Dropboxがセキュアなドキュメント共有スタートアップDocSendを179.2億円で買収

米国時間3月9日、Dropbox(ドロップボックス)は、DocSend(ドックセンド)を1億6500万ドル(約179億2000万円)で買収する予定であることを発表した。DocSendは、添付ファイルの代わりにセキュアなリンクを送信することで、顧客のドキュメントの共有と追跡を支援する企業だ。

DropBoxの創業者でCEOのDrew Houston(ドリュー・ヒューストン)氏は私に対して「リモートワークのためのより広範なツールを提供できるようにするためにDocSendを買収することを発表します。DocSendがお客さまに提供するのは、強力なエンゲージメント(ドキュメントの開封状況や閲覧状況)分析機能に支えられた、ビジネス上重要なドキュメントのセキュアな管理と共有機能です」と語った。

2019年にDropboxが買収したHelloSign(ハローサイン)の電子署名機能と組み合わせると、今回の買収によって、それまで欠けていたエンドツーエンドの文書共有ワークフローをDocSendが提供できるようになる。「Dropbox、DocSend、HelloSignの3社は、私たちの大勢のお客さまたちが、重要な文書のワークフロー全体を管理し、そのすべての側面をよりきめ細やかにコントロールできるようにできる、セルフサービス製品をフルセットで提供できるようになります」と、ヒューストン氏は説明する。

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ヒューストン氏とDocSendの共同創業者でCEOのRuss Heddleston(ラス・へドルストン)氏は、お互いに何年も前からの知り合いであり、しっかりとした関係を築いている。実際へドルストン氏は、2010年の夏のインターンとしてDropboxで働いていた。2013年に起業する前に、彼はヒューストン氏の側で会社のアイデアを実行してみせ、それに対してヒューストン氏がお墨つきを与えて、2つの企業はしばらくの間パートナーとなっていた。

ヘドルストン氏は「私たちは外部送信の道を追求して来ましたが、それがある種進化して、異なるワークフローへと道が開かれることになりました。また、それに集中したことで、ユーザーにとても愛される差別化された製品を作ることができたのは、本当に興味深いことです」と語る。

こうしたワークフローには例えばクリエイティブ、セールス、クライアントサービス、あるいはスタートアップ企業が、DocSendを使用して提案書やピッチ資料を送信して、そのエンゲージメント(ドキュメントの開封状況や閲覧状況)を追跡することなどが含まれる。実際、同社の初期のユースケースの中には、スタートアップ企業のピッチ資料の、VCファーム内でのエンゲージメント追跡支援もあった。

Crunchbaseによれば、同社はこれまでに1530万ドル(約16億6000万円)という、ほどほどの資金を調達しただけだ。だがヘドルストン氏はなるべく自力で運営できる会社を作りたいと考えていたので、VCの資金をさらに増やすことの優先度は高くなかったし、必要でもなかったと述べている。「常により多くの資金を私たちに提供したがるVCがいました。我が社の従業員に言っていたのは、集めた資金や人数に重きを置いたりはしないということです。大切なのは、すばらしい会社を作ることなのです」と彼はいう。

そうした、ヘドルストン氏の開発者としての姿勢も、ヒューストン氏の興味をDocuSendに惹きつけたものの1つだった。ヒューストン氏は「私たちは、製品の成長と資本効率のモデルを大いに信じて、そして口コミで広がる本当に直感的な製品を開発しています。そしてそのことが、私たちをDocSendに惹きつけたのです」という。DocSendには1万7000の顧客がいるが、ヒューストン氏は、同社はこの買収によってDropboxの一部として、はるかに大きな顧客ベースの前に立つ機会が得られると述べている。

Boxが似たような安全なドキュメント共有機能を提供し、ユーザーが添付ファイルを使用する代わりにリンクを共有できるようにしていることは注目に値する。Boxは最近、電子署名のスタートアップであるSignRequest(サインリクエスト)を5500万ドル(59億7000万円)で買収し、今回DropboxがHelloSignやDocSendで実現したような、より複雑なドキュメントワークフローの構築を目指している。この分野ではPandaDoc(パンダドック)も、また別のライバルだ。

DropboxとSendDocはどちらもTechCrunch Disrupt Battlefieldに参加したことがある。ヒューストン氏は2008年に同イベントの元の名前であるTechCrunch50でDropboxをデビューさせた。一方、DocSendは2014年にニューヨークで開催されたTechCrunch Disruptに参加している

買収によって、DocSendの約50人の従業員がDropboxに入社することになるが、これは標準的な規制当局の監督の下ですぐに実行されるはずだ。

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カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:Thomas Trutschel / Getty Images 

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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