ウェブサイト・インフラストラクチャーでありセキュリティー・サービスプロバイダーのCloudflareは、掲示板8chanへのサービス提供を停止すると、マシュー・プリンス(Matthew Prince)CEOはブログ記事で発表した。彼はこのサイトを「ヘイトの汚水溜め」と表現した。サービスは米国太平洋時間深夜(8月6日午前0時)に停止される。
「根拠は単純なことです。彼らは自身を無法者と認めており、その無法ぶりが多くの悲惨な死を招いたからです」とプリンスは書いている。「8chanが、差別主義者コミュニティーの抑制を拒否したことが法律の文面には違反していなかったとしても、その精神に反することを喜びはしゃぐ環境を作り出しました」
この決断は、先週末のエルパソでの20人が殺害された銃乱射事件の犯人が、犯行直線に、人種差別的な移民に反対する長い“声明文”を8chanに投稿したことを受けて下された。連邦当局は、この乱射事件を国内テロとして扱い、米司法省も、これを連邦ヘイト犯罪および銃の不法所持として訴訟を起こすことを検討している。どちらの犯罪でも、犯人には死刑が宣告される可能性がある。
8chanはまた、ニュージーランドのクライストチャーチで発生した2件のモスク襲撃事件の犯人と、4月のカリフォルニア州ポーウェイのユダヤ教礼拝所襲撃事件の容疑者も使用していた。
「エルパソの犯人は、明らかにクライストチャーチの事件を参考にしています。そして、8chanで展開されていた、前回の大量殺戮を賛美する常軌を逸した議論に刺激を受けたようです」とプリンスは書いている。「別の惨事では、カリフォルニア州ポーウェイのユダヤ教礼拝所乱射事件の容疑者が、憎悪に満ちた“公開状”を8chanに投稿していました。8chanは、何度もそこがヘイトの肥溜めであることを自ら証明しているのです」
Cloudflareが8chanへのサービス停止を発表する前に、プリンスはガーディアンとニューヨーク・タイムズの記者に話をしている。ガーディアンには「8chanを私たちのネットワークから追放したい」と語っていたが、(後のニューヨーク・タイムズのインタビューで)サービスを停止すると警察がそのサイトの情報にアクセスできなくなるため、躊躇する様子も見せていた。
Here’s my story on 8chan’s links to El Paso, Poway and Christchurch, including an interview with @Cloudflare CEO @eastdakota about why he considers keeping the site in Cloudflare’s network a “moral obligation” https://t.co/3a4QMDupXP
— Julia Carrie Wong (@juliacarriew) August 4, 2019
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Julia Carrie Wong
8chanと、エルパソ、ポーウェイ、クリストチャーチとのつながりを書いた私の記事。Cloudflareのネットワーク上のサイトに“道義的責任”を求める理由に関するCloudflareのCEOのインタビューも。CloudflareのCEOマシュー・プリンスは、あの決断は言論の自由や商売のためではなく、Cloudflareのネットワーク上にある8chanを警察が監視できるようにするためだと話していた。
I talked to the founder and former admin of 8chan this morning. He told me he wants the site to be shut down, after being involved in 3 mass shootings this year. https://t.co/tewgBEqYeF
— Kevin Roose (@kevinroose) August 4, 2019
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Kevin Roose
今朝、8chanの創設者で前管理人に会った。今年、3つの乱射事件に関わったことから、彼はサイトを閉鎖したいと言っていた。更新:CloudflareのCEOに聞くと、8chanのDDOSプロテクション・サービスの継続利用(実施的にサイトが継続される)をどうするかで迷っていた。
(8chanの創設者フレデリック・ブレナン(Fredrick Brennan)は、そこを4chanに代わる自由に発言できる掲示板にしたいと思っていた。しかし今は現オーナーとは距離を置き、閉鎖したいとニューヨーク・タイムズに話している)
このブログ記事でプリンスは、サービスを停止するというCloudflareの最終決断について説明している。1900万件以上のインターネット上のサイトがCloudflareのサービスを利用しているため、同社は「軽々しく判断できない」と書いている。
「私たちは、忌むべきコンテンツをしぶしぶ許容してきましたが、悲惨な事件を直接誘発したこと、そして故意に違法行為を行っていることを示すために、プラットフォームに線引きをしたのです。8chanは、その線を超えました」と彼は書いている。「なので、それはもう私たちのサービスを使うことが許されません」
Cloudflareが、人種差別や暴力を拡散する恐れのあったサイトへのサービスを停止したのは、これが初めてではない。Cloudflareは、白人至上主義者のサイトDaily Stormerへのサービスを2017年8月に停止している。しかし、このサイトはCloudflareのライバル企業に乗り換えて復活した。「今日、Daily Stormerはいまだ健在で、いまだ最悪です。彼らは、以前よりも読者が増えたと自慢していました。彼らはもはやCloudflareの厄介者ではありませんが、インターネットの厄介者であり続けています」とプリンスは述べている。
プリンスは、8chanの場合も、同じように振る舞うのだろうと見ている。Daily Stormerへのサービスを停止して以来、Cloudflareは警察や市民社会団体との協力を続けている。その結果、同社は「私たちのネットワーク上にあるヘイトサイトと思しきものを協力して監視し、暴力に発展しそうな内容が含まれていれば、警察に通報しています。今後も、悲惨な暴力事件を予防するために、法的手続きに則って、できる限り情報を提供してゆきます」
しかしプリンスは、こうも書いている。同社は「今後も内容の裁定者の役割を果そうとは、決して思いません。それをひんぱんに行う予定もありません」。そしてそれは、「アメリカ合衆国憲法の言論と宗教の自由の考え方に基づくもの」ではないとも付け加えている。Cloudflareは民間企業だからだ(そしてその顧客のほとんども民間であり、収益の半分以上はアメリカ国外からのものだ)。
その代わりにCloudflareは、「今後も、それぞれの国で受け入れられる線引きを、法的手続きに沿って、地元の議員たちと決めてゆきます。そして、彼らが時と場所に応じて設定したその境界線を遵守してゆきます」
Cloudflareの判断は、Amazonへの監視を強めることになるだろう。なぜなら、8chanの管理者ジム・ワトキンス(Jim Watkins)は、Amazon.comとAudibleでオーディオブックを販売し、Daily Beastによれば、「外の世界とつながるための彼の経済的な生命線」を築いているからだ。(更新情報:TechCrunchに向けた声明文で、Amazonの広報担当者はDaily Beastの記事についてこう述べていた。「ブログ記事の結論は間違いです。不正確な憶測に基づいて人々を煽り立てる内容です」。そして「Amazonは、この数カ月間、Books.Audioとの直接の関係は一切ありません。Amazonから独立したBooks.Audioは、著述者向けのナレーションサービスを行っています。そのため、Books.Audioではなく、著述者本人がそうした一連のタイトルをAudibleで販売しているのです」)
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(翻訳:金井哲夫)