Dockerが今日(米国時間10/21)、Dockerコンテナのデプロイと管理を提供するクラウドサービスTutumを買収したことを発表した。サービスの対象となるユーザシステムは、クラウドでもオンプレミスでもどちらでもよい。
価額など買収の条件は公表されていない。
企業としてのDockerはこれまで、コンテナの構築、配備、そして稼働に重点を置いてきた。コンテナと呼ばれる離散的なプログラミング/ビルディングブロックは、マイクロサービスと呼ばれることもある。今日の買収によって同社は、これまでプログラマ任せだった、コンテナの継続的な稼働管理の部分も、サービスとして提供できることになった。
たとえばこれまで面倒だったのは、コンテナのデプロイと管理を行うカスタムスクリプトを書くことだ。多くのプログラマが、熟練した経験豊富なコンテナ技術者ではないから、そのスクリプトを書くのに数時間とか数日かかることもある。それによって、本来コンテナから得られるはずのスピードやアジリティが消し飛んでしまうこともある。…Dockerのプロダクト担当SVP Scott Johnstonはこう説明する。
Tutumを買収したことによってDockerは、必要な要素がすべて揃ったサービスのパッケージを顧客に提供できる。成熟したクラウドサービスには、不可欠の条件だ。
“エンタプライズITの市場は、導入したその日から使えるプロダクトを求めている。だから彼らはアプリケーションの構築には力を入れるが、カスタムスクリプトのメンテナンス、アプリのバージョンが変わるたびの書き換え、といった作業は苦手だ。Tutumが、それらの部分を自動化する”、と彼は述べる。
Tutumはクラウドサービスで、最初からDockerのためのツールとして作られている。そのサービスによってコンテナ内部の点検ができ、その作成と始動と終了、デプロイが必要に応じてできる。また管理下にあるすべてのコンテナを、ダッシュボードから見張ることができる。
Tutumは2013年の10月に創業されたが、当時はまだDockerは単にLinuxプログラミングの技法の一つであり、プロダクトではなかった。しかし二人のファウンダBorja BurgosとFernando Mayoは、Dockerが無名の存在だったころから、Dockerによるコンテナ技術の将来性を見抜いていた。
BurgosによるとDockerは、10年に一つというタイプのでっかいイノベーションであり、起業のテーマとしてこれに飛びつくことは一種の賭だった。結果は、大穴と出た。
“うちとDockerは、歩を揃えて成長してきた。互いにコラボレーションすることを学び、ヴィジョンを共有してきた。今回の買収は、当然のような次の一歩だ。二つのツールは、相性がとても良い”、とBurgosは語る。
TutumはすでにDockerのコミュニティでは名を知られていて、24000名のユーザ数を誇り、社員も11名いるが、製品イメージの向上に欠かせない大企業ユーザがいまいちだった。しかしDockerの一部になったことによって、その問題も解消するだろう。
JohnstonによるとDockerはつねに、自分たちで作るか・買うか・パートナーするかを検討するが、Tutumの場合は、今のDockerに欠けている部分にぴったりと合う。しかも十分な顧客ベースがすでにあり、スケール能力も実証されており、企業文化も似ている。買収のターゲットとしては、理想的だった。
Tutumの11名のチームは今回の買収により、ニューヨークとマドリードからサンフランシスコに移り、Dockerのチームに加わる。
Tutumはこれまで、272万ドルの資金を調達している。最近では2014年の8月に265万ドルのシードラウンドを終えている。Dockerの調達総額は1億6200万ドルだ。