Cherryの新メカニカルキースイッチ「Viola」は低価格市場向け

Cherry(チェリー)は、長期にわたり、メカニカルキースイッチにおける事実上の業界標準とされてきた。メカニカルキーボードは、ただでさえメンブレン式、つまりドームスイッチ型キーボードと比べると非常に高価であるため、同社は市場で大きなシェアを得ることができなかった。だが、CES 2020最終日の10日、Cherryは新しいViola(ビオラ)スイッチを発表した。低価格市場向けに作られた同社初の完全メカニカルスイッチだ。50ドルから100ドル程度(5000円から1万円ほど)のキーボードへの導入を想定している。

今回の発表に先立ってCherryチームが私に話してくれたところによると、この新しいスイッチの開発に、技術者たちはたっぷり1年以上の歳月をかけたという。わずかな部品点数で、キーボード本体の基板の上に複雑な動きをもたらす。自己洗浄式の接点システム(同社は即座にこの特許を取得している)と、シンプルな設計でありながら通常の使用に耐えられる素材の開発にかなり苦労した。

この新設計により、Violaスイッチはホットスワップが可能になり、故障しても、ほんの数秒で新しいスイッチと交換できる。また、キーキャップの取り付け方法として業界標準になっているクロスステム設計は維持されているため、キーボードメーカーは既存のデザインをそのまま使うことができる。

近年の新型スイッチの例に漏れず、CherryのViolaもLEDバックライトに対応しおり、LED付きの新設計キーボードでも、基板に直接取り付けが可能だ。

キーボードにうるさい人なら、新しいViolaスイッチとCherry製の最高級機MXスイッチとの区別は簡単につく。しかし、手頃な価格でメカニカルキーボードを使いたいという人には、Violaスイッチは最適なオプションになるはずだ。

この新しいスイッチをじっくり試す時間はなかったのだが、現在のバージョンはMX Brownスイッチに非常によく似ているということだけは言える。Cherry自身は、こうした比較はして欲しくないようだ。MXシリーズであるかのように思われるのを避けるために、あえて名前も変えた。Cherryは、若干仕様が異なる製品をMX Black、Brown、Blue、Redと区別しているが、色で仕様を表現するこの方式も、今回は使われていない。これは、新しいスイッチがMX市場を共食いしてしまうことを恐れての対策ではないと同社は話しているものの、まったく成り行き任せというわけでもない。

Violaスイッチがこれまでと大きく異なる点は、打鍵耐久回数をCherryが(少なくとも今のところ)公表していないことだ。将来、何らかのアナウンスを出すかも知れないと同社は私に話してくれた。

他のCherry製スイッチと同様、Violaスイッチも同社のドイツ工場で製造され、そのサプライヤーもみな、ドイツで製品を作ることになる。

MXスイッチにおいては、Cherryは打鍵の保証回数を5000万回(それでも十分だが)から1億回に引き上げようとしている。プロゲーマーの中には、その回数に達してしまう者がいるのだ(その回数を超えてもスイッチは機能し続けている)。また、一般のユーザーにとって1億回の打鍵保証回数は、この製品をしっかり保証するというメーカーの姿勢を示すものとなる。これを達成するために、開発チームはスイッチの細部、とくにハウジング内のガイドレールに微調整を施しているが、これが実際のタイピング感覚を変えてしまうことはない。

1億回が保証されたMXスイッチを搭載した最初のキーボードは、すでに販売されている。Violaスイッチを搭載した最初のキーボードは、まもなく登場する。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。