AWSは、開発ツールから脱皮しようとしている

Amazon Web Servicesは、様々なことで知られているが、そのいずれもがクラウドコンピューティングのインスタンス、データベース、およびストレージ等のデベロッパー向けサービスに関連するものだった。しかし最近AWSは、徐々にエンドユーザー向け生産性ツールになりつつある。

Amazonがこの市場へ参入した最初の試みはAmazon Cloud Driveだった。これは去る2011年にスタートしたが、正確な利用者数は知られていないものの、多くの消費者が登録したとは思えない。今 ― おそらくFire Phoneの発売に合わせて ― 同社はこの取り組みに拍車をかけるべく、AWSの名前の下、エンタープライズユーザーを引き込もうとしている。

Cloud Driveの後、この分野ではおよそ静かだったAmazonだが、昨年になってAmazon WorkSpacesの限定ベータテストを開始した。これはエンタープライズ向けのバーチャルデスクトップで、今年3月に一般公開された。Workspaceを使うために、依然として管理者はAWS管理コンソールで設定する必要があるが、ユーザーにとっては単純明快な体験だ。

このプロジェクトは、もちろん実際のウェブアプリケーションよりもバーチャル化が主な目的だった。しかし、今回Amazonが発表したZocaloは、Google Drive for WorkやDropboxと競合するフル装備のサービスで、ウェブベースのインターフェースが用意されている。ここでも対象は主としてエンタープライズであり、消費者向けの無料サービスは提供されない(ただし、5ドル/ユーザー・月という通常価格は実に意欲的だ)。しかし、ひとたび軌道に乗れば、Amazonが企業だけを相手にするとは考えにくい。

Amazonは、これまでにも電子書籍や音楽サービス向けにある種のウェブアプリを長年提供してきたが(おそらくAmazon.comもウェブアプリだとする考えもあるだろう)、Zocaloは、AWSにとって全く新しい方向への一歩だ。そしてこれは、スタートアップ各社が心配すべき事柄でもある。例えば、DropboxはAWS上でスタートした。しかし、Amzonも自らこの市場を取りに来るとしたらどうだろうか?

Fire OSで、同社はデザインもできることを示した。Zocaloのデザインが一部Fire OSに似ているのは偶然ではないだろう。

消費者向きではないが、AWSの新しいモバイルアプリ分析サービスも、同じように同社のプラットフォーム上に作られた他の分析サービスと競合する立場にAmazonを置くものだ。機能的にはまだ、Flurryの分析サービス並みとはいかないが、豊富な無料サービスは多くのデベロッパーにとって十分かもしれない。

現時点でAWSは、モバイルであれウェブであれ、デベロッパーがアプリ開発に必要なものを、ほぼすべて提供している。同サービス上には新機能が急速に追加されているが、その殆どは段階的なアップデートだ。同社がAWSを新しい(あるいは少なくともAmazonにとって新しい)分野にどう展開していくかを模策中であり、その多くがデベロッパー向けサービスやAPI以外に向けられていることは理にかなっている。

Amazonの取り柄は何をおいてもその積極性であり、最近のFire Phoneや数々の新ウェブサービスの発表がそれをよく表している。その結果各分野のライバルたちをいら立たせることがあるとしても、おそらくそれはAmazonがさほど心配していることではないだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。