2010年にローンチしたときのCloudflareは、Webサイトのスピードアップとハッカーからの保護がその仕事のすべてだった。そして今日(米国時間4/12)は、Spectrumと名付けたサービスのローンチにより、インターネットのWeb以外の部分も保護し、場合によってはスピードアップもできることになった。
Cloudflareの通常のサービスは、WebアプリケーションやAPIs、Webサイトなどが相手だが、これらはいずれもWebの通常のプロトコルを用いる。しかしSpectrumは、インターネットの上を往来するそのほかのトラフィックを扱う。同社の言い方では、SpectrumはCloudflareを65533のポートに拡張する、となる。
Cloudflareの既存のサービスはほとんどがセルフサービス製品だが、Spectrumは違う。しかもパフォーマンスのアップはあったとしても偶然的で、セキュリティがメインだ。そして主に確実なセキュリティを求める大企業が対象であり、同社のさまざまなサービスを安全な接続の上で提供するためのプロダクトだ。
Cloudflareの協同ファウンダーでCEOのMatthew Princeによると、同社がWebサイトの保護からスタートしたのは、当初、小さな企業が主な顧客だったからだ。そのころの彼らは、自分たちのWebサイトを立ち上げることにもっぱら関心があった。しかしその後同社の顧客ベースが大きくなるにつれて、小さなWebサイトだけでなく、高度なWebアプリケーションやモバイルアプリがメインになってきた。今のCloudflareは、大手の金融機関など大企業も相手にしている。そして彼らは、Webサイトを保護するだけではないサービスを、求めるようになっている。
“Webで生まれた企業にとっては、われわれは大いに役に立つけど、大きな金融機関などではWeb以外の用途でネットワークを使うことが山ほどある”、とPrinceは述べる。
Spectrumを使ってこれらの企業は、社内のメールサーバーやブッキングエンジン、IoTデバイス、そしてときにはゲームサーバーさえも、Cloudflareのネットワークの背後に置いてDDoSなどのセキュリティリスクから護る。Princeの予想では、このサービスのアーリーアダプターで多いのはゲーム企業だろう、という。彼らは頻繁に、DDoS攻撃にやられているからだ。
“MiraiボットネットによるDDoS攻撃の最初の被害者で、頻繁に大規模な攻撃を受けている企業の中にHypixelもいる”、MinecraftサーバーのスペシャリストHypixelのCTO Bruce Blairはこう述べる。“Spectrumの前には、不安定なサービスやレイテンシーを増やすテクニックに依存せざるをえなかったし、それによってユーザー体験を劣化させていた。今では、レイテンシーを増やさずに継続的に保護できるから、オンラインゲームのようなレイテンシーとアップタイムに敏感なサービスにとってSpectrumは最良のオプションだ”。
Princeによると、これらのユーザー企業は、トラフィックの暗号化を求めるところも多く、それはレガシーのプロトコルでは直接サポートされていない機能だ。
ユーザーのトラフィックはCloudflareのネットワークを経由するから、スピードも速くなる。ただしそれは、いつでも必ずではないが、しかし逆に、パフォーマンスのペナルティが生ずることもない。トラフィックがSpectrumを通るため、コンテンツをエッジでキャッシュしてサイトのスピードを上げるという、Cloudflareの通常のマジックは効かない。しかしここでのセールスポイントは、スピードではなくセキュリティなのだ。
Spectrumは、会員登録すればすぐ使えるようになる。まだ料金体系は発表されていないが、Princeによると料金はこのサービスを経由するトラフィックの量によるだろう、という。