GoogleとIBMは、いまでもクラウド市場シェアを広げようと必死だ

クラウド市場の場合には、知られている名前は多くない。たとえば、AWSは約32%の市場シェアを持つマーケットリーダーである。Microsoftは、はるかに少なく、そのシェアは14%であるが、AWSを除いて唯一の2桁シェアを持っている企業だ。また、IBMとGoogleが、3位と4位に留まっていることも知られている。どちらを見ようとも1桁台のシェアだ。市場は拡大し続けていいるものの、これら2つの大企業のシェアが広がる様子は見えない。

もちろん、どちらの会社もそのことに満足はしていない。そのことを強く憂えたGoogleは、これまでの責任者だったDiane Greeneに代えて、OracleのベテランであるThomas Kurianを採用し、部門の停滞状態を脱しようとしている。一方IBMは、10月にRed Hatを340億ドルで買収したことで 、さらに大きな話題を提供した。

今週、両社はさらに動きを見せ、彼らがクラウド市場を誰にも明け渡すつもりがないことを、市場に知らしめた。例えばIBMは、今週サンフランシスコで大きなIBM Thinkカンファレンスを開催しているが、この中にはWatsonを競合他社のクラウドに開放することも含んでいる。IBMのような会社にとって、これは大きな動きだった。ちょうどMicrosoftがiOS用のアプリケーションを開発し始めたときと同じだ。プラットフォームをまたがって展開することが大切なことは周知の事実だ。もし市場シェアを得たいなら、自分の枠を超えて考え始めた方が良いだろう。

クロスプラットフォーム互換になること自体は、一般的には特に急進的と呼ぶことはできないが、IBMのような会社の場合には確かに急進的ということができる。もし同社が選べる立場で、もう少し高い市場シェアを持っていたならば、おそらく現状を維持するだけで満足していたことだろう。しかし、大多数の顧客がマルチクラウド戦略を追求しているのならば、バンドワゴンに飛び乗るのは良い考えかも知れない。そしてそれはまさに、IBMがWatsonへのアクセスをクラウドをまたがって開放することによって行ったことだ。

明らかにRed Hatの買収はハイブリッドクラウドへの転換だった、そしてIBMがそのアプローチに真剣であるなら(340億ドルもつぎ込んだのだからそうであるとは思うが)、立派なことを言うだけではなく、実践が伴わなければならない。IBM WatsonのCTO兼チーフアーキテクトのRuchir Puriが、この動きについて私の同僚のFrederic Lardinoisに語ったところでは、「これらはハイブリッド環境の中にあります。顧客は複数クラウド実装を採用していますし、プライベートクラウドの中にもデータを保持しています。しかしAIのプロバイダたちは、顧客をこのハイブリッドクラウド環境に適さない特定の実装にロックインさせようとしてきました」ということだった。これはRed Hatを使った戦略にうまく当てはまる。そして今年はIBMからの様々な製品ラインで似たようなアプローチを目にすることになると思う(Googleも昨年、独自のハイブリッド戦略を発表した際にこれを認めている)。

その一方で、本日サンフランシスコで開催されたGoldman Sachs Technology and Internet Conferenceで、Thomas KurianがGoogleとしてのお披露目パーティを開催した。Bloombergによれば 、彼は元の雇用主であるOracleのやり方を踏襲し、営業担当者の数を増やし、特定の分野の知識を習得するためのトレーニングを施すと発表したということだ。

彼の発言は、Googleが従来の企業顧客に積極的にアプローチすることを示唆しているが、私は彼の前任者であるDiane Greeneが、売上を増やすために、単にインバウンドマーケティングだけに頼っていたとも思っていない。実際、彼女は会社の意志よりもはるかに積極的に、政府相手の契約を追求していたという噂がある。ともあれ、いまや売上を伸ばすのはKurianの役割だ。もちろん、Googleがクラウド収益を公表していないことを考えると、どのような成長が見込まれるのかを知ることは困難だが、おそらくそれがより成功した場合には、より積極的に開示するようになるだろう。

BloombergのShira Ovideが本日ツイートしているように、実証済の真の企業戦略に目を向けることは1つの方法だが、そのアプローチの実践がシンプルで、Googleが最終的にそのやりかたで成功できるということは意味していない。

これら2つの会社は、これまでのところあまり景気の良くなかったそれぞれのクラウドの命運を、変えたいと必死であることは明らかである。本日発表された動きは、明らかに市場シェアを伸ばすためのより広範な戦略の一部だが、それが可能になるかどうか、そして固まってしまった市場ポジションを変えることができるかは、まだわからない。

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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