以前、ヘッジファンドのDymon Asiaは同社初となるベンチャーファンドの組成を目指すと発表し、ベンチャーキャピタル業界への仲間入りを表明していた。
Dymon Asia Venturesはフィンテック企業に特化したファンドで、組成額のターゲットは5000万ドルだ。そして今日(現地時間9日)、同ファンドはタイのSiam Commercial(SCB)などから2000万ドルを行って1stクローズを完了したと発表した。SCBは傘下のDigital Venturesを通してDymon Asia Venturesに出資しているが、その金額は非公開だ。Dymon Asiaによれば、同ファンドのファイナルクローズは今後12ヶ月以内に行なわれる予定。
シンガーポールを拠点とするDymon Asia Venturesでは、ファンドの組成期間中に12〜15社に投資を行う予定だ。同ファンドはすでに5社への投資を行ったと発表している:ブロックチェーンのOtonomos、金融のCapital Match、外国為替にフォーカスする4XLabs、トレーディング・プラットフォームのSpark Systems、そしてマーケティングサービスのWeConveneだ。
TechCrunchは、Dymon AsiaのパートナーであるJinesh Patel氏とChristiaan Kaptein氏に取材を行った。その取材で彼らは、同社がベンチャーキャピタル業界に参入したのは、マーケット内での競争力を維持するため、そして、アジアに新しく誕生したチャンスを掴むためだったと説明している。彼らがフォーカスするのは主に東南アジア地域だ。GoogleとTechCrunchによる共同調査によれば、東南アジアにおけるインターネットユーザーは現在2億6000万人。そして、その数字は2020年には4億8000万人にまで拡大する。その結果、デジタルエコノミーの経済規模は2000億ドルにものぼる見込みだ。
「現状を考えれば、この地域のフィンテックが注目される可能性は非常に高いと思います。私たちがフォーカスするのは主にB2B向けにビジネスを行うフィンテック企業です。なぜなら、B2Bにはまだ手のつけられていないチャンスが転がっていると思うからです」とPatel氏は説明する。
フィンテック企業のシリーズAラウンドに参加するファンドは数多くあるが、Dymon Asiaでは同社のリソースや知識を有効活用できるいくつかのカテゴリーに投資先を絞り、それらの企業に対して出資を行っていくという。
「シリーズAからシリーズBに進むのは難しいと考えています」とPatel氏は話す。「そのための資金を集めるのももちろんですし、規制や人材などの問題もあります」。
Dymon AsiaはシードステージからシリーズBの投資案件にフォーカスしていく。投資規模については、一般的には30万ドルから300万ドルの範囲だという。今回取材したパートナーたちによれば、その後のラウンド用に「大規模のリザーブ」も用意しているそうだ。
Dymon Asiaは単に投資家としての役割だけでなく、アイデアのインキュベーションも行っていく。同社はこれまでにも投資先のSpark Systems(FXのトレーディング・プラットフォーム)に対してインキュベーションを行ってきたが、今後の投資先にも同様の支援を行っていく。
また彼らは、VCの数は過去よりも急激に増えてはいるが、東南アジアにはフィンテックのスペシャリストが少ないとも感じているようだ。
「フィンテック企業、特にこれまでVCから注目されてこなかったB2B向けのフィンテック企業に必要なアテンションを与えてあげたいと考えています」とKaptein氏は話す。ちなみに彼には以前、TechCrunchにも東南アジアのフィンテックについてまとめた記事を寄稿していただいている。
「私たちに出資するのは戦略的な視点を持った投資家が多く、このファンドもそのネットワークの拡大版であるとも言えます。私たちは、長い間このセクターで戦ってきました。そのため、私たちが古くからもつネットワークを今回組成したファンドにも利用することができます」とKaptein氏は語っている。
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