Axiom Space(アクシアム・スペース)は、国際宇宙ステーション(ISS)への定員3名の往復旅行を5500万ドル(約58億円)という超低価格で提供し、歴史を変えようとしている。
米国ヒューストンに本社を置き、ベンチャー投資企業の支援を受けるAxiomは、同社で訓練した司令官1人と、民間宇宙飛行士3人をISSまでCrew Dragon(クルー・ドラゴン)で往復輸送する契約をSpaceX(スペースエックス)と交わした。
このミッションは2021年後半に打ち上げが予定されており、3人のクルーはISSに滞在して「少なくとも8日間、大きな由緒正しい宇宙ステーションでしか味わえない微小重力と地球の眺めを堪能できます」と同社は声明の中で述べている。
同社の最高責任者Michael Suffredini(マイケル・サフレディニ)氏にとってこの宇宙旅行は、米航空宇宙局(NASA)でのISSの管理者という以前の仕事の延長線上にある。
「この歴史に残る宇宙飛行は、誰もが日常的に宇宙に行ける時代に向かう分岐点となります」とサフレディニ氏は声明で語っている。「これはAxiom Spaceが、つまり民間企業が初めて運営する数々のISSへの完全な有人飛行ミッションの中の最初のひとつに過ぎません。輸送手段を確保できたことは、目標達成への大きな前進であり、この事業でSpaceXと協力できることを大変にうれしく思います」。
この宇宙旅行は、AxiomがNASAと交わしたSpace Act Agreement(宇宙法協定)のもとで実施されるISSへの数々の「先駆け的ミッション」の中の最初のものとなる。Axiomは、この他にもISSへの民間宇宙飛行ミッションの合意を得るべくNASAと話し合いを続けている。
Axiomでは、NASAのスケジュールの合間を縫って年2回のフライトを人々に提供したいと考えている。その計画を進めながら、同社は自己資金による宇宙ステーションの建造も進める。
同社はすでにその目標のために機関投資家の支援を取り付け、個人投資家やCrunchbaseの情報によるとBalfour Capital(バルフォー・キャピタル)、Starbridge Venture Capital(スターブリッジ・ベンチャー・キャピタル)といった機関投資企業から1600万ドル(約17億円)を調達している。
「2012年からSpaceXは、NASAとの契約に従いISSに物資を送っていました。そして今年の後半には、初めてNASAの宇宙飛行士を運びます」とSpaceXの社長兼最高執行責任者であるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は声明で述べている。「今、AxiomとそのNASAからの支援のお陰で、国際宇宙ステーションが初めて民間有人ミッションに門戸を開いたことにより、宇宙の商業化はさらに加速され、有人宇宙探査の新時代が幕を開けようとしています」。
Axiomは、宇宙飛行に挑戦したいという人には、あらゆるトレーニング、計画、ハードウェア、生命維持、医療サポート、生活必需品、安全性証明、軌道上のオペレーションを提供すると話している。
また同社は、2024年後半から始まる、ISSへの宇宙ステーションモジュールの造設を担う企業としても、NASAから選定されている。その目的は、宇宙ステーションにプライベートセクションを設け、その利用可能で居住可能な空間を広げることにある。ISSの運用が終了した際にはそのセグメントを切り離し、自由飛行の商用宇宙ステーションとして運用したいとAxiomは考えている。
SpaceXにとってAxiomとの契約は、単にNASAの宇宙飛行士を運送し、大きな収入源を加えてくれる以上にCrew Dragon宇宙船の商業運用の幅を広げてくれるものでもある。
まさにそれが、SpaceXが商用有人宇宙観光業者と交わしたもうひとつの契約だ。先月、SpaceXは、Crew Dragonに4人の乗客を乗せて5日間の宇宙飛行を提供する事業を行うことで、Space Adventures(スペース・アドベンチャーズ)と合意している。
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(翻訳:金井哲夫)