリが立ちあがり、その画像のページにすぐ移動できる。

カムバックメール(ガールフレンド(仮))

学園恋愛ゲーム「ガールフレンド(仮)」は、運営会社が呼び戻しメールを送るのではなく、ユーザー自身がゲーム内で繋がっている離脱したユーザーを呼び戻す仕組みを作っている。豪華アイテムというインセンティブを与えることで、1人が数百人にカムバックメールを送った例もあり、非常に上手くいった呼び戻し施策の1つである。



あなたはこれらの継続率向上施策を全て知っていただろうか?

アプリでは、どうしても“獲得”が重要視されがちだが、サービスにおいて最初に重要視されるべきは継続率であると私は考えている。まずはサービスの中に“ハマる仕掛け”を作り、そしてその仕掛けを初回起動でひと通り体験できるような導線作りが必要だ。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。