IT業界史上圧倒的最大(*)の契約によって、Dellは今日、パートナーのMSD PartnersおよびSilver Lakeと共にEMCの買収に合意した。買収金額は670億ドル、1株当たり33.15ドルだ。
これは先週噂されていた1株当たり27ドルを大きく上回り、去る5月にAvagoがBroadcomに払った370億よりもはるかに大規模だ。
この契約でさらに興味深いのは、Dellが評価額250億ドル前後と、サイズがEMCのほぼ半分と小さいことだ。
EMCで最重要な部分は何といってもVMWareで、今回の契約にも含まれ今後も個別の上場企業として継続するが、EMCは非公開企業としてDellの一部となり、同社の公開企業としての長い歴史に幕を下ろす。
合併によってDellとEMCは、世界最大の民間統合IT企業になる、とEMCの発行した声明文に書かれている。
予想された通り、Dellが新会社を率い、長年務めたEMC CEOのJoe Tucciは退任する。Tucciは何度か引退を延期しており、それはふさわしい後任を見つけられなかったためだった。Michael Dellが合併後の組織を経営する。
この種の合併につきものの問題は、確立したカルチャーを持つ2つの巨大企業が、いったいどうやって一つになるのかである ― そしそれはまだわからない。
コーネル大学ダイソン応用経済経営校のAija Leiponen准教授は、両社が問題を抱えている可能性を指摘する。
「多くの合併は実際に企業価値を下げ、自身を再生し復活することに問題のあった2社が合併して成功することは稀だ。よってこの合併は極めてリスキーだ。EMCとDellはコンピューター業界で相補的な分野にいるので、もしもすべてがうまくいけば両社が別々でいるより価値は高まるかもしれない。しかしそれは、大きな「もしも」である」と彼女は言った。
Dellは、近年コモディティー化したサーバービジネスから撤退し、プライベートクラウドコンピューティングとストレージによって企業ユーザーに深く侵入し、IBM、HPをはじめとする伝統的メーカーやPure Storage等の新参メーカーと競合することを目録んでいる。
「Dellは、クラウドインフラストラクチャーで最後に残る一人になりたがっているようだ」と、Constellation Researchのファウダー、R Ray WangはTechCrunchに話した。
これがDellにとって巨大な賭けであるという事実は避けようもなく、契約実現のために新たな財政パートナーを見つけざるを得なかったが、実際この分野で競争できる規模を得るためには、それが唯一の方法だった。
EMCにとって、これはTucciが15年以上続けたリーダーの立場を去る最高の花道であり、株主にも期待しうる最高の価値を残した。CNBCはTucciが、「契約には、同社が他の買い手を探すことが許され、より有利な契約を見つけた場合にはEMCの違約金を安くする、”Go-Shop”条項がある」と語ったと報じているが、誰かがこの種の金額をEMCに出す可能性は極めて小さい。
契約は2016年中頃に締結される予定であり、当然規制当局による承認の対象となる。また、契約完了後にDellがEMCの一部、特にVMwareを売って支払いの足しにするかどうか、今後注目したい。
この契約の噂は先週浮上し始め、本誌で報じるうちにも噂は強まっていたことから、何かがある可能性は高かった。そして、実際そうなった。
【原注*】 Aol(TechCrunchの親会社)による2000年のTime Warner買収は1060億ドルで実際にはさらに大きかったが、あれはメディア/ITの契約だった。DellのEMC買収は、史上最大のIT買収だ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)