DNSのNS1がオープンソースのサービスNetBoxをクラウド化

ニューヨークを拠点とするスタートアップのNS1(エヌエスワン)は、企業にマネージドDNS(ドメイン・ネーム・システム)サービスを提供し、アプリケーションの配信と信頼性の向上を行う事業がその始まりだった。そのNS1が、米国時間8月24日、プレビュー発表された新サービス「NetBox Cloud」により、DNS以外の新たな領域にサービスを拡大する。

企業のネットワーク管理者にとって、すべてのネットワークインフラがどこにあり、どのように接続されているかを理解することは、しばしば困難な仕事となる。これは、インフラストラクチャー・リソース・マネジメント(IRM)と呼ばれる新しい種類のエンタープライズテクノロジーの仕事であり、NS1はこれに飛び込もうとしているのだ。TechCrunchは、2021年7月のEC-1シリーズで、NS1を広範囲に渡って紹介している。同社は、インターネット上のいくつかの大規模サイトに対して、DNSをサービスとして提供している。DNSとは、IPアドレスとドメイン名を結びつけるもので、NS1はアプリケーションからのトラフィック配信をインテリジェントに最適化するための技術を持っている。

新しいNetBox Cloudサービスでは、NS1がNetBoxのマネージドサービスを提供することになる。このNetBoxは、開発者のJeremy Stretch(ジェレミー・ストレッチ)氏がクラウドプロバイダーのDigitalOcean(デジタルオーシャン)に在籍していたときに開発した、人気のあるオープンソースのIRMツールだ。ストレッチ氏は、2021年4月にNS1に特別エンジニアとして入社し、それに伴って現在はNS1がそのオープンソースプロジェクトをサポートしている。

ストレッチ氏は、DigitalOcean在職中に、IPアドレス管理をMicrosoft Excel(マイクロソフトエクセル)のスプレッドシートで行っていた時期があったと語る。スプレッドシートを使ってIPアドレスを追跡するやりかたは規模の増大に対応できないので、ストレッチ氏はその問題を解決するために2015年にNetBoxの初期バージョンをコーディングした。ここ数年の間、NetBoxは機能を拡充してきたが、今回NS1のNetBox Cloudサービスでも使えるようになった。

ストレッチ氏は、Netboxの役割は主にネットワークインフラのモデリングであって、ストレッチ氏がネットワークインフラの「正しい情報の基盤」と呼ぶものを提供するアプローチだと説明した。基本的な考え方は、まず組織がネットワークの望ましい状態をモデル化し、そこにモニタリングを導入して、現在の運用状態が望ましい状態と同じであることを検証できるようにすることだ。

「つまり『正しい情報の基盤』というアイデアは、ネットワーク上で構成されているはずのものが、実際に確認され文書化された記録として残されるようにするということです」とストレッチ氏はいう。

NetBoxは、オープンソースのツールとして長年にわたり人気を博してきたが、導入に商用サポートが必要な企業や、マネージドサービスを求める企業にとっては、特に利用しやすいものではなかった。今回の新サービスの目的は、あらゆる規模の組織がNetBoxを利用してネットワークをより良く管理できるようにすることだ。

NS1の共同創業者でCEOのKris Beevers(クリス・ ビーバーズ)氏は、TechCrunchに対し、ストレッチ氏はNetBoxのオープンソースコミュニティを構築するためのしっかりとした仕事をしてきたが、NetBoxの商用サービスは用意されてこなかったと語った。ビーバーズ氏は、NetBoxがオープンソースとして広く採用されている一方で、商用サポートやマネージドサービスを求める企業も多いと考えている。

ビーバーズ氏がExtra Crunch EC-1シリーズで何度も繰り返していた重要なテーマは、NS1自身がビジネスとして非常に実験的であるということであり、それはNetBoxにも同じことがいえるということだ。NetBox Cloudの最初のベータ版の目的は、この技術を採用しようとしている顧客を正確に把握し、商用ユーザーが直面する課題を知ることだ。基本的には、NS1はNetBox Cloudを積極的に改良して、企業が気にすることに対応していくとビーバーズ氏は語る。

そして「NS1の観点からすると、これは非常に魅力的なオープンソース製品とコミュニティなのです。導入の障壁をできる限り低くしたいと考えています」とビーバーズ氏は続ける。

NS1は2013年に創業され、これまでに2020年7月の4000万ドル(43億9000万円)のシリーズDを含む、計1億1840万ドル(約130億円)の資金を調達している。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Sean Michael Kerner、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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