Fender、ヘッドホン市場への参入は上々の滑り出し

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

初めは疑ってかかっていた。いや、今でも新製品であるカナル型のモニター用イヤホンが、これまでのギターやアンプといった製品の枠を飛び出していこうとするFenderの壮大な計画の一部であることに、(確かな事実に基づいてはいないものの)疑いの念を拭えていない。ただ、FXA6がFenderによる世界征服計画のほんの第一歩だとしたら、確かにその一歩は確実なものだったと言える。

Fenderがヘッドホン業界に参入するという計画を発表した際に、疑問を抱いたのは私だけではないことはわかっている。これまでいくつかの有名ブランドが、OEM生産されたハードウェアに自社のロゴを貼り付けただけのものを使って、既存製品群外への進出を狙う前例を見てきたからだ。

先週の電話インタビューにて、FenderのCMOであるEvan Jones氏は、そのようなつもりは全く無いと私を安心させてくれた。Fenderは、ヘッドホンを単にプロ向け製品の次の妥当なステップとしてだけでなく、これまでのアンプ開発で培ってきた音声技術の延長線上にあるものとして捉えている。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

また、同社は今後の動きを踏まえ、従業員の新規雇用やナッシュビルにある工場のオペレーション拡大を行った。Fenderが、新製品のことを単にヘッドホンやイヤホンではなく、「モニター」と呼ぶことにこだわっていることから、本製品をプロのミュージシャン向けに販売しようとしているということがハッキリわかる。しかし、電話インタビュー中は、あまりハッキリとその区別をしていないようだった。

そんなことは実は重要ではなく、やはり肝心なのは製品の性能だ。そして、性能に関しては良いニュースがある。まず、FXA6の音は素晴らしい。開発に当たったFenderのチームが、上質な音を奏でるヘッドホンの製造について熟知していることがよく分かる。これは、ハイエンド音楽機器の製造販売を行っていたAurisonicsのFenderによる買収とも関係があるかもしれない。

音は、ボリュームを大きくしても(お母さんごめんない!)非常にハッキリしている。そして、(消費者向けヘッドフォンでこれまでありがちだった)他音域が上手く出ないことをカバーするために低音部を過度に強調するといったこともなく、音源を忠実に再現することに長けている。

Fender

さらにFXA6は、ひとつひとつの音を丁寧に再現することができ、特にビットレートの高い音源だと楽器毎の音が聞き分けやすい。安いヘッドホンによくあるような、ゴチャゴチャに混ざり合ってぼんやりした音とは対照的だ。私もこの記事を書きながらPet Soundsを聞いていて、Carol Kayeによるベースプレイを他の音と混ざり合うことなく楽しめている。

また、つけ心地に関してもFenderの努力が感じられる。もちろん、カスタムメイドのイヤフォンに比べるとフィット感はおちるが、FXA6は自分にあったイヤーピースさえ選べば、外耳の輪郭に沿って心地良くフィットする。

Fenderは、ヘッドホンという製品は、フリーサイズでおおよそ全ての(もしくは95%くらいの)人が問題なく使えると思っているようだが、私自身は、本製品が購入者全員に上手くフィットするとは思っていない。但し、サイズが合いさえすれば、耳の穴に蓋をすることで雑音が遮断され、パッシブノイズキャンセリングの機能を果たすことができる。

編みこみのケーブルは、本体と着脱可能になっており、これは高価なヘッドホンにおいては明らかなプラス要素だ。これまでの経験から言って、ケーブルがヘッドホンのパーツ中で一番最初にダメになる場合が多いため、何かが起こった際に交換可能だとわかっているというのはかなり大きい。

ここではあまり関係のないことだが、FXA6に同梱されているケーブルにはマイクがついていないので、電話をすることはできない。しかし、プロ音楽家に向けて販売されているモニター用イヤホンであることを考慮すると、当然のことかもしれない。

Fender

最後に重要な点として、400ドルというFXA6の値段は、ほとんどの消費者にとって手の届かない価格帯だ。もちろん、Ultimate Earsを購入するようなユーザーは、嬉しそうにモニター用イヤホンの価格の上昇について話をしてくれるだろう。

FXA6が現在の価格帯で販売数を伸ばすような開かれたマーケットがあるか、というのを判断するのは難しく、Fenderは明らかにブランドネームに頼ってヘッドホン市場で戦っていこうとしている。しかしながら、少なくともFenderの長期的な新市場への進出計画が、期待はずれとなることはないだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。