IBM、ブロックチェーンを利用して海外支払いを高速化

ブロックチェーンは海外送金を速く(かつ安く)する方法としてかねてから注目されてきたが、そうした動き ―― いくつかのスタートアップによる個別の活動を含む ―― の中きわめて注目度の高い支持者が現れた。IBMは銀行向けに独自の支払いソリューションを発表した。

コンピューターの巨人は、ブロックチェーンのスタートアップStellarおよび支払いサービスのKickexと組んで、ブロックチェーンを利用した銀行向け海外支払いシステムを提供する。「決済時間を短縮し企業と消費者の海外支払いコストを低減する」ことが目的だ。

現在国際取引は完了までに数日、時には数週間かかることもある。こうした不満を解消すべくTransferWiseなどのサービスが登場したが、よくできてはいるものの、先進的な消費者やスモールビジネス向けのソリューションであり万人向けとは言い難い。

銀行向けのブロックチェーンによるソリューションは根本的問題に取り組み、台帳ベースのシステムによってエラーの可能性を最小限にするとともに透明性と柔軟性を銀行に提供する。

一例としてIBMはこのサービスでサモアの農民とインドネシアのバイヤーを繋ぎ、支払い以外にも利用するケースを紹介した。

「ブロックチェーンは契約条項の記録、取引書類の管理などにも利用可能で、農民は担保の設定、信用状の取得に利用することで即払いで契約を完了し、国際貿易を透明かつ比較的容易に実行できるようになる」とIBMは言う。

それは長期的目標だが、すでにシステムは太平洋諸島、オーストラリア、ニュージーランド、および英国で12種類の通貨に利用されている。来年中に南太平洋小売業界で海外支払いの60%を取り扱うと予想されており、その後も拡大していく計画だ。

同プログラムの初期グループには10を超える銀行が参加しており、南米中東アジア、その他の地域には来年初めに拡張する計画だ。

「世界有数の金融機関数社から助言を受け、IBMは支払いネットワークの効率と透明性を高め、世界で最もへんぴな場所でもリアルタイムでバンキングができる新しい方法を探究している」とIBM産業プラットフォーム担当上級副社長のBridget van Kralingeが声明で語った。

システムはIBM Blockchain Platform上で動作する。昨年発表されたIBMの“Blockchain as a service”[サービスとしてのブロックチェーン]を動かしているオープンソースのHyperledger Fabricをベースにしたプラットフォームだ。またこのシステムは公開ブロックチェーン(IBM)とプライベートブロックチェーン(Stellar)が連携する事例としても注目に値する。実際の決済手続きはStellarが取り扱うとCoinDeskは書いている

最近IBMはWalmartらとの提携により、ブロックチェーンを利用した透明性とトレーサビリティ向上による食物安全性の改善に取り組んでいる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。