すべてのバッテリーは時間とともに劣化していく。電気自動車メーカーや車両運行管理会社にとって、それがいつ、どのくらい劣化するのかを知ることは重要であり、収益に関わる鍵にもなる。
しかし、バッテリーの健康状態を把握することは、大がかりで高額な検査を行わなければ意外と難しく、車両に搭載された状態では不可能な場合も少なくない。ドイツのバッテリー分析ソフトウェア企業であるTWAICE(トワイス)は、2018年の創業以来、この問題に取り組んできた。同社は米国時間5月19日、シカゴに拠点を置くEnergize Ventures(エナジャイズ・ベンチャーズ)が主導したシリーズBラウンドで、2600万ドル(約28億3000万円)を調達したことを発表した。主にモビリティやエネルギー貯蔵の分野で活躍する同社は、これで資金調達総額が4500万ドル(約49億円)に達したことになる。
TWAICEの開発や運営面について共同設立者のStephan Rohr(ステファン・ロア)氏にインタビューした際「私たちは、バッテリーシステムのライフサイクル全体を本当にカバーできるバッテリー分析プラットフォームを構築することに焦点を当ててTWAICEを起ち上げました」と語った。この会社は、実際にバッテリーが車両やエネルギー貯蔵システムに搭載されている状態で、開発や設計を行うために適したツールを提供している。Audi(アウディ)やDaimler(ダイムラー)、インドのHero Motors(ヒーロー・モーターズ)などが同社の顧客だ。
今回の資金調達により、TWAICEは欧州での事業展開を拡大し、さらに米国進出の可能性も探っていくという。また、製造会社だけでなく、物流や旅客輸送業者との連携なども含め、同社の分析プラットフォームをもとに、さらに多くのユースケースを構築したいと考えている。
同社の革新的な技術の1つに「デジタルツイン」という概念がある。これはTWAICEのクラウドプラットフォーム上で動作するバッテリーシステムのシミュレーションモデルで、バッテリーの熱特性や電気的挙動、劣化などのパラメーターを連続的に更新していくことによって、実際のバッテリーの状態がこの「デジタルな双子」に反映されるというものだ。つまり、EVバスを運行している企業は、それぞれの車両のバッテリーパックの状態を、このデジタルツインを通してモニターすることができる。
「バッテリーシステムの現在の健康状態をモニターするだけでなく、将来のシミュレーションや予測も可能になります」と、ロア氏はいう。
TWAICEはまた、バッテリーが自動車やエネルギー貯蔵システムに搭載される前の段階にもソリューションを提供している。「バッテリーの設計エンジニアは、当社のシミュレー ションを利用することで、充電戦略,放電深度,異なる電池化学の評価などのテスト作業を軽減することができます」と、ロア氏は説明する。
TWAICEのソフトウェアの主な使用例の1つは、保証追跡や安全性リスクに関するものだ。同社のバッテリー分析を利用することで、製造メーカーはバッテリーがセルやモジュールなどのどこで故障したのかを正確に把握することができ、将来の保証請求に対して過去のデータに基づく貴重なデータを得ることができる。TWAICEの営業担当責任者を務めるLennart Hinrichs(レッナールト・ヒンリクス)氏は、製造メーカーにとって保証は大きなリスクであると説明する。その理由の1つは、バッテリーが非常に複雑で、車両に搭載されてしまうと、状態を理解することが非常に難しいからだという。
しかし、バッテリーの寿命を把握することは、消費者にとっても有益だ。ドイツの試験・認証機関であるTÜV Rheinlandは、民間市場におけるEVの中古車販売に関してTWAICEと提携し、中古車市場のEVが搭載するバッテリーの標準的な評価プロセスの確立を目指している。
EVの車載バッテリーが長期的な使用を経て本来の用途に適さない状態にまで劣化した後、自動車メーカーはTWAICEのソフトウェアを使って、バッテリーシステムの健康状態と残りの寿命を評価し、例えばエネルギー貯蔵などのセカンドライフに再利用するか、あるいはそのままリサイクルに回すべきかを判断することができる。
2020年3月に行われたTWAICEの前回の資金調達ラウンドでは、アーリーステージ専門ベンチャーキャピタルのCreandum(クリーンダム)が主導し、既存の投資家であるUVC Partners(UVCパートナーズ)、Cherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)、Speedinvest(スピードインベスト)が追加投資を行った。
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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:EV、バッテリー、TWAICE、資金調達、エネルギー貯蔵
画像クレジット:TWAICE
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)