EUによるロシア国営メディア「ロシア・トゥデイ」と「Sputnik」への禁止令が発効

EU(欧州連合)がRussia Today(ロシア・トゥデイ、RT)とSputnik(スプートニク)に対する禁止令を正式に採択し発効した。メディア規制当局は今後、その遵守状況を監視することになる。EU各国の監視当局は、プラットフォームがロシア政府とつながりのあるメディア企業のコンテンツの配信を続けているということがわかれば、罰金を科す可能性がある。

RTおよびSputnikとそれらの子会社の配信に対する広範な制裁であり、TechCrunchが以前報じたように、従来の放送チャンネル(衛星放送など)だけでなく、オンラインプラットフォームやアプリも対象としている。

現時点では、2社に属するジャーナリスト個人は制裁の対象外だが(RTの編集長はすでに制裁の対象)、この法的文書には迂回防止条項が含まれており、両チャンネルに対する規制を回避しようとしているとみなされた場合などは、最終的に個人がターゲットになる可能性がある。

EU当局者によると、この意味するところは、インターネットプロバイダーは、RTやSputnikのコンテンツが自分たちのプラットフォームに表示されないように積極的な措置を取ることが期待されているということだ。

つまり、根本的には、単に公式チャンネルを禁止するだけでは十分ではないかもしれないということだ。他のユーザーやアカウントが制裁対象のコンテンツをアップロードした場合、ソーシャルメディアやその他のテックプラットフォームには、禁止措置回避行為を防ぐためにさらなる措置を取ることが期待されるかもしれない。

EU当局によると、ソーシャルメディアネットワークやビデオストリーミングサービスに加え、原則としてインターネットサービスプロバイダーも対象となる。

さまざまなデジタル配信チャンネルがあることから、欧州委員会関係者は、両チャンネルの地域配信を直ちにすべて終了させることが困難であることを認めており、ある程度の「漏れ」は予想されると示唆している。ただし、法的には、禁止事項の遵守はもはや当然のことだということも強調している。

EUは、RTとSputnikに対する制裁は期限付きだと述べているが、実際のところ制裁解除には条件が付されているため、少なくともロシアのウラジーミル・プーチン現大統領がクレムリンにいる間は、制裁解除を想像することは困難だ。

というのも、欧州委員会は、制裁解除には、ロシアがウクライナでの侵略をやめ、EUとその加盟国に対するプロパガンダをやめる必要があると定めているからだ。そして、多くのメディア関係者は、RTのようなチャンネルの第一の目的は、まさに反欧米のプロパガンダを制作・増幅することだと指摘する。

なぜEUはRTとSputnikを特別視しているのか。EUは、RTとSputnikを親クレムリンの道具箱の中の重要な偽情報ツールであり、プーチン大統領が西側に不安定化を引き起こす「情報戦争」を展開するために利用していると見ているからだ。

例えば、欧州委員会関係者は、RTとSputnikに与えられている巨額の国家予算(2021年には推定13億ユーロ=約1668億円)などの国家支援について言及し、また、これらのチャンネルの編集の独立性に対する疑念を指摘している。

また、欧州委員会関係者らは、この規制は慎重にバランスをとっているとしている。すなわち、対象としているのは、ロシアが国家として対外的な情報操作や干渉を行うために利用している手段であり、それらの手段の中でも最も際立っておりその責任も明らかな2つだということを強調した。

そしてその主張を裏付けるように、欧州委員会関係者らは一例として、ロシアの「偽情報とプロパガンダのエコシステム」におけるRTとSputnikの役割を分析した米国務省の報告書を引き合いに、この2つの組織は明らかにプーチン大統領のプロパガンダマシンに「不可欠であり、力を与えている」部分だと主張している。

EUの対応、すなわち両メディアの配信を対象とした制裁措置は、意見を検閲するものではない、とも主張している。

さらに、欧州委員会は、過去1年間におけるロシア国内の独立系メディアに対する大規模な弾圧を取り上げ、とりわけ政府に批判的と見られる独立系メディアやジャーナリスト個人の口を封じるために、強硬な国内法、特に「外国の代理人」に関する法律が用いられていると指摘し、プロの記者に対するロシアの脅威を容認できないとしている。

欧州委員会の確固たるメッセージはこうだ。ロシアのウクライナ侵攻によって、欧州委員会の評価は不可逆的に変わってしまった。プーチン大統領のプロパガンダ機関に対するEUの寛容はもう終わった。

EUのUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、制裁措置の正式な採択を表明した際の声明で、次のように述べた。「この戦時下においては、言葉が重要です。自由で独立した国に対するこの非道な攻撃をめぐり、大規模なプロパガンダと偽情報を目の当たりにしています。私たちは、クレムリンの擁護者たちが、プーチンの戦争を正当化する有害な嘘を流したり、私たちの連合に分裂の種をまくことを許しません」。

また、EUのJosep Borrell(ジョゼップ・ボレル)外務上級代表は、別の採択を支持する声明の中でこう付け加えた。「クレムリンによる組織的な情報操作と偽情報は、ウクライナへの攻撃における作戦ツールとして利用されています。また、EUの公序良俗と安全保障に対する重大かつ直接的な脅威でもあります。今日、私たちはプーチンの情報操作作戦に対して重要な一歩を踏み出し、EUにおけるロシア国営メディアの蛇口を閉めようとしています。私たちはすでに、Margarita Simonyan(マルガリータ・シモニャン)編集長を含むRTの経営陣に制裁を加えており、この組織がEU内で行っている活動も対象とするのは当然のことです」。

フォン・デア・ライエン委員長は現地時間2月27日、欧州連合(EU)が「欧州における(ロシアの)有害な偽情報を禁止するためのツールを開発している」と述べたことから、欧州委員会の担当者は、今後さらに規制が強化されるか聞かれたものの、特定の政策についてのコメントを避けた。

しかし、欧州委員会関係者らは、民主化行動計画やオンライン偽情報の拡散に対処するための行動規範など、EUが何年にもわたり策定してきたさまざまな施策を挙げた上で、EUは、状況認識や回復力の強化といった分野を含む、一貫した一連の政策アプローチと施策を構築しつつあり、特に外国の情報操作をターゲットとする意向だと付け加えた。

RTとSputnikに対する制裁は、こうした幅広い戦略の一環だとEU当局者らは付け加えた。

RTとSputnikに対する制裁の法的根拠は、欧州委員会によると、共通外交・安全保障政策規則(第29条)に基づく欧州理事会の全会一致による決定と、制限的措置を定めた欧州連合機能条約第215条だ。

情報への自由なアクセスはEU憲章に明記されている基本的権利だ。しかし、欧州委員会は、これらの対象措置はいかなる法的異議にも耐えられると確信していると述べている。

EUの既存のメディアに関する規則は、今回の制裁措置と並行して通常通り運用されることをEU当局者は確認した。

制裁を受ける6社は、RT-ロシア・トゥデイ・英語版、RT-ロシア・トゥデイ・UK、RT-ロシア・トゥデイ・フランス、RT-ロシア・トゥデイ・ドイツ、RT-ロシア・トゥデイ・スペイン語版、そしてSputnikだ。

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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