E-inkを搭載したAndroidタブレット「BOOX Max3」の実力は?

E-inkディスプレイを搭載した13.3インチAndroidタブレット

BOOX Max3は13.3インチのE-inkディスプレイを搭載したAndroid 9.0タブレットだ。開発しているのは中国広州に本社を置く文石で、日本ではFOXが正規代理店として販売している。

プロセッサーはミドルクラスの「Snapdragon 625」(8コア、2.0GHz)、メモリーは4GB、ストレージは64GB。13.3インチE-inkディスプレイの解像度は2200×1650ドットで、階調は16色グレースケールとなっている。また、4096段階で筆圧感知可能なワコム規格のスタイラスが付属しており、メモやイラストなどを描くことが可能だ。

BOOX Max3(9万8,80円、FOXの直販価格)

背面、前面ともにカメラは搭載されていない

底面にはUSB Type-C、Micro HDMI端子が用意されている

同製品は、BOOXシリーズの中で最大のディスプレイ、最速のプロセッサーを搭載した最上位モデルだが、それでもプロセッサー、メモリー、ストレージのスペックは他社フラッグシップタブレットと比べると見劣りする。E-inkディスプレイとスタイラスにそれを覆すだけの魅力・必要性を感じられるかどうかで、本製品に対する評価が変わってくるはずだ。

ディスプレイを高速設定にすれば動画も視聴可能

まず処理性能だが、決して高くないということは間違いない。たとえばベンチマークソフト「AnTuTu Benchmark」で計測した本製品の総合スコアは「96636」。記事執筆時点でAndroid最速とされている「ROG Phone 2」が「507051」なので、BOOX Max3はその19%のパフォーマンスということになる。ただ、この差は正直気にしなくていい。むしろ「ROG Phone 2」が速すぎるだけ。BOOX Max3は3Dゲームなどを除いた一般的な用途なら十分な処理能力を備えている。

「AnTuTu Benchmark」で計測した総合スコアは「96636」

さて肝心なのはディスプレイだ。BOOX Max3には第4世代のE-inkディスプレイ「Carta」が採用されており、一般的な液晶ディスプレイとは特性が異なる。そこで重要になってくるのが、画質と表示スピードのどちらを優先させるかということ。

画質を優先させればコマ落ちして見えるし、表示スピードを優先させれば前の画像が残る「ゴースト」現象が発生したり、表示が不鮮明になる。私が試行錯誤したかぎりでは、電子書籍を読むなら「通常モード」、ウェブを見るなら「高速モード」、動画を視聴するなら「Xモード」がいいと感じた。

ディスプレイのスペックでもうひとつ注意してほしいことがある。実はBOOX Max3にはライトが内蔵されていない。Carta世代のE-inkディスプレイは前世代よりコントラスト比で50%、反射率で20%向上しているので、ある程度の明るさがあれば画面をはっきりと視認できるが、暗闇で見ることはさすがに不可能。もし消灯した寝室などで寝る前に読書を楽しみたいのなら、BOOX Max3は選択肢からはずれることになる。

画面設定で、画質を優先する「通常モード」、高速描画を優先させる「高速モード」、そのほか「A2モード」「Xモード」が選べる

BOOX Max3のディスプレイは16色グレースケールだが、カラーページでも意外と綺麗に表示される。右は「12.9インチiPad Pro」(画像提供:鈴木みそ、※鈴木みそ先生の許諾を得て「ナナのリテラシー」のページを掲載している)

画面モードを「高速モード」に設定すると、余白に前のページのゴーストが残る(画像提供:鈴木みそ)

左が「通常モード」、右が「Xモード」。画質の差は歴然としている(画像提供:鈴木みそ)

電子書籍リーダー以外の売りの機能が「ノート」だが、サードパーティー製メモアプリを利用することはオススメしない。というのも本製品標準の「ノート」アプリでは、ペン先に描線がリアルタイムに追従するが、サードパーティー製メモアプリでは1秒前後遅れて描線が表示される。メモ書きには標準の「ノート」を使って、Evernote、Dropbox、OneNoteで管理するというのが現実的な使い方だ。

標準の「ノート」アプリでは、ディスプレイの「標準モード」でも描線が遅れない。おそらくディスプレイ全体をリフレッシュせずに、線を描いた場所だけ描画するような特殊な機能を利用しているのだと思われる

「ノート」アプリをEvernote、Dropbox、OneNoteと連携しておけば、サムネイルの右上のアイコンをタップするだけで、いつでもアップロード可能だ

個人的に使いづらく感じたのがホームアプリ。BOOX Max3にはホームアプリとしてオリジナルの「コンテンツブラウザー」が搭載されているが、これを起動すると必ず「書棚」が表示されてしまう。「コンテンツブラウザー」に戻った際に表示するタブを「ノート」または「アプリ」に設定できる機能がほしいところだ。

直線に「ノート」や「アプリ」のタブを開いていても、再度「コンテンツブラウザー」に戻ると「書棚」のタブが開かれてしまう

左が「コンテンツブラウザー」の「アプリ」タブ、右がサードパーティー製ホームアプリ「Microsoft Launcher」。「Microsoft Launcher」ではアイコンがつぶれて表示されてしまうので、BOOX Max3で非常に使いづらい

メモ書きと電子書籍用途に特化したAndroidタブレット

BOOX Max3をiPadなどと比べると、処理性能はそこそこで、カラー表示には対応しておらず、カメラも搭載していないと見劣りするのは確かだ。しかし、E-inkディスプレイを搭載することによって、スタンバイモードで最大4週間のバッテリー駆動時間、目の疲労の少なさなどの美点がある。

膨大なアプリがリリースされているiPadのようになんでもこなせる汎用性の高さはないが、メモ書きと電子書籍と用途を限定すれば、BOOX Max3はiPadと評価が逆転するだけの個性を持ったタブレット端末と言える。

機種を問わずデュアルディスプレイ環境を実現できる「セカンダリーモニター」は、ほかのタブレット端末にもぜひ搭載してほしい機能だ

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TechCrunch Japan

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