GoogleがCookieに代わるターゲット方式による広告収入はほぼ変わらないと主張するもプライバシー面は不透明

Google(グーグル)のPrivacy Sandbox(プライバシー・サンドボックス)は、競争の懸念を巡って今も監視の目を向けられている中、テック巨人はChrome(クロム)ブラウザーのサードパーティー製クッキーサポートを縮小する方向で計画中の実験的広告ターゲティング技術が「クッキーベースのアプローチと同様に効果的」と主張する最新情報を公開した。

Googleは、Federated Learning of Cohorts(FLoC)と呼ばれる技術を開発している。ユーザーを似たような興味をもつグループにまとめるクラスター化に基づいて広告ターゲティングを行うもので、サードパーティーが個人のあらゆるオンライン行動を追跡することでターゲティングしている現在の(社会秩序を乱す)「基準」よりもプライバシー面で優れていると同社は主張している。

GoogleはFLoCsによって、サードパーティー製追跡機能のサポートをやめたあとも、関心に基づく広告ターゲティングを可能にしようと考えている。

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しかしながらこの提案は、これを反競争的だと指摘する広告業者を警戒させた。そして1月初旬、英国の競争規制当局である競争市場庁(CMA)は、デジタルマーケティング企業連合や新聞、テック企業などからの、Googleが支配的地位を利用してサードパーティー製追跡機能のサポートを軽視しようとしているという申立てを受け、Privacy Sandbox提案の調査を開始した。

プライバシー面から見て、Googleの自称”Privacy” Sandboxは必ずしも喝采を浴びているわけではない。

たとえばElectronic Frontier Foundation(電子フロンティア財団)はFLoCsを「プライバシー保護とは正反対のテクノロジー」と呼び、2019年にこのアプローチを「行動に基づくクレジットスコアリング」と似ていると警告した。当時同団体は、この提案は弱者グループに対する差別を助長するものであり、オンライン行動を無断で他者とパターンマッチングされ、繊細な情報を第三者にリークされることにもつながり、しかもユーザーには「興味に基づく」広告ターゲティングのバケツに放り込まれることを避ける方法か提供されない、と指摘した。

広告主とユーザー、両サイドに反対意見が山積し、競争問題に対する規制当局の監視が入った今、Googleが同社のCookieに代わるしくみを全利害関係者に売り込むためには大変な苦労が待っている。ただし、現在テック巨人の念頭にあるのは広告主(および競争規制当局)のようだ。

1月25日に公開されたPrivacy Sandbox提案の最新版でGoogleは、Cookieの追跡がなくなることによってインターネットユーザーを有効にターゲットできなくなるのでは、という広告主の懸念を和らようと、FLoCテクノロジーのテスト結果によると、広告主は「Cookieベース広告と比べて消費1ドルあたりのコンバージョン率95%以上」を見込めると書いている。

しかしGoogleがその数字をはじき出すためにどれだけのテストデータが使われたのかはわからない(本誌はGoogleに訪ねたがすぐに回答は得られなかった)。だから「最低95%」という主張に根拠はない。

ただ広報担当者は、同社が3月に公開テストを開始することは明言した。広告主もFLoCのテストに参加する予定であることも。つまり、この部分に関する詳細が今後明らかになっていくことは間違いない。

「ChromeはFLoCベースのコホート群を3月の次期リリースでオリジントライアルとして公開し、Google広告の広告主を含めたFLoCベースコホートのテストを第2四半期に行う予定です」とユーザーの信頼とプライバシー担当グループ・プロダクトマネージャーのChetna Bindra氏がブログに書き、「早くスタートを切りたい人は、このFLoC白書に書かれた原理に基づいて(私たちと同じように)自身でシミュレーションを実行することができます」と付け加えた。

GoogleがPrivacy Sandbox提案の開発に関して比較的オープンであることを強調し続けいることは驚きではない。反トラストの告発と戦うためだ。しかし同時に、サードパーティー製Cookie軽視の中止や延期を勝ち取ろうとしているアドテック業界はトラッカーに代わる独自の方法を開発中であり、概してGoogleより透明性がずっと低いやり方で対抗案を開発していることは注目すべきだろう。

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それでもGoogleは、FLoCの広告売上に及ぼす影響(最新の報告によればごくわずか)と、個別追跡による行動広告や、ラベル付けされたバケツに入れられて行動広告をみせる方法から、新提案の方法に変わることによってインターネットユーザーが得られるプライバシー向上との比較を定量化することに熱心のようだ。

Googleのブログ記事にはいくつか曖昧な記載がある。たとえば「実行可能なプライバシー・ファーストの選択肢」や「個人を『集団の中に』隠す」などだ。しかし、望ましいポストCookie機能を使うとどれほどのプライバシーをユーザーが得られるかどうかの基準やデータはない。

10月に発表されたテスト結果は、FLoCsがその他の広告指標を提供できることも広告主に伝えようととしている。面白いことに、インターネットユーザーのプライバシー(および、プライバシーの程度が下がるとなにか起きるか)は、Googleのコンピュータ科学者には測るのが難しいようだ。

「ポイントは、誰もユーザーのサイト横断閲覧履歴を再現できないようにすることです」、とこの提案がユーザーのプライバシー状態をどのように改善するかを尋ねられた広報担当者は言った。

「私たちは、ウェブサイトを横断する追跡方法の不透明さに取り組み、プライバシーを守るしくみを消費者に提供しようとしています。それをパブリッシャーと広告主が正当な報酬を得られる方法で行います。つまりこれはある種のプライバシーを模倣しようとしているのではありません。私たちはユーザーの根源的な懸念を解決しようとしているのです」とつけ加えた。

FLoCはGoogleのPrivacy Sandbox提案の一部にすぎない。会社はアドテック・エコシステムのさまざまな重要要素を同時に置き換えるために数多くの目標に取り組んでいる。そしてその一部の概要をブログ記事に書いている。(ポストCookie方式の)コンバージョン率、広告詐欺防止、フィンガープリント対策などだ。

そこでは再ターゲティングと再マーケティングにも少し言及し、Chromeの新しいプロポーザル(Fledgeと呼ばれる)で「広告キャンペーンの入札や予算に関する情報を保存するために作られた」という「信頼できるサーバー」モデルを検討していることを挙げている。これも年内に広告主がテストできるようにする、とGoogleは言っている。

「昨年、アドテック分野のいくつかの会社からこの機能の使い方について助言をもらいました。Criteo、NexRoll、Magnite、RTB Houseからの提案もありました。Chromeは新たなプロポーザルであるFLEDGEを発表しました。前回のChromeのプロポーザル(TURTLEDOVE)に業界からのフィードバックを反映させたもので、『信頼できるサーバー』(一定の原理とポリシーに基づいて定義される)のアイデアもその一です。ChromeはFLEDGEを今年中にオリジントライアルを通じて提供し、アドテック企業が “bring your own server”(自分でサーバーを持ち込む)モデルの下でAPIを使ってみる機会を提供します」と書かれている。

「FLoCのようなテクノロジーの進歩と、測定、詐欺防止、反フィンガープリンティングといった分野における同じく有望な取り組みは、ウェブ広告の未来です。そして、Privacy Sandboxはポスト・サードパーティーCookie時代の当社のウェブプロダクトに力を与えるでしょう」

独立の調査員・コンサルタントのLukasz Olejnik博士は、新たなしくみがユーザープライバシーに与える影響には不確かな点が多く残っていると言う。「Fledge体験の可能性は興味深いがGoogleはこのテストにさまざまな提案を織り交ぜている。そのような組み合わせには別のプライバシー評価が必要であり、そこでのプライバシー品質は当初の主張と異なるかもしれない。さらに、現在のテストでは将来に向けたプライバシー予防措置の多くが、当初無効にされることになる。それらを徐々に有効にしていくには慎重な扱いが必要になるだろう」とTechCrunchに語った。

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画像クレジット:Krisztian Bocsi/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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