犬の飼い主がドッグフードをオンラインで注文しようと思ったらD2Cの選択肢がたくさんあるが、キャットフードにはそうしたスタートアップの波は来ていないようだ。しかしこの状況は変わりつつあるのかもしれない。
2020年3月に筆者はCat Personという企業に関する記事を書いた(未訳記事)。フードをはじめとする猫用の製品を幅広く提供するHarry’s Labsが支援しているスタートアップだ。そして2018年に創業したキャットフードのスタートアップであるSmallsは、米国時間8月5日にシリーズAで900万ドル(約9億5000万円)を調達したことを発表した。
共同創業者のMatt Michaelson(マット・マイケルソン)CEOとCalvin Bohn(カルビン・ボーン)COOは、D2Cのドッグフードのモデルを単純に猫に適用するわけではないと語る。
ボーン氏は「これまでずっとペットケア業界の企業がまず手がけるのは犬で、その後、猫用の製品に手を広げる」という。
マイケルソン氏は、企業は猫の栄養に関するニーズを見過ごしてきたという。特に「我々が本当に成功するためには、もっと幅広い製品が必要だということがわかった。猫は頂点捕食者なので食べ物の好みがうるさい」と同氏は述べる。
そこでSmallsは、ヒューマングレードの新鮮な鶏肉や牛肉、フリーズドライの鶏肉や七面鳥、鴨肉といったバラエティに富んだフードの他、おやつ、そしてトイレ砂やおもちゃなどフード以外の製品も提供している。
マイケルソン氏とボーン氏の出発点は、フードを調理していたニューヨーク市のアパートのキッチンだった。その後、調理系の起業支援をしているThe Brooklyn Food Worksに移った。Smallsは現在、シカゴにある設備でキャットフードを生産している。
猫の飼い主がこれまで支払ってきた代金よりも若干高くなることを両氏は認めている。正確な比較は現在購入している製品のブランドや品質によるので一概にはいえないが、Smallsのウェブサイトで筆者が簡単な質問に答えてみたところ、1日、猫1匹あたり3〜4ドル(約320〜420円)ほどのサブスクリプションプランを提案された。マイケルソン氏は「リテンションは所得と相関関係にない」(つまりSmallsの顧客は裕福な飼い主とは限らない)と説明し、猫にヘルシーなフードを与えることは長い目で見ればお金の節約になると主張する。
同氏は「これを裏付ける研究はまだないが、品質の良いものを食べるのは自分への投資だと考えるのは自然なことだ」という。
ボーン氏は、猫の飼い主がSmallsのフードに乗り換えればすぐに違いに気づくと補足する。「数週間で、猫は夜によく眠り、毛並みのツヤが良くなり、トイレのにおいも改善した」とのことだ。試用したジャーナリストは同意しているようだ(BuzzFeed記事)。
シリーズAにより、Smallsのこれまでの調達金額の合計は1200万ドル(約12億7000万円)となった。シリーズAを主導したのはLeft Lane Capitalで、Founder CollectiveとCompanion Fundが参加した。Left Lane CapitalのパートナーはJason Fiedler(ジェイソン・フィードラー)氏で、これまでにドッグフードデリバリーのThe Farmer’s Dogに投資している。
フィードラー氏は発表の中で「ヘルシーなドッグフードのブランドの大成功が増えている一方で、キャットフード市場は完全に無視されてきた。Smallsはブランド、製品ラインナップ、サプライチェーン、そしてこれまで誰も手がけていない猫に特化した顧客体験を順調に構築している」と述べた。
マイケルソン氏によれば、Smallsのアクティブなサブスク利用者は現在「数千人」で、前年比の4倍に増えたという。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によりサプライチェーンの課題は生じたが、その一方で「ペットの里親が大幅に増加」し、近隣のペットショップに代わるものを探すべきだという飼い主に対する働きかけも起こっている。
マイケルソン氏は「新型コロナウイルスの影響でD2Cは大きく動いていると我々は見ているので、まさにこれを機に急速に成長するチャンスだ」と述べている。
画像クレジット:Smalls
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(翻訳:Kaori Koyama)