CES 2018の内容を予想する――出展者リスト、噂、トレンドを総合

実はテクノロジー業界はクリスマスが終わると同時に、新年にならないうちからCESモードに突入する。ここではわれわれが得ている情報を紹介しよう。

世界最大のテクノロジー・トレードショー、CES 2018がいよいよ今月9日から幕を開ける。例年、CES開幕の数日前から大きな発表が相次ぐことになる。

CESが一見愚かしいほど新年早々に開催されるのは偶然ではない(今年の期日は2017より少し遅い)。クリスマスから新年にかけてのホリデー・シーズンで消費者がギフトや欲しいものを買ってしまった直後の時期がメーカーにとって次世代製品をアナウンスするのに絶好なのだ。また多くのメーカーにとってCESは来る1年のプロダクト・サイクルの方向を明らかにする機会でもある。

もちろん、この数年、CESが「盛り上がりに欠ける」という批判はあった。独自のプロダクト・サイクルを守ろうとする大手メーカー、たとえばSamsungなどはCESで本当に重要な発表をしない。一方で他の重要なトレードショーがCESを重視しなくなってきた傾向も目立つ。たとえばモバイル分野を代表するMWCは1月半後の開催だ。

テクノロジー業界は(にかぎらず世界も)激しく変化する状況にあるものの、 CESにとって2018年はややスローな年になるかもしれない。現在目立つトレンドはすべて過去から持ち越されてきたものだ。コネクテッド・ホーム関連製品は今年も大量に出展されるだろう。大人気のAlexaとGoogleを活用した製品が多いはずだ。一部のトレンドはシフトするだろう。ここ数年VRにシフトしていた関心は今年はARに向くはずだ。

以下、今年のCESに登場する(だろうとわれわれが予想する)プロダクトとトレンドを紹介してみる。ソースは出展者のリスト、噂、知られている業界トレンドなどだ。

スマートホーム(Smart home)

ネバダ州ラスベガスで開催されたCES 2014の最終日、1月10日にLGがHomeChatを搭載したLGスマートフォンでLGスマート冷蔵庫を操作するデモを披露している。LG Smart HomeシステムはHomeChatプラットフォームをベースにしておいり、ユーザーは冷蔵庫その他のLGの家電製品をLGのスマートフォンからテキスト・メッセージを送信することでコントロールできる。Photo: ROBYN BECK/AFP/Getty Images

スマートホーム関連が今年も大量に出展されることを予想するのに深い洞察は必要ない。スマートホームの勢いが衰えるきざしはまったくない。むしろスマートハブとなるAmazon EchoやGoogle Homeが昨年離陸したことで、ホーム・オートメーションはますます注目を集める分野となっている。ということはレギュラー出展者からますます多数のこの分野のデバイスが登場すると考えていい。August、Canary、Ring、Kwiksetなどは出展者のリストに載っている。

また長年ホームプロダクトを作ってきた老舗メーカーが21世紀のテクノロジーを採用するにあたってまずスマートホーム・デバイスに注力するということも予想できる。昨年はAppleのHomeKitプラットフォームを利用する互換デバイスが大量に登場した。Appleが直接CESで大きな役割を果たしたことはないが、Appleのスマートホーム・テクノロジーはSiriとiOSをCESの陰の主役にしている。ことにApple自身のHomePodの出荷が遅れる状況ではSiriベースのスマートスピーカー・デバイス分野は特に重要性を増すようだ。

スマートホーム製品はドアの鍵からサーモスタット、電気掃除機まであらゆる分野に進出するだろう。CESはLGやSamsungなどの大手家電メーカーにとって新製品を登場させる絶好の舞台だった。昨年はBixby搭載の冷蔵庫が紹介されたものの、昨年はSamsungのスマートアシスタントにとってやや不本意な年となった。それでも今年も電気洗濯機から電気掃除機まで各種のスマートデバイスが出展されるはずだ。

スマートスピーカー花盛り

2017年はAmazonとGoogleがそれぞれのスマートアシスタントを本格的にサードパーティーに公開した年となった。デバイスが実際に登場したのは年の半ばで、ベルリンで開催された国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー、IFAでソニー、JBLが独自のEchoやHomeデバイスを公開した。こうした互換デバイスはAmazonやGoogleのオリジナル製品に比べて桁違いに音質が良かった。今年のCESではサードパーティーからのスマートスピーカーの洪水が予想される。本家の製品に欠けている携帯性をセールスポイントにする製品もありそうだ。あまり確信はないが、Microsoftも新しいCortanaスピーカーを出すかもしれない。

一方、LGはいち早くGoogle Assistantベースのスピーカーを出すことを約束している。スマート・アシスタントは単独製品だけでなく、サードパーティーの各種製品に組み込まれて地歩を拡大するはずだ。たとえばGarminは最近、車載プラグインのSpeakを発表した。CES 2018ではGoogleとAmazonがそれぞれのスマートアシスタントの能力とデバイスへの組み込みの容易さを誇示して火花を散らすだろう。

特にGoogleは今年のCESに力を入れているという噂だ。これはGoogleにしては異例の動きだ。例年はCESにはせいぜい出展者のAndroidスマートフォンやChromebookのパートナーとして姿を見せる程度だった。.しかし今年Googleは開催場所のラスベガス・コンベンション・センターに何箇所かスペースを確保している。あらゆる兆候からして主役はホームアシスタントとなるに違いない。もちろんDaydream VRのデモもあるかもしれない。

AR/VR/MR

VR(仮想現実)はここ数年のCESの主役を務めてきたし、今年も重要性はさほど減少しないだろう。しかしテクノロジー業界の昨年のトレンドは、VRからAR/MR(拡張現実/混合現実)へシフトしていた。今年のCESのセンターステージはこの動向を反映したものとなるはずだ。

スマートスピーカーの場合と同様、これはサードパーティーの企業にとって既存プラットフォームの上で優秀性を見せる絶好のチャンスになる。今年はスタンドアロンないしワイヤレスのヘッドセットが主役に返り咲くのではないか?

Qualcommが多数のパートナーを支援してこの動きをプッシュするのは間違いない。Qualcommのフラグシップ、Snapdragon 835のデベロッパー・キットはすでにOculus’s Goを始め、スタンドアロンVRヘッドセットの分野で著名なパートナーを得ている。

GoogleのDaydreamも派手に紹介されるだろう。Lenovoは FCC〔連邦通信委員会〕からDaydreamベースのヘッドセットについて承認を得たところだ。つまりこのデバイスがCESに登場する可能性は高い。製品名がMirage〔ミラージュ〕になるならラスベガスでデビューするのにぴったりだ。

AR〔拡張現実〕は、今年のCESのプラットフォーム・テクノロジーとなるだろう。コンベンション・センターの大小のホールにパネルやマーケットプレイスがARをテーマとして多数準備されている。これは家電協会がARテクノロジーに注目している何よりのサインだ。今年の市場はまだ小さいかもしれないが、ソニー、Zeiss、Kodakといったメジャー企業の参入が予想される。

ウェラブル/ヘルス

ここ数年CESのお気に入りのテーマの一つだったウェアラブルだが、ビジネスは2017年には波乱を潜ることとなった。人気がアップしたかと思うと下落し、ローエンドの製品が売れたかと思うと、高価格のスマートウォッチが売れるという具合だった。CES 2018も「どれが売れるかわからないからともかく多数のバリエーションを出しておこう」という年になりそうだ。

有力プレイヤーのFitbitはもちろんこの分野の主役の一つになるだろうが、スマートフォンの場合と同様、ウェアラブル・メーカーもフラグシップの発表には独自のイベントを好むこともあり、CESは比較的静かなものになりそうだ。

スマートアシスタントの場合と同じくCESはテクノロジー企業以外の一般企業が実験的に参入するのにも好適だ。これまでもスマート・シューズ、スマート・TシャツなどがCESに登場している。衣服にセンサーを仕込むテクノロジーを活用した製品が紹介されるかもしれない。

しかし過去にはMotorolaとLGからAndroid Wearデバイスが登場したことがあったものの、GoogleのウェアラブルOSは事実上死に体だ。CES 2018もこの状態を大きく変えることはできないだろう。

モバイル

CESは携帯電話を専門とするトレードショーではない―とくにMWC(Mobile World Congress)が直後に続くことを考えればなおさらだ。それでも主要メーカーはほぼ全社が顔を揃える(Appleだけは例外)。しかしCESでは新たなフラグシップが発表されることはないだろう。QualcommがSnapdragon 845についてなにか発表するかもしれない。

ソニーはこれまでもXperiaスマートフォンの紹介にCESを積極的に利用してきたメーカーだ。今年はSnapdragon 845ベースのモデルが発表されるのではないかという観測が出ている。ただし製品のアメリカ市場への投入はソニーの弱点となっていた。

一方、Huaweiはすでに発表ずみのMate 10、MediaPad M5などの製品をCESで紹介し、アメリカ市場に投入するとみられている。

モバイル分野での最大のニュースはしかし5Gだろう。今週、CESのスケジュールには5Gに関するキーノートが追加された。講演者はVerizon、Qualcomm、Baiduの代表が予定されている。IntelとSamsungはドローンから自動運転車、スマートホームまであらゆるデバイスの背後に存在することになるだろう。

その他

  • 自動車も最近CESで注目を集めている分野だ。今年もトヨタ、フォードを始め多数の自動車メーカーが参加するだろう。当然ながら、自動運転のデモビデオを多数見ることになるに違いない。
  • ロボティクス関連はCESではあまり見かけない。自動掃除機のRoombaを別にして、ロボティクスはまだ消費者向け家電のメインストリームには入っていない。とはいうものの、スマートホームやホームアシスタントに関連して「親しみやすいロボット」がいくつかお目見えすることになるだろう。
  • TV受像機は大型化、高精細度化、スマート化している。CESでも4K、5K、8KとK尽くしの製品が並ぶだろう。
  • パソコンはフォームファクターが多種多様になる。iMac方式のオールインワン製品、Surface風のノートにもタブレットにもできるコンバーティブルなどが多数登場するだろう。Qualcomm、AMDのチップを採用していることをセールスポイントにする製品も多いはずだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

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