米国時間10月8日朝、IBMがレガシーインフラサービス事業をスピンアウトすると発表したとき、4月に同社の新CEOに就任したArvind Krishna(アルヴィンド・クリシュナ)氏は、自社をクラウドに全面的にコミットする準備ができていることを明確に示した。
この動きは、同社が2018年にRedHat(レッドハット)を340億ドルという超高額で買収した際に着手した戦略に続くものだ。この買収は、インフラの一部をオンプレミスで、一部をクラウドで運用するハイブリッド・クラウドへの移行を示している。
IBMがハイブリッドクラウド戦略に舵を切っていく中でも、クリシュナ氏は他の誰もがそうであるように財務結果を見ており、そのアプローチにもっと鋭く焦点を当てる必要があることを認識していた。直近の決算報告(IBMプレスリリース)でのIBM全体の収益は181億ドル(約1兆9120億円)で、前年同期比5.4%減となった。しかし、IBMのクラウドとRed Hatの収益だけを見ると、より有望な結果が見えてくる。クラウドの収益は30%増の63億ドル(約6655億円)、Red Hat由来の収益は17%増だった。さらに、過去12カ月間のクラウド収益は20%増の235億ドル(約2兆4800億円)だ。
同社がどのような方向に向かっている知るには、財務の天才である必要はありません。クリシュナ氏は、たとえ短期的な苦痛が伴うとしても、IBMのビジネスのレガシーサイドからの移行を開始する時期に来ていることを明確に認識している。そのため、経営者はその行き先にリソースを投入したわけだ。本日のニュースは、その努力の結果といえるだろう。
IBMによると、同社のマネージドインフラサービスセグメントは、年間190億ドル(約2兆円)の収益を上げている実質的なビジネスだが、クリシュナ氏は、会社を整理してこのような難しい決断をするために、Ginni Rometti(ジニ・ロメッティ)氏の後を継いでCEOに昇格した。
同社のクラウド事業は成長しているが、Synergy Researchのデータによると、IBMのパブリッククラウドの市場シェアはおそらく4〜5%と1桁台で停滞している。実際、Alibaba(アリババ)はその市場シェアを追い抜いているが、どちらも市場リーダーのAmazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)に比べれば小さい。
クラウドインフラビジネスへのシフトを進めているもう1つのレガシー企業であるOracle(オラクル)と同様に、IBMもクラウドの進化にはまだ道のりがある。
調査会社のSynergyでデータによると、市場リーダーのパブリック・クラウド収益シェアは、AWSが33%、マイクロソフトが18%、グーグルが9%で、IBMはオラクル同様に3社を追いかけてきたが、いまのところ市場シェアに大きな変化は見られない。さらに、IBMはマイクロソフトやグーグルと直接競合しており、これらの企業もハイブリッドクラウドビジネスをより成功させようと努力している。
IBMのクラウドの収益は伸びているが、市場シェアの針は止まっており、クリシュナ氏は集中する必要があることを理解している。そこで、IBMのレガシー事業にリソースを注ぎ続けるのではなく、その部分を分離してハイブリッドクラウド事業にもっと注目できるようにすることにしたのだ。
これは机上では健全な戦略だが、長期的にはIBMの成長プロファイルに重大な影響を与えるかどうかはまだわからない。クリシュナ氏はそうなるだろうと賭けているが、それでは同氏にはどんな選択肢があるのだろうか?
カテゴリー:ネットサービス
タグ:IBM、ハイブリッドクラウド
画像クレジット:Richard Levine / Getty Images
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(翻訳:TechCrunch Japan)