DockerがシリーズCで$40Mを調達、実際に使うのは来年再来年という絶好調の余裕

今ホットなDockerは、どれぐらいホットなのか? あまりにもホットなので、VCたちは同社が今使う予定のない資金までも、あげちゃうのだ。今日(米国時間9/16)同社が発表した4000万ドルの資金調達も、CEOのBen Golubによると、その金に手を付けるのは早くて来年の終わりごろだそうだ。

というか、細身で経営効率の高い同社は、今年の初めに獲得した1500万ドルがまだ十分に残っているのだが、でも、くれるというものは断らない主義なのだ。Golubによると、今回の投資によって市場は、同社の安定性と今後の長寿を理解したはずだ、という。

“これを使うのは来年遅くか、または再来年の初めだ。でも手元にこれだけあれば、今年中に思い切ってスケールできるし、市場には、あせって会社を売るつもりはない、という信号を伝えることができる”、と彼は説明する。資金の使い方にも、長期的な視点で臨む、ということだ。

彼曰く、“本物の起業家なら誰でも、最後まで自分でやるつもりで会社を作る。うちは、コミュニティからも投資家からも社員からもしっかりした支持と支援があるから、完全に自力で会社を育てることができる。投資家たちも早めの出口を望んでいない。彼らも、会社の中身をしっかり作っていくことに関心がある”。

同社が資金の賢い使い方をできる理由の一つは、経営がリーン(lean, 痩身, 無駄がなく引き締まっている)であることだ。営業やマーケティングはパートナーたちがやってくれるし、しかも彼らのやることを完全に信頼できる。開発の主力もコミュニティにあり、今やコントリビュータの数が600名に達している。さらに同社のアプリケーションストアにはDockerをラップするアプリケーションが35000本あり、それらの豊富なツールがコアプロダクトを一層充実させている。

こういうコミュニティ依存のやり方ではコントロールが行き届かないことをGolubも認めるが、それでも短所よりは長所の方がずっと大きい。結果について議論するのは、まだ早すぎる。“ある意味でうちは、パートナー営業とコミュニティ開発というモデルの正しい形とその成功事例を作り、そのやり方のリーダーにならなければならない。オープンソースの世界では何もかも自分でコントロールすることはありえないが、でもコミュニティの多様性と圧倒的なパワーが持つメリットは、完全なコントロールができないという小さなデメリットを大きく上回っている”、と彼は説明する。

Docker本体に関しては同社が全コードの80%を作り、筆頭メンテナの役を担っているが、コミュニティがそれに高い付加価値をつけ、また同社の中核的なデベロッパに対して現用チェックを提供している。多用な利用現場からのチェックだから、同社のデベロッパたちがひとりよがりになることが、防がれているのだ。

Golumによると、会社の方向性に対してコミュニティから異議が出たときは、間違っているのはだいたい会社の方だ、という。彼によると、コミュニティは企業内ではやれないようなエッジケース(未実証最先端ケース)にも取り組める。同社の技術者は最小限の数しか確保していないから、社内ではできないほどの大きなスケールでのテストも、コミュニティならできる。

今回のシリーズCのラウンドはSequoia Capitalがリードし、これにBenchmark Capital、Greylock Partners、Insight Ventures、Trinity Ventures、Yahoo!のファウンダJerry Yangらが参加した。Dockerの累積調達額は6500万ドルに達する。Dockerの前身であるdotCloudは、8月にcloudControlに売った

Dockerが作っているのは、現代的なアプリケーションのためのデリバリコンテナだ。Golubが指摘したように、5年前までは、一枚岩的で一台のサーバの上で動くアプリケーションが長年支配していた。しかし今では、それが完全に変わっている。アプリケーションは複数の部位で構成され、それらが多くのサーバに分散し、サーバの所在も頻繁に変化する。Dockerのコンテナは、そういうアプリケーションの各部位を“ドックに収容する”という意味であり、デベロッパたちがそのような分散アプリケーションを作って展開するのに適したツールだ。

Golubによると、それはデベロッパがデベロッパのために作ったプロダクトであり、そのモデルがこれまでのところ効果を発揮している。ユーザとデベロッパがそれぞれ別集団でないこのやり方は、Dockerの現状を見ても、確かに有効なようだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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