昨年、DropboxがAWSから離れ、独自のデータセンターを建設する計画を明らかにしたとき、Dropboxのネットワーク自体も大幅に改革されるはずだ推測された。今日(米国時間6/19)、Dropboxは世界のネットワークの大きなアップデート計画を発表した。これによりユーザーは同期速度が大きくアップし、Dropboxにとってはコストが節減されるという。
この大胆なプランにはいくつかの側面がある。一つはGoogle、Amazon、Facebookのような世界的インターネット企業のものに似たカスタムメイドのデータセンターの建設だ。しかしDropboxのようなサービスの場合、ハードのインフラの整備だけでは十分ではない。ストレージ処理をスピードアップするためにはできるだけユーザーに近い場所でサービスを提供できるようにする必要がある。これはコンピューティングをネットワークのエッジに近づける手法と呼ばれている。
Dropboxによれば同社はすでに3大陸、7カ国、 14都市でネットワーク拡張の努力を開始している。 Dropboxのエンジニア、Raghav Bhargavaは同社のブログで、「〔迅速なサービスを実現するために〕われわれは地域的、世界的なISPと契約して数百ギガビットものインターネット接続を追加してきた。またISPを通さず直接データをやり取りするピア・パートナーも数百に上る」と書いている。
同社はこの努力を次のレベルに進めることとし、オープンソース・ソフトを全社的に採用してカスタム・プロキシを開発した。 「エッジ・プロキシはサーバーのスタックでユーザー側から見た最初のゲートウェイとなり、TLS/TCPのハンドシェイクを実行する。これはPoP(point of presence)に導入され、ユーザーが世界中どこにいてもDropboxへのアクセスのパフォーマンスを向上させる」とBhargavaは書いている。
このタイプのネットワーク・アーキテクチャは通常AkamaiのようなCDN(Content Delivery Network)によって提供されることが多かった。しかしDropboxの規模でサービスが提供されるようになると、独自の必要に対応するカスタム・ソリューションを開発する必要があると認められた。
今日からDropboxはアメリカのデータセンターでカスタム・プロキシの運用を開始するが、今後世界のデータセンターに導入していく。まずシドニー、マイアミ、続いて第3四半期にはパリ、第4四半期にはマドリッドとミラノが予定されており、今年の末までに4カ国25カ所の施設すべてに導入される。
このネットワークのアップグレード計画には2つの理由がある。一つはユーザー体験の改良で、ユーザーが世界のどこにいようと処理スピードをアップさせる。Dropboxによればユーザーの75%はアメリカ国外からアクセスしているという。したがってコンピューティングをユーザーが存在する場所に可能な限り近付けるエッジ・プロキシの手法は、Netflixも採用しているが、きわめて重要となる。ネットワークのアップグレードが完了し、PoP数も大幅に増加すれば、多数のユーザーを抱える地域でのパフォーマンスの向上が期待できる。
第2の理由は、独自のハード、ソフトを構築することにより大幅なコストの削減が可能になる点だ。同社によればこのアプローチはネットワーク・コストを半減させるという。そうであればDropboxの経営に大きな影響を与える節約となるだろう。
Dropboxには上場の噂が絶えない。ネットワークのインハウス化の進展によるサービスの向上とコストの削減は投資家に対するアピールとして有効だろう。.もちろんユーザーにとってのメリットも大きいはずだ。
画像: download.net.pl/Flickr UNDER A CC BY-ND 2.0 LICENSE
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)