GPSの1つの時代が終わり、次の時代が始まろうとしている。これは時刻と位置をGPSから得ている(古い)デバイスやサービスに影響を与える可能性がある。ほとんどのシステムはUTC(協定世界時)から時刻を取得している。しかしGPS衛星搭載の原子時計はこれとは別の独自の0GPS時刻で作動している。しかしこのタイミング信号は非常に正確で世界中あらゆる場所で利用できるため、多くのシステムで時刻と周波数の基準としてGPSが利用されている。
当初、GPSが実装されたとき、日付フィールドには10ビットが割当てられた。グレゴリオ暦の年/月/日という形式を利用する一般のシステムとは異なり、GPSの日付はWN(週番号)が用いられている。つまり年、月が存在しない。GPSからブロードキャストされる日付データは毎週1ずつ増加する。そのフィールドが10ビットなので1024週ごとにゼロにリセットされる。これがGPSロールオーバーだ。
GPS週は1980年1月6日にスタートし、1999年8月21日深夜0時にWNはゼロに戻った。これが最初のロールオーバーだった。グリニッジ標準時4月7日の0時(日本時間4月7日午前8時59分41~42秒)にWNは2度目のリセットを迎えた。これはレガシーシステムに問題を起こす可能性がある。携帯網を含めて各種のインフラはGPSデータを利用している。たとえばアメリカの電力網はGPSのタイムスタンプを利用している。エネルギー省によれば、「電力システムの各種コンポーネントが協調動作することを可能にするグリッド機能はGPSのデータに依存している」という。
ファームウェアが書かれた日時によってWNロールオーバーの影響が異なる可能性がある点が問題だ。
日付のリセットといえば21世紀の開始時に、Y2K(2000年問題)が起きることが懸念された。GPSロールオーバーは「GPSのY2K」と説明されることがある。デバイスのGPS受信ソフトによっては位置データの破損などの問題が引き起される可能性はある。アメリカの国土安全保障省はGPSのWNロールオーバーはUTCの信頼性を損なう可能性があると警告している。ただし同省は「最新のIS-GPS-200に準拠してUTCを提供するGPSデバイスは影響を受けない」としている。【略】
最新のソフトウェアを搭載した新しいデバイスは影響を受けないはずだ。しかし、ソフトウェアが最新の状態にアップデートされていることを確認しておくほうがよい。
米海軍天文台 は、GPS WNのロールオーバーの影響を受けていると気づいた場合、GPS受信システムの製造元に連絡するよう勧告している。 GPS Worldには主要なGPSレシーバーのメーカーが掲載されている。
新しいGPSでは日付を格納する変数の桁を増やしてロールオーバー問題を根本的に回避している。新システムでは日付フィールドは13ビットとなったので8192週が経過するまでロールオーバーは起きない。これが起きるのは2137年だ。
画像:Rudolf Ammann / Flickr under a CC BY 2.0 license.
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)