D2Cは複雑な製品カテゴリに向いている
ホリデーシーズンが近づくと、空気が張り詰めてくるのを感じる。どうすれば素敵なギフトを選び出すことができるだろう?ありがたいことに、バスソルトから植物、さらには有機肥料に至るまで、D2C(直接販売)に属する、多くの楽しいカテゴリーが存在している。
かつてニューヨーク市に本拠を置くVC会社が私たちに尋ねた。「消費者への直販ルートで発売される製品が非常に増えていますね。それらを追跡なさっているのは結構なことです。ところで、どのセグメントがD2Cにつながりやすいかを教えていただくことは可能でしょうか?」と。まあ言い換えれば、彼らは私たちに超能力者になれと要求しているようなものだ。
私たちは超能力者ではないが、その質問を見過ごすわけにはいかない。ブランドをD2Cに移行できる理由はたくさんある。Amazonのすべてのカテゴリをアンバンドルして、それぞれをD2Cに移行させることは可能だろう。それをただ行っているブランドは複数あるが、だからといってAmazonはすべての答を探せる場所ではない。
植物と肥料の例を見てみよう。私はこのホリデーシーズンに植物を贈りたいのだが、2つの問題がある。まずは友人の好みがわからないので、どの植物を選ぶべきか分からないのだ。そして2つ目は、適切な植物を選べたとしても、相手がそれをちゃんと育て続けられるかどうかがわからないのだ。
普通、人が植物の購入を考えるのは、素敵なシダやイチジクに心を奪われながら目覚めたときではない、むしろ朝の珈琲をすすりながら空っぽのバルコニーを眺めたときに、ちょっとした緑があるといいなと思ったときだ。人びとが買うのは植物ではない。良い眺めを買っているのだ。そして鉢植えのヤシの木は、見るひとに好ましい感情をよび起こす媒体なのだ。
しかし、もし彼が植物の世話をすることができない場合はどうなるだろう?その代わりに本当に素晴らしいローソクとかを買うべきだろうか?オンラインの植物ストアであるRootedは、必要な光の量や植物に水をやる必要がある頻度などの基準をつかって、商品を分類している。そのおかげで、私は「実質的に、ほぼすべての条件に適応できる」Tim(サンセベリア、英語ではsnake plantとも)を発見することができた。
製品の中には複雑なものがある。どの2つの植物もみな違っていて、どの2つの植物バイヤーもまた同じではない。それは複雑なのだ。苗床に足を踏み入れて、植物を自分で選び、添えられた指示を読むことはできるが、それでもそれをきちんと育てる責任はあなた側にあるのだ。
RootedやBloomscapeといった企業は、あなたが「気分」を買っていることを知っているので、彼らは購入後の不協和音を回避する手助けをしてくれる。彼らは、適切な植物を選択することから始まる顧客重視の製品体験を提供し、ユーザーを教育するための入門キットを提供する。これらはすべて、慎重にデザインされたフレンドリーな教育コンテンツを通じて提供される継続的なポジティブフィードバックループの中に含まれているのだ。
ブランドはD2Cに移行することで、購買体験をパーソナライズすることができ、顧客の喜びと使い勝手を最適化でき、正しいやり方で教育し、そして最終的に、顧客が求めていた気分を手にすることができるように導けるのだ。
このアプローチは、複雑であると考えられているあらゆるカテゴリで機能する。それが、コーヒー、ワイン、栄養補助食品、あるいは植物のいずれであっても、そうした製品は顧客に合わせて調整する必要がある複雑な体験であり、教育プロセスが非常に大切なものなのだ。それを正しく行うことができるブランドは、D2Cに移行することで、顧客に適切な体験を得てもらうことができるのだ。
普通人々は、変化に抵抗するものだが、彼らは自分たちをバージョンアップしてくれるブランドは愛してくれるのだ。未知に対する恐れと、間違った決定は、購入後の不協和音を招く。悪いブランドが不協和音を呼び込むのに対して、良いブランドはこの恐れを弱める。それがいいものになるか悪いものになるかは、入門体験、直感的なデザイン、コンテンツ、オンラインサポート、顧客レビュー、そしてアフターサービス体験よって決まる。
電力を蓄えるバッテリーのように、ブランドは感情的な状態、プラスとマイナスを蓄える。Comcast(米国のケーブルTV会社)との間で消費者が行う相互作用は、Apple Storeへの訪問とは異なる感情を引き起こす。
例えば、快適な履物を製作するには複雑なエンジニアリングが必要だ。ウォーキング、サイクリング、ランニング向けのユニークなタイプがあるが、どれがあなたに合っているかをどのように判断すればいいだろうか?今年リリースされたアプリであるNike Fitは、AIを使用して、顧客が自分の足に最適にフィットするものを見つける手助けする。
「5人のうち3人は、間違ったサイズの靴を履いている可能性が高いのです」と同社は声明で述べている。「長さと幅は、靴を快適にフィットさせるために十分なデータを提供していません。私たちが知っているようなサイズ決めは、複雑な問題を大幅に単純化しているのです」。AIは、右足が左足よりも大きいときにはそれを告げ、最高のスニーカーを推奨してくれる。なんて気持ちが良いんだ!NikeがD2Cチャンネルに倍賭けを行うことにしたのも不思議ではない。
最終的に結果を出せているのは、顧客の問題を認識して解決しているブランドである。 eコマースとD2Cは、まさにそれを行うための媒体なのだ。優れたブランドは、複雑な製品にシンプルさをもたらし、魔法のようになじみのあるものにしてくれる、優れた体験デザインを提供するのだ。
【編集部注】著者のAshwin Ramasamy(アシュウィン・ラマサミー)はPipeCandyの共同創業者である。PipeCandyは、eコマースおよびD2C企業に関する洞察と予測を、アルゴリズムによって生成して提供している。彼の会社は、投資家、銀行、ハイテク企業、政府などが、世界のeコマースの状況を理解することを助けている。@Ashwinizer
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(翻訳:sako)