企業の事業開発支援やIT人材育成など複数の事業を手がけるSun Asteriskは3月3日、事業会社やVCを引受先とする第三者割当増資と金融機関からのデットファイナンスにより総額で10億円を調達したことを明らかにした。
今回は昨年12月に実施したラウンドの追加調達という位置付け。前回の農林中央金庫に続いて複数社が新規投資家として参画し、本ラウンドの累計調達額は20億円となった。Sun Asterisk代表取締役CEOの小林泰平氏によると各投資家とは今後積極的に事業連携を進めていくという。
- ソニーネットワークコミュニケーションズ
- Sony Innovation Fund by IGV(Innovation Growth Ventures)
- 加賀電子
- リバネスキャピタル
- 15th Rock Ventures
Sun Asteriskは現在4ヶ国6都市にて1500名以上のエンジニアやクリエイターが在籍するデジタル・クリエイティブスタジオだ。
これまでスタートアップから大企業まで300社以上の事業創出やプロダクト開発をサポート。スタートアップ支援の文脈では昨年6月よりスタートアップスタジオ事業を本格的にスタートし、エンジニアリソースや蓄積してきたナレッジを武器にスタートアップの成長に伴走している。昨年11月に6000万円の資金調達を実施したテナンタなどが支援先だ。
また事業開発の担い手となるテクノロジー人材の育成にもかなり力を入れてきた。ベトナムのトップ大学と産学連携したIT選抜コースの運営や、日本国内でのエンジニアスクールなどを通じて常時2000名以上の人材育成を行なっているという。
Sun Asteriskの事業内容や現状については前回の記事で詳しく取り上げているので、そちらも合わせて参照いただきたい。
投資家と連携し「イノベーションのタネ」の社会実装へ
冒頭でも触れた通り、今回のラウンドではすでに発表されていた農林中央金庫に加えて5社が新たに投資家として参画した。
各社は分野こそ異なれど「イノベーションに繋がるタネ」を保有しているという観点では共通する部分も多い。彼らが掘り起こしてきたものにSun Asteriskの持つテクノロジー人材や事業開発ナレッジを掛け合わせることで、社会実装や事業育成に繋げていきたいという狙いがあるようだ。
ソニー関連ではソニーネットワークコミュニケーションズおよびSony Innovation Fundから資金を調達しているが、これは「ソニーグループと組んで大きなチャレンジをする」ことを見据えたもの。ソニーが持つさまざまな要素技術をプロダクトに落とし込み、社会へ届けていくことを大きな目的とする。
リバネスキャピタルと15th Rock Venturesの2社は共に先端領域の研究やアイデアを社会実装する役割を担っている企業だ。リバネスはバイオを始めディープテックやリアルテックの研究開発に強く、15th Rock VenturesはHuman Augmentation(人間拡張)領域のスタートアップを支援している。
まさに両社ともイノベーションに繋がるタネを多数持っているため、その事業化をSun Asteriskがテックパートナーとして一緒に進めていく形だ。
電子部品などエレクトロニクス分野に強い加賀電子とは、IoT分野での事業拡大に向けて協業する。たとえば最近ではIoT関連の取り組みでエッジコンピューティングの話を聞く機会が増えてきたが、そのためにはエッジデバイスについての専門的な知見が欠かせない。Sun Asteriskでもこれまで複数のIoTプロジェクトに取り組んできたものの、同社は必ずしもハードウェア領域に強みを持つ企業ではない。ハードウェアの知見や技術を持つ加賀電子とタッグを組むことでIoT分野の事業を加速させる計画だ。
スタートアップスタジオでは数億円規模の予算で10数社を支援
上述した取り組みを含め、Sun Asteriskでは今後エンタープライズ企業とのデジタル技術を用いたプロジェクトに力を入れていく方針。単なる業務効率化ではなく業務プロセスの変革やデジタル企業へのアップデートに向けたビジネスモデルの創出を目指し、たとえばジョイントベンチャーの立ち上げなど、より密に連携した新たな協業モデルも視野に入れているという。
スタートアップスタジオに関しても数億円規模の予算を設け、10〜20社に対して出資と技術支援をしていく方針。教育事業ではベトナムに加えマレーシア、インドネシアへも進出済みで、産学連携モデルをグローバル規模に広げていきたいとのことだ。