Google(グーグル)のChrome(クローム)チームは米国時間12月9日、オンラインで開催された開発者カンファレンス「Chrome Dev Summit」において、開発者向けの新機能や、拡張機能開発者向けのルール改訂、そしてブラウザ全体のパフォーマンスを向上させるための新たなステップを発表した。
Chromeチームは、拡張機能開発者向けの大きな変更も発表した。2021年には、ユーザーが拡張機能でアクセスできるサイトをより細かく制御できるようになる。さらに同年1月からすべての拡張機能はChromeウェブストアで「プライバシープラクティス」セクションが設けられ、その拡張機能がどのようなデータを収集するかが詳細に説明されるようになる。
また、Chromeチームは同日、「Chrome 88」がStableチャンネルとなる2021年1月中旬に「Manifest V3(マニフェスト・バージョン3)」を導入することも発表した。これは多くの拡張機能開発者、特に広告ブロッカーの開発者が心配していたことだ。マニフェスト V3では、拡張機能開発者がユーザーからの多くのデータにアクセスすることを防ぐ新しい制限が課せられるが、拡張機能がウェブページと相互作用する方法にも比較的厳しい制限が設けらている。グーグルは受け取ったフィードバックに基づき、V3にいくつかの変更を加えたというが、おそらくこれが最後ではないだろう。
しかし全体的には、もしあなたがChromeユーザーであるなら、この日のイベントで最も歓迎すべきニュースは、チームが2020年初めにいくつかのアップデートでブラウザーの全体的なメモリフットプリントの削減に取り組んだように、V8 JavaScriptエンジンに取り組み、そのメモリフットプリントも削減しているということかもしれない。さらにチームはV8を高速化し、サイトのJavaScriptファイルを並列にロードして、ページが実行したいと思った瞬間に使用できるようにすることで、解析の一時停止を排除する新しい方法を見つけた。
チームは、ブラウジング体験を高速化するための新しい方法にも引き続き取り組んでおり、Chromeのコンパイル方法を実際に変更することでこれを実現している。この変更は2020年の夏、Chromeのベータチャンネルに実装された時に初めて言及されたものだ。
「Chromeの利用パターンを見て、ユーザーが実際どのようにChromeを利用しているかを洞察した上で、Chrome自体をより効率的にコンパイルする方法で何かできることはないかと、我々は自問しました。答えはイエスであることがわかりました」と、グーグルのBen Galbraith(ベン・ギャルブレイス)氏は私に語ってくれた。「【略】私たちはこれをプロファイルガイド最適化と呼んでいますが、(特定の)シナリオでは、これらのタスク固有コンパイラの最適化によって、ページロードが最大10%速くなることがわかりました。ほとんどのシナリオは2〜5%の範囲ですが、現在ほとんどのブラウザエンジンがどれだけ成熟しているかを考えると、これは大きな違いです」。
チームは最近、タブのスロットリングを改善し、フォアグラウンドとバックグラウンドのタスクに効率的にリソースを割り当てる方法にも取り組んでいる。ギャルブレイス氏によれば、今後もこれらの作業をさらに進めていく予定だという。
開発者も、グーグルの「Web Vital(ウェブ バイタル)」イニシアチブの一環として、ウェブアプリのパフォーマンスを向上させるための新しいツールを手に入れることができるようになる。これは開発者に、ユーザーがそのウェブアプリをどのように体験しているかを理解するの役立つ、適切なパフォーマンスメトリクスを提供することが目的だ。
Google検索では、2021年5月からこれらのコアメトリクスの一部がランキングに使われる予定だ。グーグルはすでにChromeユーザーエクスペリエンスレポートやSearch Console(サーチコンソール)などでこのデータを強調しているが、今回のイベントではオープンソースのWeb Vitals Reportツールを発表。開発者がGoogleアナリティクスに送信したWeb Vitalsデータに基づいて、カスタマイズした可視化データを作成できるようになる。Googleアナリティクスは現在、Web Vitalsのコンテクストでこのデータを表出していないので、開発者はグーグル独自のホスティングツールを使用してこれらのレポートを実行したり、コードをフォークして独自のインフラストラクチャ上で実行することができる。
「さまざまなメトリクスがありますが、私たちは自分たちが最も理解しているものに焦点を当てています。読み込み時間、視覚的な安定性、そしてインタラクション、つまり何かをクリックすると実際に何かが起こるということです。これらのメトリクスのミッションは、ユーザー体験の質を本当に理解できるようにすることです」とグーグルのDion Almaer(ディオン・アルマー)氏は説明している。
それだけではない。プライバシーの面においてグーグルは「Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)」モデルの改良を続けている。そこには2つの新しい実験が追加された。クロスサイト識別子を使用せずに広告のコンバージョンを測定するClick Conversion Measurement API(クリックコンバージョンメジャーメントAPI)と(web.dev記事)、サイトが信頼するユーザーに暗号トークンを発行できるようにする新しいTrust Token API(トラストトークンAPI)だ(web.dev記事)。このトークンの背後にある考え方は、ブラウザが別のコンテクストでもこのトークンを使用することで、ユーザーが自分の言う通りの人物であり、悪意のあるボットや詐称者ではないと評価できるというもの。
さらに、PWAを書きたい開発者のための新機能や、開発者がChromeで支払いを受け付ける方法のアップデートなども発表された。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Google、Google Chrome
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(翻訳:TechCrunch Japan)