通信キャリアのAT&TがTime Warnerを854億ドルで買収

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噂が連日のごとく伝えられていたが、ついに公式の発表があった。 AT&Tは現金と株式で、Time Warnerをおよそ850億ドルで買収する。新たな巨大企業がメディア領域で誕生する。

最終的な買収額は1株あたり107.50ドルで、現金とAT&Tの株式の半分づつで支払われる。つまり、Time Warner株を持つ投資家は1株あたり53.75ドル分を現金で、残り半分をAT&T株で受け取る。

Time Warnerの評価額は854億ドルとなる。取引が完了した際には、Time Warnerの株主はAT&Tの株式の14.4%から15.7%を所有する計算となる。Time Warnerは統合した両社の総売上の15%に貢献する。

AT&Tは現金取引のために資金調達を行う。およそ427億ドルを新たに債券で発行し、同社のバランスシートにすでに反映済みの現金を用いる。

両社の株主にとっての利益は、買収完了から3年以内に年間10億ドルのコストで両社のシナジーを発揮できることとAT&Tは伝える。

今回の買収はある意味、テック/メディア/通信業界が昔から抱える懸念材料が発端となっているのだろう。キャリアは土管になることを恐れ、魅力的な合併を行うことでその懸念を払拭しようとしてきた。

AT&Tの戦略も突き詰めれば同じことだ。今回の買収で、このキャリアはコンテンツの制作ができる資産を大量に得る。HBO、CNN、Warner Bros. studioが含まれていて、同社の動画とコンテンツビジネスをテコ入れすることが可能だ。特に今回の買収でAT&Tは、すでにコンシューマーに販売している自社サービスを経由して、新たなチャンネルへのアクセスとコンテンツを提供することが可能になる。コンテンツを所有するということは、より便利にコンテンツにアクセスできるだけでなく、コンテンツから高い利益率を得ることができるということだ。

AT&TのTime Warner買収には既視感がある。このキャリアの最大のライバルVerizonはAOLを2015年6月に44億ドルで買収している。AOLとTime Warnerはその昔、合併して1つの会社だった。それは、ビジネスの歴史の中で最悪の合併と捉えられている(案の定、両社は最終的に別れた)。

Verizonも企業買収を行い、自社の地盤を強化している(現在Yahooの買収を進めている最中だ。他にもIoT分野の企業を買収するために数十億ドルを費やしている)。AT&Tはコンテンツ配信ビジネスを拡張することを目指し、DirecTVやCharter Communicationsといった動画サービスプロバイダーを多く買収してきた。そして、今回はそれに必要な最初のパーツである「コンテンツ」を取りに行った。

上院議員のAl Frankenは、この買収に関して声明を発表し、最終的にコンシューマーにとっては良いことではないかもしれないと記した。

「AT&TがTime Warnerを800億ドルで買収するというメディア領域での大型合併には、注意が必要です。この分野の問題に私は何年も取り組んできました」とFranken上院議員は伝える。「私は大手メディア企業が統合することに懐疑的です。コンシューマーにとっては高コスト、少ない選択肢、低品質なサービス提供につながる可能性があるからです。規制機関も大抵同意します。失敗に終わりましたがComacastがTime Warner Cableを買収しようとした時も同じです。私はこれに強く反対しました。この買収についての詳細、そしてアメリカのコンシューマーにどのような影響があるか、そして上昇する通信とインターネットコストを誰が負担するのかといったことに関し、今後さらなる情報を求めてます」ー上院議員 AI Franken。

両社は今回の買収について、午前8:30(ET時間)から共同発表を行う予定だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

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TechCrunch Japan

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