Checkout.comが4兆6000億円の評価額で1145億円のラウンドを実施

決済サービスを提供するCheckout.com(チェックアウト・ドットコム)は、並のユニコーンではない。今回同社は10億ドル(約1145億4000万円)のシリーズD資金調達ラウンドをクローズした。本日のラウンドの結果、同社の評価額は400億ドル(約4兆6000億円)に達した。

これは、2021年の評価額からの大幅な増加だ。前回のシリーズCラウンドでは、150億ドル(約1兆7000億円)の評価額で4億5000万ドル(約515億4000万円)を調達していたので、12カ月間で評価額が167%上昇したことになる。決して悪い数字ではない。

Checkout.comは、ゲートウェイ、アクワイアラー、リスクエンジン、ペイメントプロセッサーとしての役割を果たす、フルスタックのペイメント企業を構成している。同社のサービスを使えば、事業者は自社のサイトやアプリで直接支払いを処理することができるが、一方ホスティングされた支払いページに頼ったり、支払いリンクを作成したりすることなども可能だ。

カード決済、Apple Pay(アップルペイ)、Google Pay(グーグルペイ)、PayPal(ペイパル)、Alipay(アリペイ)、銀行振込、SEPA口座振替、さらにはさまざまなローカルネットワークを通じた現金決済にも対応している。

2021年にはペイアウトを行う機能も追加された。Checkout.comの顧客は、銀行口座への送金が可能だ。また、Mastercard(マスターカード)またはVisa(ビザ)ネットワーク上のカードへのペイアウトにも対応している。例えばTikTok(ティックトック)やMoneyGram(マネーグラム)は、Checkout.comのペイアウト機能を利用している。

Stripeと違い、Checkout.comは取引量の多い大規模なグローバル企業の商取引に特化している。同社の顧客には、Netflix(ネットフリックス)、Farfetch(ファーフェッチ)、Grab(グラブ)、NetEase(ネットイース)、Pizza Hut(ピザハット)、Shein(シーイン)などがいる。また、Klarna(クラーナ)、Qonto(クォント)、Revolut(レボリュート)、WorldRemit(ワールドレミット)など、複数のフィンテックユニコーンの決済スタックにも寄与している。

今回の資金調達ラウンドに関しては、投資家のリストが非常に長いので、シートベルトを締めて読んで欲しい。今回のラウンドに参加した投資家には、Altimeter、Dragoneer、Franklin Templeton、GIC、Insight Partners、Qatar Investment Authority、Tiger Global、Oxford Endowment Fund、そして「西海岸の大規模な投資信託運用会社」が含まれていると、同社は発表文に記している。

また、Blossom Capital、Coatue Management、DST Global、Endeavor Catalyst、Ribbit Capitalなどの、同社の既存の投資家にも参加者がいる。

なぜCheckout.comはこれほどまでに資金を集めたのだろうか?それができるから、というのが理由だ。同社によると、ここ数年は利益が出ているので、投資家は長期的な成長のためにバランスシートに資金を追加しているだけだ。Checkout.comは、調達した10億ドル(約1145億4000万円)と引き換えに、同社の株式の2.5%を渡すだけで済んだ。

創業者でCEOのGuillaume Pousaz(ギヨーム・プザン)氏は声明文の中で「過去10年間、洗練された技術スタックと業界の専門知識、そして 『エクストラマイル』アプローチ(かゆいところに手が届くアプローチ)を組み合わせることで、当社は世界で最も革新的な企業と深いパートナーシップを築いてきました」という。「今回のシリーズDはその成果を証明するものですが、私たちはまだ旅の『第0章』の段階にあるので、資金は今後の膨大な手つかずの機会を引き出すために役立つことでしょう」と述べている。

同社は2021年だけで数千億ドル(数十兆円)の決済を処理している。3年連続で取引量が3倍になり、現在は19カ国に1700人の従業員を擁している。

Checkout.comは次に米国市場に焦点を当てたいと考えている。ロンドンに本社を置く同社は、当初はEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域を中心に活動を行っていた。しかし、グローバルな企業のマーチャントと協力していく中で、すべての市場で通用するソリューションを持つことは、将来の顧客にとって大きなセールスポイントになるだろう。

Checkout.comのCFOであるCéline Dufétel(セリーヌ・デュフェテル)氏は声明の中で「EMEAでのアプローチと同様に、当社は企業、特にフィンテック、ソフトウェア、フードデリバリー、旅行、eコマース、暗号資産マーチャントへのフォーカスを続けていく予定です。弊社は、米国のお客様が国内外で成長し、米国以外のお客様が米国に進出することを支援したいと考えています」と語っている。

Web3のチャンス

今回の資金調達によって、Checkout.comはより多くの人材を雇用し、新たな顧客と契約することになるだろう。しかし、同社は立ち止まることなく、新製品を投入していきたいと考えている。

ペイアウトが可能になったことで、新たなチャンスが生まれた。特に、Checkout.comは2022年後半に、マーケットプレイスとペイメントファシリテーターをサポートする予定だ。それはマーケットプレイスの運営者がそれぞれの取引から手数料を徴収できるようにする完全なエンド・ツー・エンドのソリューションとなるだろう。その中では身分証明書の確認や支払いの分割機能も提供される。

また、マーケットプレイスの利用者は、新しいTreasury-as-a-Service(サービスとしての財務)機能により、マーケットプレイス上で直接資金をプールできるようになる。マーケットプレイスが金融サービスをその製品に直接組み込むことができることで、可能性が大きく広がる。

2021年、Stripe(ストライプ)は、Stripe Treasury(ストライプ・トレジャリー)を発表した。Shopify(ショッピファイ)はこの機能をShopify Balance(ショッピファイ・バランス)に採用している。こうしたことは、StripeとCheckout.comの両社がペイメントチェーンのより大きな部分をカバーしたいと考えていることを改めて証明している。

Checkout.comは、新製品に加えて、Web3が市場機会を提供することを認識している。同社はすでに、Coinbase(コインベース)、Crypto.com(クリプト・ドットコム)、FTX、MoonPay(ムーンペイ)、Meta(メタ)のNovi(ノビ)など、複数の暗号資産企業の決済機能の一部を提供している。

しかし、フィアット通貨(中央銀行券など)と暗号資産の橋渡しをすることは、Web3の方程式の一側面に過ぎない。Checkout.comは、顧客がデジタル通貨を使って商品取引を決済できるようにするためのソリューションの、ベータテストを行っている。つまり、Web3版のCheckout.comこそが本当の意味でのCheckout.comになる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Checkout.com

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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