Helm.aiが無人運転車用AI向け無人学習技術に14億円調達

4年前、数学者のVlad Voroninski(ブラド・ボロニンスキー)氏は、自動運転技術開発における数々のボトルネックの一部を深層学習が取り除く可能性を見い出していた。

そして現在、彼がTudor Achim(チューダー・アーキム)氏と2016年に共同創設したスタートアップHelm.aiは、A.Capital Ventures、Amplo、Binnacle Partners、Sound Ventures、Fontinalis Partners、SV Angelなどによるシードラウンドで1300万ドル(約14億円)を調達したことを発表し、沈黙を破った。

これにはBerggruen Holdingsの創設者のNicolas Berggruen(ニコラス・バーグルエン)氏、Quoraの共同創設者のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏とAdam D’Angelo(アダム・ダンジェロ)氏、NBA選手のKevin Durant(ケビン・デュラント)氏、David Petraeus(デイビッド・ペトレイアス)大将、Maticianの共同創設者でCEOのNavneet Dalal(ナブニート・デーラル)氏、Quiet Capitalの業務執行社員Lee Linden(リー・リンデン)氏、Robinhoodの共同創設者のVladimir Tenev(ウラジミール・テネフ)氏など数多くのエンジェル投資家も参加している。

Helm.aiは、この1300万ドルのシード投資を、工学技術の高度化、研究開発、人材増員、さらに顧客の囲い込みと契約の実行にあてる予定だ。

同社はソフトウェアのみに特化している。自動運転車に必要となるコンピューター・プラットフォームやセンサーは作らない。そうした変化の激しい分野には依存せず、わかりやすく言えばHelm.aiは、センサーのデータや人の行動を理解しようとするソフトウェアを作っているのだとボロニンスキー氏は言う。

それなら、他の企業でもやっていることのように思える。だが注目すべきは、Helm.aiのソフトウェアへのアプローチだ。自動運転車の開発者は、その多くが自動運転車のいわゆる「頭脳」の訓練と改善を、シミュレーションと路上テスト、そして人の手でアンノテーションされた大量のデータセットの組み合わせに頼っている。

Helm.aiは、その工程をスキップすることでスケジュールを短縮しコストを削減できるソフトウェアを開発したという。同社では、人間の教師を必要としない学習アプローチを使い、ニューラルネットワークを訓練できるソフトウェアを開発している。膨大な走行データも、シミュレーションも、アンノテーションも不要だ。

「自動運転車のAIソフトウェア開発は、非常に長い戦いであり、コーナーケースの無限の海を渡らなければなりません」とボロニンスキー氏。「本当に重要なのは効率化の度合いです。ひとつのコーナーケースを解決するのに経費はいくらかかるのか、どれだけ早くできるのか。そこを私たちは改革したのです」。

ボロニンスキー氏は、UCLA時代に自動運転に初めて興味を抱いた。そこで彼は、米国防高等研究計画局主催のロボットカーレース、DARPAグランド・チャレンジに参加したことのある学部教師からその技術を教わった。やがてボロニンスキー氏は次の10年の応用数学に興味が移り、カリフォルニア大学バークレー校で数学の博士号を取得し、MIT数学科の教師になった。だが、いずれは自動運転車に戻ろうと考えていた。

2016年に深層学習にブレイクスルーがあり、ここへ戻る機会が得られたとボロニンスキー氏は話している。彼はMITを去り、後にNetskope(ネットスコープ)に買収されることになるサイバーセキュリティーのスタートアップSift Security(シフト・セキュリティー)を辞めて、2016年11月にアキーム氏とHelm.aiを創設した。

「私たちは、従来のアプローチでは対処できていないと思われる重要な課題を特定したのです」とボロンスキー氏。「早々にプロトタイプを作ったことで、それでやっていけると確信できました」

Helm.aiは、まだ15人の小さなチームだ。彼らは2つの使用事例に向けたソフトウェアのライセンシング事業を目指している。ひとつは、レベル2(新しい規定ではレベル2+)の乗用車向け高度運転補助システム、もうひとつはレベル4の自動運転車両隊だ。

Helm.aiにはすでに顧客がある。名前は明かせないが、その中には試験運用段階を終えたものもあるとボロニンスキー氏は話していた。

画像クレジット:Helm.ai

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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