噂は本当だった。Google(グーグル)がFitbit(フィットビット)の買収を計画しているという噂が流れた1週間後、Googleのデバイス担当シニアバイスプレジデントのRick Osterloh(リック・オスターロー)氏のブログ投稿の中で、両社はこの買収を認めた。この合意は最終的に双方にとって有益となる可能性がある。Googleはウェアラブル分野でシェアを獲得するのに苦戦しており、同社は腕時計メーカーのFossil(フォッシル)から数多くの知的財産を4000万ドル(約43億円)で購入していた。
Fitbitもここ数年、成長を維持するのに苦労している。同社は手首に装着するヘルストラッカー市場を開拓し、その後大きなシェアを得たが、最終的に市場を支配するスマートウォッチ市場の成長とともに苦戦していた。この分野への参入は遅かったがFitbitはPebble、Vector、Coinを買収したことでVersaスマートウォッチで成功を収め、現在はヘルスケア分野に注力している。
Fitbitは、一株当たり7.35ドルの評価で約21億ドル(約2300億円)にて買収されることを認めた。同社の株価は変化する市場とともに大きく変動しており、2015年夏には過去最高の51.9ドルを記録した。
「12年以上前、私たちは世界中のすべての人々をより健康にするという、大胆な企業ビジョンを設定した」と、FitbitでCEOを務めるJames Park(ジェームス・パーク)氏は声明で述べた。「本日、私はその目標に向けて我々が成し遂げたことを信じられないほど誇りに思う。我々は、より健康的で活発な生活を送るために、我々の製品を利用している世界中の2800万人以上のアクティブユーザーをサポートする、信頼できるブランドを構築した。Googleは、我々の使命を前進させる理想的なパートナーだ。Googleのリソースとグローバルプラットフォームを利用し、Fitbitはウェアラブル分野の革新を加速し、拡大し、誰もがより健康になる手伝いをする。これ以上に興奮することはない」。
オスターロー氏は次のように付け加えている。「ここ数年、GoogleはWear OSとGoogle Fitによってこの分野のパートナーと進歩を遂げてきたが、我々はWear OSへとさらに投資し、Made by Googleのウェアラブルデバイスを市場に投入する機会を見出している。Fitbitは業界の真のパイオニアであり、魅力的な製品、体験、そして活気あるユーザーコミュニティを生み出してきた。Fitbitの専門家によるチームと緊密に協力し、最高のAI(人工知能)、ソフトウェア、ハードウェアを組み合わせることで、我々はウェアラブル分野でのイノベーションを加速し、世界中のより多くの人々に恩恵をもたらす製品を作ることができる」。
スマートウォッチのVersa Liteの販売が期待外れだったことをうけ、Fitbitは同社製品が収集した情報に関するより多くの洞察をユーザーに提供するプレミアムサービスを今年発表した。FitbitはApple Watchの成功を受けて、本格的なヘルスケア製品として認知されるべく努力してきた。また、同社は複数のヘルスケア会社との提携を発表していた。
同氏はまた、Googleがユーザーの健康情報を収集している企業を買収することについて、プライバシー上の懸念へとあらかじめ対処することも表明した。「我々は個人情報を誰にも販売しない」と、オスターロー氏は記している。「Fitbitの健康およびウェルネスのデータは、Googleの広告には使用されない。Fitbitのユーザーはデータをレビューしたり、あるいは移動したり削除したりする選択肢が提供される」。この買収が両社にどのような影響を与えるかについては、今のところ明らかにされていないが、GoogleによるNestの買収のように、Fitbitも開発中の製品を今後もリリースし続ける、段階的な買収かもしれない。FitbitはAmazon(アマゾン)と提携し、ウェアラブル製品としては初めてAlexaを搭載したVersa 2をリリースした。しかしAlexaの競合製品をGoogleが開発していることから、将来のバージョンにはGoogleアシスタントが搭載されると予想される。
またそれ以上に、FitbitのIPとFossilの知財の買収は、Wear OSを必要とするウェアラブル製品における重要な転換点となるかもしれない。GoogleがHTCのモバイル部門の一部を買収し、Pixelデバイスを構築したことは、今回の買収が最終的に同社のハードウェアをどう形成し、前進させるかを示す一例である。Googleは家庭やモバイル製品と同じくらい強固なWear OSシステムを構築しようとしていることから、Pixel Watchの登場は避けられないように思われる。
注目すべきは、これらすべてが買収の結果(NestもHTCも)であり、また社内での有機的な成長でもあることだ。買収手続きは、規制当局と株主による承認を経て、来年中に完了する見込みだ。
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(翻訳:塚本直樹 Twitter)