各方面から絶賛されているシリコンバレーの反トラスト専門弁護士Gary Rebackを、根っからのアンチGoogle人間だと非難するとしたら、それは筋違いだ。そもそも、90年代に、Googleの大敵Microsoftを訴訟する合衆国政府の取り組みを、先頭に立ってリードしたのが彼だ。それがテクノロジ業界/産業にその後もたらした効果は計り知れないほど大きく、Larry PageやSergey Brinのようなスタートアップの起業家たちがRedmondの巨鯨と対等に戦うことができたのも、その訴訟があったればこそだ。しかし今や、Rebackによれば、ある意味で、そのGoogleが今度はMicrosoftになってしまった。それは、その市場支配を濫用しているだけでなく、同社の製品やサービスの競合他社をすべて、壊滅させている。そこでRebackは、検索におけるイノベーションを目指すこれからのスタートアップ起業家に、“Googleを避(よ)けて歩け”とアドバイスするのだ。
Rebackの説明によれば、Googleは完全にMicrosoftになってしまったわけではない。Microsoftの例からGoogleが学んだのは、政治というカードをうまく使うことの重要性だ。Microsoftは、その経済力の最高の高みにおいても、それを使おうとしなかった。対してGoogleは、合衆国政府に対するロビー活動に巨額を投じている。Rebackの主張によると、FTC(公正取引委員会)が一度同社に対する訴訟を取り下げたのは、オバマ政権内部に同社の強力なお友だちが多数いることを、おそれたからだ。しかしRebackは政府…ヨーロッパと合衆国の両方…に対し、こううながす: Googleの反トラスト問題に関してはもっと断固たる態度で臨め、と。EUの競争コミッショナー(Competition Commissioner)Almuniaが歴史に汚名を遺したくなければ、RebackがGoogleの“明々白々に証明できる”ヨーロッパの法律への違反、と呼ぶものと、決然と、相手をたたきのめすつもりで対決すべきである。一方合衆国ではRebackは、FTCの新委員長Edith Ramirezに、Googleの反トラスト事案は公取よりも強力な司法省の手に渡すべきだ、とアドバイスしている。
でも、ブラッセルやワシントンDCで行われている、いつ果てるとも知れぬ複雑な法律問題は、われわれとどんな関係があるのか。Mark ZuckerbergやRon Conwayはとっくに理解している。経済にも本物のイノベーションが訪れるためには、政治を無視できない。90年代にGary RebackがMicrosoftに対する反トラスト訴訟で戦陣の先頭に立たなかったら、一体どうなっただろうか? おそらく、Googleすらも存在せず、シリコンバレーのエコシステムの今日の繁栄も、あり得なかっただろう。だからこそ、Rebackの未来予知能力は、もしもGoogleを制御することに失敗したら、そのときの真の敗者はスタートアップ起業家たちであり、難攻不落の独占企業をそれでもあえてディスラプトしようと挑戦する今日と明日のLarry PagesやSergey Brinsらである、と警告するのだ。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))