FacebookはRSS製品の開発には取り組んでいないようだが、ニュース発見に関しては極めて大きなチャンスを持っている。Facebookは、われわれが友達とシェアしているリンクを、全世界向けのオートマチックDiggに変えることかできる。Facebookには10億人以上の人々がいて、その多くがニュース記事や外部サイトのコンテンツへのリンクをコメントと共にシェアしている。
ただしTwitterのような公開投稿と異なり、殆どは友達や知り合い同志のセミプライベートな投稿だ。現在のところ、Facebookユーザーの間で何が重要だと考えられているかを総合的に知る方法はない。Facebookのアルゴリズムだけが、どのリンクや単語が人気なのかを知っている。もしFacebookが、人々がシェアしたデータを、匿名でプライバシーに安全な形で集計することができれば、あらゆる瞬間における世界で一番人気のあるウェブページのリストを作ることができる。Facebookのホームページやモバイルアプリから簡単に見られるようにすれば、そのリストはわれわれの集合意識を覗き見るための有益で中毒性のある入り口になる。
巨人REDDITの肩に乗る
世界で何がシェアされているかを垣間見る場所は今でもあるが、Facebookのデータや本流といれるユーザーをベースにしたものは存在しない。Redditは驚くべきサイトだ。そこでは非常に多様性のあるコミュニティーの人々が、ほぼ無限のカテゴリーからその日で最も重要なコンテンツを拾い出している。彼らの投票によって最も興味ある記事が浮上し、彼らの意見はわかりやすいスレッドと会話にまとめられる。スレッドの設計は実にすばらしく、他の形式化されていないコメントシステムはいずれRedditのスタイルになっていくのではないかとさえ私は思っている。
これは利点とも欠点とも言えるだろうが、Redditは自発的投稿に基づいている。何かがRedditに載るためには、誰かが率先して時間をかけ積極的に掲載する必要がある。掲載されれた後、その記事のランクを決めるのは、投票し、コメントするRedditメンバーたちだけだ。その結果Redditのトップページは、ウェブ全体というよりもRedditコミュニティーを反映したものになる。全員のための”R/”もあるが、全体で見れば、Redditには、誇り高きオタク精神と懐疑主義とユーモアの入り混じった姿勢が現れる。Facebookには、そこでシェアされたあらゆる記事を分析することによって、より広くより主流な定義による人気ランキングを作れるチャンスがある。誰かが自発的にリスト作りに貢献する必要はない。ただ、Facebook上でよくシェアされているかどうかによってリストが有機的に作られていく。何回クリックされたか、いいね!が付けられたか、コメントが付いたかなどの情報も使えるかもしれない。国や地域別のリストを提供すれば、内容をある程度ローカライズすることもできる。
TWITTERのトレンド情報
私が想像するFacebookでのニュース発見体験は、Twitterのトレンド情報と似ているかもしれない。あちらもユーザーが積極的に選ぶ必要はない。人々が日々起きたことについてつぶやけば、人気の単語やハッシュタグがリストを上昇していくだけだ。しかし、Twitterのトレンドをチェックすることにハマっている人はいるだろうか? 少なくとも私は違う。一瞬驚いたり面白いと感じることはあっても、クリックしたいと思うことは稀だ。
Twitterトレンドには専用のページすらない。Twitterホームページの左列にあるだけだ。モバイルではDiscoverタブの下にまとめられている。最大の弱点はコンテキストがないことだ。それがなぜシェアされたのかを知る術はない。クリックすればその単語やハッシュタグが検索されるだけで、結果はごちゃごちゃで解読不能であり、トレンドが何であるかの決定的な答は得られない。スポーツイベントや世界的大ニュースに関しては、このストリームは世界が考えていることに関するすばらしい洞察を与えてくれる。しかし、#FOTunisがチュニジアの首都チュニスのオンライン・カンファレンスを指していることは、Googleでさえすぐには教えてくれなかった。
個々の単語や短いフレーズからニュースを編成することは、少なくともこのデザインやコンテキストを抜きには効果的な方法とはいえない。もしFacebookがリンクに基づいたニュース発見サービスを作れば、人々が何を話題にしているかがずっと明快にわかるだろう。一般にリンクには、見出しや写真やテキストなど宣伝文句に使えそうなものが付いている。Facebookは、リンクのリストにこの情報を付けて出すだけでよい。われわれがニュースフィードにウェブサイトのリンクを載せた時と同じだ。
Facebookはいずれハッシュタグのトレンドリストを作るかもしれない。6月にFacebookはTwitterと同様のハッシュタグをサポートし、先週には、検索したりクリックしたハッシュタグを付けられた記事によく付けられる別のタグを表示する、関連ハッシュタグ機能が追加された。おそらくFacebookは、ハッシュタグ製品を徐々に展開し、将来トレンドハッシュタグ製品を作るための準備をしているのだろう。
FACEDIGG
誤解のないように言っておくと、Facebookのニュース発見サービスはRedditやTwitterを置き換えるものではないし、必ずしも直接競合するわけでもない。しかしそれは、人々が気にかけていることを浮かび上がらせ、主観性を減らした上で簡潔な使いやすいデザインにまとめてくれる。私自身はこの「Facebookトレンド」ページを頻繁にアクセスするだろうと思う。自分のニュースフィードに飽きたら、インスピレーションを求めてここをクリックする。ざっと見渡していろいろなリンクをたどっては、またトレンドページに戻る。地域別のリストや、私の行動や興味、さらには私に似た人の好みに合わせてパーソナライズされたリストがあれば、もっと使いたくなるだろう。
DiggもRedditも9GagもTechmemeも、トレンド情報のすばらしいリストが中毒性であることを証明している。しかし、本流の人々に焦点を絞ったものはまだない。
もしFacebookがこれをものにすれば、山ほどのトラフィックが生まれる。これをクリックして、世界で起きていることをしょっちゅう見に行く人たちもいるだろう ― 友達からのコンテンツをニュースフィードで見るのと同じくらい。両者は情報の2本柱として、ひとつは自分にとってが特に関心のある、もう一つは全員にとって関心のある情報を提供する。プライベートと公開。主観的と客観的。
Facebookトレンドは友達との質の高い会話を始めるきっかけにもなる。共感できる話題を見つけた人は、クリックするだけでなくシェアして友達と語り合うだろう。理想的には、友達もシェアしていた場合にはトレンドリストの中で会話スレッドが作れるとよい。
Facebookはこれを行うのに打ってつけのしくみを、すでに最新のニュースフィードに組み込んでいる。シェアされたリンクの横にプロフィール写真が並び、マウスをかざすとその友達がコンテンツをどう説明し、どんな返信をしたかを読むことができる。友達がすでにシェアしたトレンドリンクにこのデザインを採用すれば、未知らぬ人たちのコメントが延々と続く1本のスレッドよりはるかに便利だ。
もしあなたが「こんなものいらない。世界で何が起きているかは友達がすばらしいリンクをシェアして教えてくれる」と思っているなら、あなたはラッキーだが、おそらく少数派だ。平均的ユーザーの友達は180~250人程度だという。大多数のFacebookユーザー、とりわけ途上国では、ソーシャルウェブの大きな楽しみ ― その日のニュースや悲劇や偉業にまつわる即時かつ集合的な会話 ― を逃がしているのではないかと私は憂慮している。たった一人がFacebookトレンドをフォローしていれば、一つのソーシャル集団全体を啓蒙することができる。
記事やコメントの長さには事実上制限がないので、世界で最も話題になっているニュースに関する意見を書くための場所は十分にある。だからTwitterのようなエコー室になることもない。「このリンクをシェアしている友達が5人います」と表示されていれば、そのコンテンツに関する様々な見解を見ることができる。
あらゆる発見メディアはスポンサードプレースメントによって収益化できる。ブランドは料金を払ってトレンドリンクの一覧内に自社へのリンクを挿入できる。これはコンテンツマーケティングで主流のチャンネルになれるかもしれない。そこでは伝統的広告は使えないかもしれないが、ブランド入りのコンテンツやアプリ、楽しい余興やコンテストへのリンクは、友達からのオーガニック・コンテンツがうまく収まらないニュースフィードとは別の場所に送られれば、良い結果を残す可能性がある。主要広告主たちは、一度に多数のオーディエンスにリーチする方法をFacebookに要求し続けてきたが、これがその答になるかもしれない。
もしFacebookがわれわれのデジタルライフを包含したければ、われわれが誰であり何をしたかを扱うだけでは足りない。われわれが何を考えているかも網羅すべきだ。考えていることを打ち明けさせるためには、われわれに情報と刺激を与え、今世界で何が話題なのかを知らせることによって友達との会話のネタを提供する必要がある。
[画像提供:Brian Shaler]
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(翻訳:Nob Takahashi)