「いくつものスタートアップを創業するシリアルアントレプレナーとして女性起業家のロールモデルになりたい」。TechCrunchの熱心な読者であればピンと来るかもしれない女性起業家の村田マリ氏はこう語る(関連記事:女性起業家、シンガポールに向かう)。彼女は結婚と出産を経て2012年1月にソーシャルゲーム事業をgumiに譲渡し、2億円弱の売却益を得ている。その後、シンガポールに移住していたがこのたび、第二の創業として株式会社iemoを設立。「住」をテーマとしたコミュニティサイト「iemo(イエモ)」をローンチした。
イエモは建築家、リフォーム業者、インテリアメーカーなどの事業者がアップロードした画像をスクラップブック感覚で登録し、その中からテーマを決めて“まとめページ”を作成・投稿できるコミュニティサイト。一部ユーザーを対象に公開していたアルファ版では、子供部屋のためにアレンジしたIKEAの家具や、ダンボールを使って子供と一緒に作るクリスマスツリーの画像などのまとめページが投稿されている。現時点では約20の事業者やイエモ側でアップロードした画像が合計約1万5000点ある。
事業者は、住まいに関心のある30〜40代の女性ユーザーに対して、一定のボリュームまでは無料で自社商品を露出できるのがメリット。商品画像から自社のECサイトへの誘導も見込める。ユーザーは、気に入ったアイテムを探しながら家造りのインスピレーションが得られるのが利点。クックパッドの「つくれぽ」のように、ユーザーが投稿したまとめページをもとに、実際に自分でアレンジした画像を投稿する機能も1月に追加する予定だ。
住まいのコミュニティサイトに目をつけたのは、スマートフォン向けメディアで「衣食住」の「住」だけが未開拓だったためだという。住宅に興味を持つユーザーは主に30代~40代でスマホに馴染みある世代。にもかかわらず、スマホに対応しているメディアはほとんどないのが現状なのだと分析する。イエモはPCとスマホのブラウザーから利用でき、特に「スマホでダラダラ見られる」ことを意識している。収益面は住まいに関する広告を掲載するほか、100枚以上の画像を投稿する事業者から枚数に応じて月額数千〜数万円を課金したり、資料請求ごとに報酬をもらう仕組みを検討する。
住まいに関する画像をカタログのように見せ、気に入った画像を保存するサービスとしては、国内でも「SUVACO」や「ハウジー」などがある。ぱっと見は同じように見えるが、ユーザーが投稿したコンテンツをシェアしたりコメントできるコミュニティ機能を持つプラットフォームは「海外のHouzzなどを除けばイエモのみ」と指摘する。「ファッションやレシピを晒す人は増えている。住まいの写真はブログやFacebookぐらいにしか投稿先がないが、ITに明るくない主婦でも投稿できる受け皿を用意すれば、『住』のメディアは『衣食』と並ぶ3本目の柱になる」。
村田氏は2010年から2012年1月の事業売却までの間、子育てと経営のサイクルを「1日3時間睡眠で繰り返していた」。事業売却後も子育てしながら経営を続けることを検討したが、「社会インフラが整っていない」と事業売却を決断。起業家として海外のビジネスにチャレンジすべく2012年9月、住み込みメイドやベビーシッターが安価に手配しやすいシンガポールに家族3人で移住した。「自分の健康を犠牲にしたり、子どもと過ごす我慢しながらビジネスの成功を勝ち取るだけが成功パターンではないはず」と語る彼女は、シンガポールの地で2度、3度とイグジットまで持っていくシリアルアントレプレナーとして、女性起業家のロールモデルになりたいと話している。