メッセージの返信を待っている時間は手持ち無沙汰になる。でもこれからは、Facebook Messengerでパックマン、スペースインベーダー、Words With Friends Frenzyなどのインスタントゲームで遊べて、友人と得点を競えるようになった。ゲームはメッセージのスレッド内から直接遊ぶことができる。HTML5のモバイルウェブ規格で構築されているので、やぼったいネイティブアプリをダウンロードせずとも瞬時にロードするのが魅力だ。
Facebookはユーザーと友人にちょっとした競争心を持たせることで、Messengerの利用時間を伸ばしたい考えだ。2人で同時に遊ぶのではなく、非同期的に得点を競う。いつでも、隙間時間に遊べるものだ。最終的にインスタントゲームはゲームを宣伝したい開発者からの広告収入をFacebookにもたらすかもしれない。アプリ内購入機能はまだないが、将来的にそれが実装されるのなら、それも収益源になるだろう。
インスタントゲームは本日アメリカを始めとする30の国でローンチした。バンダイナムコ、コナミ、タイトーといった昔からあるゲーム会社からZyngaやKingといった若いゲームスタジオのゲーム17種類がある。インスタントゲームはiOSとAndroidの最新バージョンで利用可能だ。ゲームは、Facebook Messengerのスレッドの電話とスタンプのボタンの隣にあるゲームコントローラーのアイコンをタップすると出てくる。Facebookのデスクトップアプリでも、モバイル画面が上に出てきて遊ぶことができる。
どのゲームで遊ぼうか? ゲームのレビューはこちらの記事を参照してほしい。
ハンズオン:ゲームの操作は難しいが、スムーズで中毒性が高い
17種類のゲーム全てを試してみた。ゲームの画質も動作も良い。どのゲームも3秒から10秒程度ですぐにロードするのには驚いた。得点やランキングも自動でスレッドに共有されるので、友人を誘うのがとても簡単だ。ほとんどのゲームはわかりやすくシンプルで、1回のゲームは30秒ほどで終わる。これなら誰でも隙間時間に遊ぶことができるだろう。
ただ、コントローラーの動作がぎこちなく、それにはストレスを感じた。パックマンやアルカノイドといったゲームでは致命的だ。しかし、Messengerのインスタントゲームが大成功することの方が大問題だ。すんなりとゲームを進められるため、友人より高得点を取ろうとゲームにはまって、仕事より長い時間ゲームをしてしまいかねない。
FacebookでMessengerを率いるDavid Marcusは「ソーシャルゲームはデスクトップで大成功しました。しかしモバイルゲームでは、ソーシャルな要素は後付けでしかありませんでした」という。Facebookはすぐに遊べて、非同期的に友人と競う要素のあるゲームを作り直すことで、親しみやすいゲームの新時代を切り開けるのではないかと考えている。
HTML5でFacebookがゲーム領域に再挑戦
Facebookは2008年頃、デスクトップアプリのソーシャルゲーム領域を席巻していた。便利なツールアプリより、ゲームが人気だった。ピーク時にはアプリ内購入の30%を得ることで、四半期に2億5000ドルもの収益を上げた。ゲームの中毒性とバイラルな特性により、Facebookはユーザー数とエンゲージメントを伸ばすことができた。今でもFacebook.comの滞在時間の15%はゲームに費やされている。ただ、最近の四半期のゲームの収益は1億9600万ドルに減速している。
ユーザーがモバイルに移行するほど、 Facebookはゲームを声高に宣伝しなければならなくなった。iOSとAndroidしかネイティブアプリストアを持っておらず、アプリ内購入から割り前が得られるのも彼らだけだ。2011年、Facebookも必死になってHTML5のゲームプラットフォーム「Project Spartan」を開発した。しかしこれが頓挫したのは、当時のモバイルウェブ規格は、ダウンロードして使う豪華なネイティブアプリに対抗できるほど強力なものでなかったからだ。
月日は流れ、開発者はHTML5で画質が高く、さくさく動くゲームを作る方法を見つけた。Messengerで Infinity Bladeのような3D長編ゲームを見ることはないだろうが、80年代のクラシック・アーケードゲームや簡単なパズルゲーム、 Flappy Birdのようなレトロゲームなら支障はない。
FacebookはMessengerゲームのアイデアを試すのに、自分たちでもゲームを作った。バスケットボールをシュートするゲームで、ユーザーは累計12億回、このゲームで遊んでいる。これはFacebookの予想以上だった。Messengerにゲームがあればユーザーは遊ぶことがわかった。もちろん、LINEやKakao Talkなどのチャットアプリも、チャットゲームプラットフォームを先駆けて開発している。
今月の初め、Facebookがインスタントゲームのプラットフォームを構築しているという情報が入った。TechCrunchは、このゲームがどのように使えるかやCandy Crushを制作したゲーム会社Kingがこのプラットフォームのために開発していることを他に先駆けて伝えた。
MessengerのHTML5ベースのゲームの画質は他のゲームより劣るかもしれないが、エンゲージメントに関しては引けを取らないだろう。Gameeによるゲームネットワークの調査によると、チャットゲームではユーザーは毎日平均で2セッションにわたり、34回、21分間遊んでいる。ネイティブアプリのゲームでは平均2.5セッション、43回、33分間だ。
このチャットゲームのエンゲージメント率と気軽にゲームを始められる手軽さを持ち合わせたMessengerのインスタントゲームは広いオーディエンスに受け入れられるかもしれない。
インスタントゲーム
インスタントゲームの最大の魅力は、素早くゲームを始められることにある。メッセージスレッドにあるゲームコントローラーのアイコンをタップして、一覧からゲームを選ぶとすぐにゲームがロードする。一回のゲームは短く、獲得した点数はプライベート、あるいはグループのスレッドに自動で投稿される。
高得点を獲得したスクリーンショットには、対戦相手を煽る文言など、Snapchat風に書き足すことができる。ニュースフィードにゲームをシェアすると、それを見た友人はFacebookアプリでもウェブサイトでもすぐにゲームに飛ぶことが可能だ。
ここにゲームの一覧と簡単な説明を載せた。ゲームを試して、良かった順に並べている。
- ギャラガ (バンダイナムコ)–クラシック・アーケードゲーム。宇宙船でシューティングする縦型ゲーム。ゲームセッション1回につきライフは1。
- スペースインベーダー (タイトー) –
クラシック・アーケードゲーム。宇宙空間でシューティング。 - EverWing (Blackstorm) – 1942年版縦型スクロール式ゲーム。画質とスピードに秀でた宇宙船シューティングゲーム。
- Endless Lake (Spilgames) – 美麗なTemple RunとMonument Valleyを合わせたような、アート調アドベンチャーゲーム
- アルカノイド (タイトー) – クラシックなブロック崩しゲーム。モバイルの操作感が良い。
-
- Words With Friends Frenzy (Zynga) – 高速なScrabble(言葉並べ)ゲーム。少し練習が必要。
- Hex FRVR (FRVR) – テトリスとCandy Cushを合わせたパズルゲーム。手が詰まるまで、列を消していく。
- パックマン (バンダイナムコ): クラシック・アーケードゲーム。モバイルのスワイプコントロールが難しく、すぐに捕まってしまう。
- Shuffle Cats Mini (King) – 画面スワイプの速度と方角でカードを飛ばす射撃ゲーム
- Wordalot (MAG Interactive) –Scarabbleとクロスワードパズルを合わせたゲーム。解く速さを競う。他とは趣が違って面白いが、難しい。
- ZooKeeper (Kiteretsu) – 時間制限つきCandy Crush風ゲーム。8ビットの画像はかわいいが、1回のゲームセッションが長い。
- Track & Field 100M (コナミ) – ボタンを連打するスピードトライアルゲーム。コンピューターの対戦相手が速すぎる。
- Brick Pop (Gamee) – ドットスタイルのパズルゲームで、ルールの要領を得ない。
- Bust-A-Move Blitz (タイトー / Blackstorm) – バブルを合わせて消していくパズルゲーム。1回のゲームに時間がかかる。
- 2020 Connect (Softgames) – Candy CrushとThreesのパズルを合わせたゲーム。Messengerで遊ぶにはやや退屈。
- Templar 2048 (Vonvon) – Threesスタイルの時間制限つきパズル。遊び方が難解。
- The Tribez: Puzzle Rush (Game Insight) – 恐竜版Candy Crushのクローン。
現在プラットフォームはクローズドベータ版だが、インスタントゲームを開発したい場合はここから登録することができる。
今日からインスタントゲームから利用できる国は以下の通りだ。ノルウェー、デンマーク、スイス、スウェーデン、英国、カナダ、米国、日本、オランダ、オーストラリア、オーストリア、ラトビア、ドイツ、アイルランド、ベルギー、ニュージーランド、フランス、シンガポール、フィンランド、香港、ロシア、エストニア、台湾、スロベニア、プエルトリコ、キプロス、イスラエル、リトアニア、スペイン、イタリア。
ギャラガやスペースインベーダーといったクラシックゲームがこのプラットフォームに最適だ。EverWingやEndlress Lakeも、新しい手法で短く楽しいゲームを確立している。
Facebook:次の開発者エコシステム
開発者にFacebookで引き続き開発を続けてもらうには、彼れらが収益を得られるプラットフォームにしなければならない。今のところ、これらのゲームには広告もなく、アプリ内購入もない。自分の裁量で課金や広告表示ができるネイティブアプリの代わりにインスタントゲームを作ってトラフィックをそちらに送っても、開発者は損をすることになりうる。
Marcusは「ゲーム開発者がマネタイズする方法は見つけます。私たちは彼らと約束していますから、来年にもとりかかります」と話す。ただインスタントゲームではバイラルな広がりとトラクションが期待できる。スレッド内でチャット相手と自動で競ったり、ニュースフィードの投稿でゲームをシェアすることができる。開発者はオーディエンスを獲得してから、マネタイズを行うことも十分にできるだろう。
iMessageのゲームストアはアプリの奥にあり、ゲームもパッとしない。それに比べるとFacebook Messengerは魅力的だ。Kakao Talkでは別のネイティブアプリをダウンロードする必要があり、チャットアプリ自体はログインとゲームの競争の時に使用する仕組みだ。Messengerのインスタントゲームは、友人とのコミュニケーションにも自然と馴染む体験だと言える。また、TelegramもHTML5のゲームを提供しているが、ゲームはチャットボットにしかなく、見つけるまで時間がかかる。
また、Facebookはスパム対策をしなければならない。デスクトップでは、ソーシャルゲームはスパムの温床となっていた。Zyngaなどの開発者は、ゲームで友人に助けを求めるのにコミュニケーションチャンネルを乱用していたのだ。Facebookのプロダクトマネージャーを務めるAndrea Vaccariは、過去の間違いから学んだと話す。「現在、すべてのアプリ内コミュニケーションは私たちが管理しています」と言う。
Facebookの10億人のユーザーにリーチできることを引きに、最高の開発者にメッセンジャーを招き入れることができるかが鍵だろう。彼らがメッセンジャーから2タップで遊べるゲームを開発するのなら、Messengerは友人と話すのと同じくらいやみつきになるコンテンツを手に入れたも同然と言えるかもしれない。
[原文へ]
(翻訳:Nozomi Okuma /Website)