今日(米国時間2/18)、IBMは、Truven Health Analyticsを買収する意向を発表した。価格は26億ドルという驚くべき額だ。これはWatson Health事業部が2014年に創立されて以來、4回目の大型買収となる。
Watson Healthは2014年4月にIBMがPhytelとExplorysを買収したのを機に創立された。両社ともデータ処理をメインとするヘルス関連企業だった。
Watson Healthはその後、2015年8月に10億ドルでMerge Healthcareを買収した。これによりWatson Healthは膨大な医療画像データを所有することとなった。
今日の買収で、IBMはTruvenの大規模なクラウド・ベースのデータ・リポジトリにアクセスが可能となる。Truvenは社員2500人で8500のクライアントを持ち、その中にはアメリカの連邦政府や州の機関、またその従業員組合、健康保険会社、生命保険会社が含まれる。
Truvenの買収により、IBMは保険請求、治療内容、治療結果、医療費詳細、その他何百種類もの情報という宝の山を入手する。Watson Healthのバイス・プレジデント、Anil Jain(元Explorys)は「これは単にデータのための買収ではない」と強調した。
JainはTechCrunchのインタビューに対して「われわれは〔この買収で〕膨大なデータとそれを収集したリソースのすべてを入手する。〔しかし本当に価値があるのは〕豊富なデータに基づく洞察、深い知識に基づく洞察だ」と述べた。
Jainはまた大量のデータを意味あるものにするのは人間のエキスパートだとつけくわえた。そしてTruvenの買収によってWatson Healthに加わることになった2500人の社員には多数のデータ・サイエンティストや研究者などの専門家が含まれると述べた。
有力企業を次々に買収することと、それら企業の持つデータやノウハウを有機的に組み合わせて新たな事業部にすることはまったく別の作業だ。 Jainはこれが困難な課題であることを認めたが、同時にIBMは買収企業の統合には豊富な経験を持っていることを強調した。
「Watson Healthプラットフォームにはクラウドがあり、コアとなるテクノロジーがある。それらはクライアントの課題の解決のために役立てられる。ソリューションはわれわれが開発するものもあるが、われわれのパートナーが作るものある」とJainは述べた。
IBMのパートナーにはApple、Medtronic、Johnson & Johnson、Teva Pharmaceuticals、Novo Nordisk、CVS Healthなどが含まれる。
ヘルスケア・テクノロジーでいつもプライバシーが問題になる。たしかにIBMは膨大なヘルス関連情報にアクセスが可能だ。Jainは「この点についてしばしば質問される」と認めた。しかし「IBMは患者情報の秘密保護に関してHIPAAは(医療保険の相互運用性と責任に関する法律)の規定を順守している。またIBMのシステムは重大な疾病の診断に関して患者を特定できるような具体的な知識を持たない仕組みとなっている。われわれの目的はあくまでクライアンの業務を適切な情報提供によって効率化することだ。その情報が具体的にどのような個人に結びつけられるかについてはIBMは一切情報を持たない」と述べた。
これはつまり、ある患者に特定の症状が合った場合、Watson Healthは他の患者のデータを分析し、似たような症状を選び出し、症状のパターンを教える。ただしデータの背後にある個人については身元特定可能な情報を持たない仕組みになっているということだ。医師の指示に応えてWatsonはそうした症状に対するさまざまな治療法とそれぞれの成果を専門誌の論文から収集する。 こうした情報は医師の診断や治療法の選択に大きな助けとなる。
現在、Watson Healthを構成する各社はIBMによる買収以前と同じく、各地に散らばるそれぞれの本社で運営されている。これは当分そのままとなるはずだが、IBMはWatson Healthの新しい本社を,マサチューセッツ州ケンブリッジに 建設中で、運用開始は今年後半になる予定だ。
Featured Image: Matej Kastelic/Shutterstock
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)